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君が笑う、その世界でまた  作者: 星乃いーふ
歌の魔法
8/10

この鼓動の理由

 ……どうすればいいの?

 最近、シロと話すとき心臓がバクバク言っている。

 ……やだな、病気?

 むずむずして、どうにも悼まれない。

 この症状は何というのだろう。


「……わっ」

「あ、ごめんなさ……あれ?」


 ……し、シロ!?

 ドクドクと鼓動が波打っている。なんだな暑くなってきたような気もする。


「あはは、そんなに驚かなくていいよ。……大丈夫? 顔真っ赤だけど。熱とかある?」

「ぜ、全然! 全然大丈夫だから!」

「そう? 気をつけてね」


 シロは不思議そうに首を傾げる。

 ……これもシロのせいなんだから!

 完全に逆恨みだが、シロと会うとこうなってしまうのだから、変な話ではないだろう。


「あ、そ、そういえば用事があったんだった! またねっ!」


 下手な理由を作ってその場を離れる。

 ……ああ、何でこんな体に!?

 恥ずかしくて、むず痒い。いつの間にかそんな感じになってしまっていた。

 ……もうやだ……。

 


「大丈夫?」

「え」


 いつの間にかシロに覗き込まれている。

 ……え!? 何があったんだっけ……。

 確か、ずっとシロのことを考えてて、いや、違う。シロと会うときどう対処するか考えてて!

 いつの間にか授業も終わっていたようだ。

 私の体は無意識に図書室に来ていた。


「大丈夫。あ、そうだ。本借りなくちゃ」


 シロといるとドキマギしてしまうので私は逃げる。

 


「おーい、元気? ずっと上の空だけど」

「え。……だ、大丈夫! あ、ひかりと約束してたんだった!」


 私はまた逃げた。



「ねえ……——」

「あ、用事思い出した!」


 まるで日課のように私は逃げる。


 ……あれ、私って何がしたいんだっけ。

 理由はないはずだ。ただ逃げているだけ。

 最近、シロの異変に私は気づいていた。

 私がその場を離れるごとに、シロは悲しそうな顔をしていた。

 ……何やってんだ、私。

 結局何をしたいかは分からない。ただ、恥ずかしいから逃げるだけ。

 ……私って、シロにあんな顔をさせたいんだっけ。

 ううん、違う。私はシロに笑っていてほしい。

 シロが、私にしてくれたみたいに。

 シロはまるで、太陽だ。私のような庶民を照らす光。私には眩しすぎるほどだった。

 ……じゃあ、私のすることは一つでしょ。



「シロ、ごめん!!」

「え……?」

「ここは最近シロを避けてて。ほんっとうにごめん」

「……」


 シロは何も言わない。私は怖くてシロの表情を見ることができなかった。


「あの、怒ってるよね。その、殴っていいから、私のこと。シロに悲しい思いさせてごめん」

「な、何言ってるの」


 まだ顔を上げない。シロに上げていいとは言われていない。


「……言ってしまえば、少し傷ついた。でも、殴るなんてそんなこと……できないよ。怒ってなんか、いないよ。僕に何か言いたいことがあるなら言ってくれないかな? 僕は真正面から受けとめたい」

「シロ……」


 いい人すぎないか。私は失礼な態度を取ったというのに。


「あの、その……。避けたことに深い意味はなくて。と、というか私、シロと会うと変なの。落ち着かなくてそわそわする。そんな自分が嫌で、逃げただけ。シロへ何にも悪くない」

「でも、そんな風に思わせてしまった僕が悪いよ。ごめんね。……言ってくれてありがとう」

「……う、うぅっ」


 なんて優しい人なのか。あまりにも出来すぎている。


「こっちこそだよぉ。……ありがとう、シロ」

「ふふっ、うん。こういうときはどういたまして、と言った方がいいかな?」

「き、気遣わなくて大丈夫だから!」

「……そうかな? 僕が落ち着かないけど」


 シロは優しく微笑むと、「どういたまして」と言った。

 ……ああ、もうなんか、分かってしまったかも。



「君は、素敵だね。優しい子だ」

「き、急にどうしたの?」

「ううん、何でもない。ただ、自然とそう思って」

「そ、そっか」


 それはそれでむず痒い。



 私は、もうこの感情に気づいた。

 きっとこの気持ちは「好き」というものだろう。

 でも、分からなかった。

 めったに褒められないから嬉しくて「好き」が芽生えたのか、それ抜きに、シロに人柄に「好き」が芽生えたのか。

 前者だったら、その好きは、恋愛感情ではないのだろう。たぶん、ただの自己満悦感を得てしまっただけ。


 だから、この気持ちにはまだ、蓋をしよう。

 そう、決めた。

読んでくださりありがとうございました(*^^*)


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