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スリージェネラル

『塔子さん、そろそろ俺にもコラムズ担当させてよ』

『どうせ良太がコラムズ担当したって扱えないでしょ』


 携帯ゲーム機でぶよぶよVSコラムズのネットワーク対戦をしながら、スマートフォンで会話をする二人。買ってしまったからには元を取るために遊びつくそうとする二人であったが、ゲームバランス的にはコラムズの方が圧倒的に有利であり、勝ちたいからか本来遊ぶつもりだったぶよぶよでは無くコラムズを奪い合うという展開に。


「争いは何も生まないわね……そもそもぶよぶよ同士、昔のルールでも遊べるんだから普通にそれで遊ぶべきだったわ」

「俺は今に慣れ過ぎて、なんだか昔のルールで遊べる自信が無いよ……」


 翌日の朝、下らない事で揉めてしまった事を教室で反省し合いながら今日の授業に臨む二人。争いは何も生まないと言った直後ではあるが、その日の日本史の授業のテーマは戦国時代であり、男子である良太は戦国武将に興味津々であり、休憩時間中に友人達と好きな武将について語り合う。放課後になり、ガムボールマシンも見つけたしといつものゲームセンターに向かう二人であったが、その時になっても良太は戦国武将の話をし続ける。


「……という感じで、戦国時代は浪漫なんだよ」

「野蛮ね。私にはよくわからないわ」

「でも女性ファンも多いよ? 確か塔子さんの好きな声優さんも有名なゲームの伊達政宗を担当してた気が」

「あー……確かに声優から入って特に元ネタとか意識せずにグッズとかドラマCDとか集めてたけど、そういうのあった気がするわ……女性向けゲームの題材って高確率で信長とか出て来るし……」


 戦国武将が好きだと言いながらもアクションゲームくらいしか買っていない良太と、戦国武将が好きでは無いが声優が担当していると言う理由でグッズを色々買っている塔子。一体どちらが戦国を愛しているのかなんて悩みを抱えながら二人はゲームセンターに到着する。


「そういえば戦国時代をモチーフにしたメダルゲームってあるの?」

「……あるには、あるわ」


 先程まで話をしていたからかメダルゲームで戦国時代を楽しみたいと言い出す良太に、困りながら別の階を指差す塔子。二人が向かった先はメダルゲームのコーナーでは無く、格闘ゲームや音楽ゲームのあるアーケードゲームのコーナー。


「随分遠いところにあるんだね。あ、メダル引き出して来なきゃ」

「必要無いわよ。このゲーム、普通のメダル使えないから」

「メダルゲームなのに?」

「メダルゲームなのかしらね?」


 アーケードゲームのコーナーの奥にひっそりと置いてある、戦国時代の代表的な武将3人がデザインされているスリージェネラルと書かれた機種に座り、預けているメダルが使えないから現金を使う必要があると不満を垂れながら財布から紙幣を取り出したところで、二人分お金を使うのは勿体ないわよねと良太も同じ席に座らせて半額負担させる。


「一応私のデータがあるけど、私は遊んですぐに辞めちゃって中途半端だし、新規で遊びましょう。まずは仕える武将を選ぶのよ。スリージェネラルなんて書いてあるけど、実際にはたくさん選べるわ」

「それだったら、やっぱり地元だし毛利かなぁ」


 新規にアカウントを作りながら、仕える武将として地元では有名な、三本の矢でお馴染みの毛利元就を選択する。専用メダルを使って戦地に向かい戦果を挙げたり、仲間武将との友好を高めるのがメインの遊び方という事で、早速武勲を上げるために合戦へと向かう二人。


「まぁ、向こうの方が敵少ないし余裕でしょ。敵武将を捕らえてジャックポット狙っちゃおうっと」

「甘い考えね。これは確かに良太がよく遊んでるアクションゲームに似てるかもしれないけれど、メダルゲームでもあるのよ。それがどういうことか、数分後に嫌でもわかるでしょうね」


 戦場に向かうや否や、敵の武将を倒すためにプレイヤーを操作する良太。操作のインターフェースは流行りのアクションゲームに似ているからか特に苦労する事無く移動をして雑魚敵を倒して行き、捕えればゲーム内メダルが数千円分、倒すだけでも十分に元が取れる武将と対峙する。


「……全然体力減らないよ? これ時間切れにならない?」

「なるんじゃないかしら」


 意気揚々と武将を攻め立てる良太であったが、こちらの攻撃による敵の体力の減少具合は極小であり、敵の攻撃を避けつつ攻撃を数分続けても体力を半分減らす事も出来ずに時間切れとなってしまい、結局獲得したメダルは道中に倒した雑魚敵の分が少し。


「大赤字だよ……これじゃ倒せそうに無いね。武器を強いのにしたらいいのかな? そんな項目見当たらないけど」

「たくさんメダルを使ったら、そのうち倒せるようになるわよ。これ、システムはメダルゲームだから。結局はお店が設定した利益を達成できるように内部的に補正がかかりまくってるのよ。しかもプレイヤーの技術が上手いか下手かでも内部的には補正がかかるみたいなの。わざと下手なプレイをしてメダルを消費して、こちらに有利な補正がかかったところでジャックポットを狙う、ってのが定石でしょうね」


 塔子にシステムの内部を解説され、既存のゲームを無理矢理メダルゲームにする事の難しさについて考えながら、どうしても一度は武将を倒す爽快感を味わいたいと自腹で課金を続ける良太。何度目かの挑戦でようやく敵武将を撃破する事に成功する。しかしトータルで赤字だとかそれ以前に、ゲームで遊んでいるというよりは遊ばれている感覚に陥り虚無感を覚えてしまう。


「俺達以外に客もいないし、そもそもメダルゲームコーナーにも無いし、こんな端っこにあるし、全然人気無いってことか……全国対戦モードってのがあるけど、これって」

「そりゃあ全国のゲームセンターとオンライン対戦よ。人同士でメダルを直接奪い合うの」

「まさに合戦か……とりあえずやってみるか」


 ゲームシステムとお店の設定に操られている上にCPU相手のプレイに飽きた良太は、どうせなら対人戦をやってみようと全国対戦モードを選択する。しばらくして、マッチングしたいくつかのユーザが敵味方分かれ合戦がスタートする。


「チーム戦はダイナマイトガールを思い出すな……流石に対人戦は平等だよね?」

「考えが甘いんじゃない? そもそもお店によってメダルの貸し出しレートだって違うわよ? このお店は1000円でメダル100枚だけど、安い店は200枚とかになるし、そうなったら当然メダルばんばん使って計略とかも使えるわよね」

「ぐぎぎ……」


 対人戦では公平なプレイが出来ると信じて、自分のプレイスキルで戦おうとする良太であったが、システムは良太のチームを負けさせようとしているのか突然自陣の士気が下がったり、敵がお金に物を言わせて強力な戦術を連発したりと散々な結果に。


「くそ……大勝利するまで、ジャックポット獲るまで諦められない……」


 ゲームに弄ばれながらも勝利の快感を味わいたいと、追加課金をして再度全国対戦モードを選択しては運に見放される良太。結局塔子が負担したのは最初の折半だけであり、良太の財布の中身はあっという間に空になってしまう。それでも後日にリベンジをすると言い出す良太に、破滅するんじゃないかと心配してしまう塔子だったがそれは杞憂に終わる。何故なら良太がリベンジをするために塔子を連れて意気揚々とスリージェネラルのコーナーに向かうと、


「て、撤去……」

「まぁ、不人気だったものね……良かったわね、これ以上良太はお金も失わないし負けないわよ」


 既にお店から筐体は消えており、公式サイトにもサービス終了の知らせが虚しく載っているだけだったからだ。こうして良太の武勇伝はデータの海へと沈み藻屑となって消えたのだった。

元ネタ……セガ『スリキン』


三国無双のような合戦ゲームを無理矢理メダルゲーム風にした意欲作。

あくまでメダルゲーム的なシステムを使っているだけで、本文にあるように互換性は無い。

今のスターホース4のようなもの。


プレイヤーの技量が重要な合戦ゲームと、

設定したペイアウト率に従う必要のあるメダルゲームの相性は致命的だった。


しかし、セガならバランス調整をしてまた世に出してくれると信じている。

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