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君が笑う、その世界でまた  作者: 星乃いーふ
歌の魔法
7/10

君は『可愛い』

 ふぅ、と一息つく。

 ……やっぱり、歌の魔法は。

 ひかりに言われた。歌は、心の魔法だと。ひかりは優しく笑ってくれた。

 でも、だとしたら、私に心の優しさがないということだろう。

 そもそも、歌の魔法がどんなことをきっかけに強くなるのか分からない。

 魔法には、覚醒、というものがある。

 光や闇は何段階か覚醒すると天使と悪魔の力を手にする。

 水や土、その他の魔法も、女神に力を貰ったり、神に力を分け与えられる。

 でも、歌の魔法にはそれがなかった。覚醒不可能というのは、かなり厳しい。

 

「ねえ、シロ。シロはさ、何の魔法を持ってるの?」


 図書室に行くと、いつもシロがいるか、シロが来る。

 おそらくシロは、光か水などではないだろうか。

 本当に、何となのだが。


「僕? んー僕はね、闇」

「闇!?」


 さすがに闇はないだろうという考えは打ち消される。


「うん、闇魔法。ごめんね、驚かせちゃったかな?」

「う、ううん! いや、びっくりはしたけど……。てっきり光か水とかだと思ってたから」

「ふふっ、闇なんだよね。ほら」


 シロは手のひらを上に向ける。

 たちまちボォーっという黒い炎が立ち上がる。

 

「わあ、綺麗!」

「あはは、ありがとう」

「あ、でも、炎が出るんだ。火魔法じゃないのにね」

「うん、そうなんだ。闇魔法って言っても、闇は実体じゃないし。闇魔法は、黒炎とか、黒水とか黒砂とか、そんな感じなんだ」

「へぇ〜」


 てっきり、闇、というものが出るのだと思っていた。


「あ、でもそれはあくまでレベル一の闇魔法なんだ。覚醒するごとに、闇、っていう仮想実体がでてくる。たぶんこれが流通してる闇魔法なんじゃないかな」

「……闇魔法は流通してないけどね」


 シロにとって、闇魔法というのはすごいものじゃないらしい。


「あはは、そうだね。……君は何の魔法を持ってるの?」

「私? 私は……」


 自慢に語れるものじゃない。ひかりに褒められたから、少し自信がついたけど、根からじゃない。歌は、弱い。


「歌魔法、なんだ」

「え、すごいね」


 それがどっちのすごい、なのか分からない。怖くてたまらなかった。


「僕、会ったことないよ。あ、でもたしか半身体で一人会ったか。……歌魔法、憧れるなぁ。僕、歌得意じゃないから。今使えたりするの?」

「う、ううん。その、情けない話歌魔法の発生方法とかも詳しく分からなくて。歌えばいいのかもしれないけど、その、歌えなくて」

「……そっか」


 シロは優しく笑って、私の頭をポンポンする。


「あ、ごめん、嫌だった?」

「ううん。……すごく、ほっとする」


 シロは、強くもなく、かといって弱々しくもない、温かい手で私の頭を撫でる。

 ……シロもやっぱり男の子だなぁ。

 手が少しゴツゴツしていて、戦士のような手をしている。

 優しい、手。


「……良かった。君の髪、すごくサラサラだね。綺麗だ」

「そう、かな?」


 綺麗、と表現されたのは初めてだ。

 サラサラ、と言われることはあったが、そこまで手入れしている訳でもなく、むしろ毛先ははねているというのに。


「ありがとう」


 シロにそう言われたことが嬉しくて、私ははにかむ。


「やっぱり、君は笑った方が可愛いよ」

「そ、そうやって直接言われるのは……」


 心臓が痛いというか、と言おうとた前に、シロは悪気のない笑顔を浮かべる。


「じゃあ、直接じゃなかったらいいのかな? テレパシーとか」

「ダメだよ!!」


 なんだ天然なのか!? と叫ばなかった自分を褒めたい。


「……僕は、可愛いとか綺麗とかそういうことはしっかり言いたいタイプなんだよね」

「き、禁止! 心臓に悪いから!」

「ふふっ、分かったよ」


 やっと言えた。なのに、シロに余裕のある笑みを返されると、どうにも居心地が悪い。


「……シロも、カッコイイのに」


 私だけ恥ずかしがって馬鹿みたいだ。シロに届くといいな、と思いながら言う。


「ん?」

「……何でもない」


 そっか、とシロは言う。何だか自分で言って恥ずかしくなってくる。


「……ありがとう。嬉しい」


 シロからの言葉は、声が小さかったからか、私の耳には届かなかった。


読んでくださり、ありがとうございます。

星乃いーふでした(*^^*)

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