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君が笑う、その世界でまた  作者: 星乃いーふ
歌の魔法
3/10

ごめんね

「さっきはほんっとうにありがとう。私、魔学が苦手で。……その、助かった……ありがとう!」


 授業が終わった後、折野さんが話しかけてきた。

 ドキッ

 心臓がまた、ドクンと音をたてた。


「えっ、ううううん」


 緊張しすぎて、「え」という言葉は裏返ってしまったし、「うん」もなぜか 変な言い方をしてしまった。

 どうしよう……せっかく話しかけてきてくれたのに、嫌な思いをさせてしまったかも……。


「ごっ、ごめんなさいっ!!」


 ……あぁ、また変な言い方をしてしまった。ほんとに駄目だな、私。

 一方の彼女は、とても不思議そうな顔をした。


「え……? どした?」


 ……え?


「なんで詩川さんが謝ってるの…...!? 面白すぎ!」


 ……え? え? えぇぇぇぇぇ!!


「なっ、何で、怒らないんですか? 私、変なことしたのに」

「変なことってなに?」


 え? え? え?


「あはは、詩川さんって、面白いんだね! 私、もっと、詩川さんと話したいな……!!」


 私はまたもやびっくりして、聞き返す。

「わ、私って、つまんなくないですか?」


 折野さんはまた笑いながら、


「全然! むしろ面白い!! 今まで会ったことがない感じ。自分のことそんな風に卑下しちゃダメだよ」

 折野さんは続けた。

「あ、でも、勝手にそんな無責任なこと言っちゃいけないよね。ほら、詩川さんて、淋しそうな悲しそうな感じがするから。って、これも駄目か。本当にごめん。私、思ったことすぐに口に出しちゃって」


 ポタッ

 なぜか、私の瞳から涙が落ちてきた。べつに、悲しかったわけじゃない。そんな言葉をかけてくれたのは初めてで、本当に……。


「うっ、うぁ〜〜」


 ……私、泣いてるの?

 人前で泣いたことがなかったのに、何故か、涙が溢れてくる。止まらない。……そうだ。この気持ちの名前は……。


「嬉しい......」


 ……そっか。この気持ちは嬉しい、なんだ。

 知らなかった。こんな気持ち。

 私はただ、淋しかったのだ。他のクラスメイトは、友達ができて、楽しそうに話しているのに。私だけって。

 でも、それは私のせいだ。何も行動しない私に、何かが来るはずない。

 私の、この気持ちを聞いて欲しい。

 こんな気持ちは初めてだ。

 ……わくわくする!

 私は、折野さんに今の気持ちを言う。


「ありがとうございます、折野さん。こんな言葉かけてもらったの、初めてで。止まんなくて。……ごめんなさい、急に泣いちゃって」

「ううん、私こそごめん。何か、気に障っちゃったかな?」

 不安そうに聞いてくる折野さんの目は、綺麗だった。

「ぜ、全然! 本当に、嬉しくて……」

「ふふっ、やばい、詩川さん面白すぎて涙出てくる笑 ふふっ、ふふふ」


 折野さんはきゃきゃきゃっと笑う。


「……あと、敬語、使わなくていいよ。同学年だし。ため口で話してよ」

「あ、ありがとうござい……ありがとう、折野さん」

「ふふっ、何言ってるの。こっちがありがとうだよ」


 優しく笑ってくれたことが嬉しくてこっちまでにこにこと笑ってしまう。

 折野さんは超能力者か何かなのだろうか。

 そんな疑問を持つと、折野さんが微笑みとは言い難い、大笑いを始める。


「あはは! 詩川さんって、面白いねぇ。考えてることが顔にでてるよ。表情がコロコロ変わって可愛いね!」 

「かっ、かわ⁉︎」


 可愛い、と正面から言われ照れてしまう。


「ふふっ、可愛い」


 折野さんの方が可愛いよ、そう言おうとしたが、人に可愛いなどというのが久しぶりすぎて、私の方が照れてしまった。

 ……ああ、恥ずかしい!

 軽く手を顔にあてる。できるだけ赤い顔を隠したかった。意味はなかったが。

 私がもじもじしていると、折野さんは「そういえば」と口を開いた。


「詩川さんって、なんでそんなに大人しいの? 頭も良いし、可愛いのに。もっと自信持っていいと私は思うけどなぁ」

「あ、頭も良くないし、可愛くもないよ。それに……」

「それに?」


 私は少し悲しくなりながら、言葉を発する。


「私が自信を持つと、嫌なことが起こるから」

「……そっか」


 ふわっ

 甘い花の香りがする。

 そう思ったと同時に、折野さんに抱きつかれたことに気がついた。

 ……聞かないでくれるんだ。

 優しい。きっと、聞いたら、私が傷つくことを考えたんだろうな。折野さんは優しい。

 ……言おうかな。

 言ったら、仲良くなれるだろうか。

 折野さんは可愛い笑いを、いつも私に見せてくれるようになるのだろうか。

 ……きっと、折野さんなら……。

 私に笑いかけてくれる。これを言っても。 


「折野さん、私の話、聞いてくれる? つまんないかもしれないけど」

「詩川さんがいいなら、私は聞きたい。それでもし、詩川さんが……ううん、これはいいや」


 折野さんは、何かを言おうとしたようだけど、「話してくれるかな?」と言って、私に笑いかける。

 その優しい笑みに、私も笑い返した。


 私の過去


 私には、忘れることのできない、苦痛な過去があるんだ。

 それを今から話すね。

 私、詩川宙良は、小学校のころ、自分でいうのもなんなんですけど、人気者だったの。友達も沢山いた。

 そう、最初は……。

 ……私、歌が好きなんだ。よく、歌ってた。みんなによく、「上手いね」とか、「身に染みる」とか言って、笑ってくれた。嬉しかった。

 私の歌で、誰かを笑顔にできるんだって思ったら、私まで笑顔になれた。

 でも、あの子が来たんです。


 とても暑苦しい、夏の日だった。

 せっかくの休み時間もみんな、涼しい教室の方を好んで過ごしてた。そんな時……。


「ねぇねぇ、詩川さんってぇー、もしかして、自分、歌が上手いって思ってるぅー?」


 え……?


「別に思ってないけど」

「えぇー、絶対思ってるでしょ」

「うんうん。いつも歌ってて、うちらに上手いって言って欲しそうにしてるし」


 そん……なこと思ったことない。


「歌、下手なのにね〜」 

「ふんっ、そうよ。華恋の方が上手いのに。あんたの歌なんか、華恋の足元にも及ばない。生意気なのよ」

「そーそー、華恋ちゃんの方が断然上手いよ」

「ふふっ、それに、歌なんか極めてどうするっていうのよ。勉強も運動もできて完璧な華恋にたてつくんじゃないわよ」


 なに……? どういうこと?

 ……思い当たることは一つしかなかった。

 昨日のシンデレラ投票だ。

 ……シンデレラ投票っていうのは、例えば、頭がいい人に一票、スポーツ万能な人に一票、票が多かった人が、勉学シンデレラ、スポーツシンデレラになる。一部のレクみたいな感じで、選ばれた人は、その日のクラスレクを決められるのだ。

 別に悪口とかはないのだが、結構やばい投票だと思う。

 華恋ちゃんは男子には及ばないにしても、女子の中では圧倒的な票を獲得していた。

 しかし私はそこで「音楽シンデレラ」になった。

 それが原因だろう。華恋ちゃんは別にその日に特別なクラスレクをしたかったわけでは絶対にないと思う。

 華恋ちゃんはお嬢様。そして、歌が上手い。そのことを家の中ですごく持ち上げられたようだ。だから、自分よりも票が多くなった私に恨みを持っているのだろう。

 しかも、華恋ちゃんの票数は、0。今いる取り巻きも私に票を入れた。でも、今は華恋ちゃんを持ち上げている。


「ねぇ、なーに? 無視しないでよぉ。華恋、泣いちゃう〜」

 華恋ちゃんは、そう言いながら、泣いた。いや、嘘泣きをした。

 でも、そんなぶりっ子行為は、男子の胸に刺さったようで……(女子はめっちゃ冷たい目してるけど)。


「おい詩川、いい加減にしろよ。華恋ちゃん泣いちゃただろ? 謝れよ」

「そうだよ。これで謝らなかったら、お前、サイテーだよ」


 男子は次々と華恋ちゃんに加勢してきた。

 私はそれを聞き、じわじわと怒りが湧いてきたのを実感した。他の女子も「ふざけんな」という心内が見えている。

 ……でもここで、怒る必要はない。別に、暴力を振るわれたわけじゃない。

 お嬢様の、嫉妬だ。そう思えば、苦じゃない。

 わざわざ怒る必要はない。

 なのに、私はその思いとは対照的な言葉を放った。しかも、かなり言った。


「……なんで、私が謝らないといけないの…? 華恋ちゃんが勝手に暴走してるだけじゃん……!! 私は「自分の思い描いた通りに動かないと気が済まない」、そんなあなたが嫌い! それに加勢する男子たちも最低……!!」


 言い過ぎだと思う。私は、このことが起きるまでは華恋ちゃんのことは別に嫌いじゃなかった。ただ、ちょっと、苦手なタイプと認識していただけだった。

 でも今回、「うた」を侮辱された。もちろん、華恋ちゃんが侮辱したのは、私なんだろうけど。

 許せなかった。私は歌が好きだ。自分で言うのもなんだが、私は私の声が好きだ。これまで、十四年間、ずっと付き添ってきた私の「うた」。それを真正面から侮辱されて、腹が立った。

 こんなに怒ったのは、人生で初めてかもしれない。

 そんな怒りを宙良は滲ませたが、その言葉をただで流す華恋ではなかった。


「なによ、その言い草! 華恋はえらいのに、華恋を侮辱したぁ〜。父様に言いつけてやるぅ。絶対許さない! 父様がそのことを知ったら、あんたはただで済まされないんだからっ!」


 なんという幼児的発想……。私は聞き返したくなった。

 いまどき、そんなことをする者がいたとは……。華恋が言った「父様」と言う人も、このことを知り、頭を抱えるだろう。私も信じたくない。

 まわりにいる女子も、華恋を庇った男子たちも驚きで口を開けていた。中には、「え?信じられない。そんな発想する子だったの?」「ハハッ、ばっかじゃねーの?」などと口にしている子もいた。みんな、馬鹿にしたように鼻で笑っている。もちろん、私も。


「なっ!?」


 そんなみんなの反応を見て、華恋は怒りと驚き、悔しさが詰まった声を上げた。

 その時、教室のドアが開いた。


「おい、何やってんだ……。みんなして? 休み時間終わったぞ? 早く座れ」


 華恋は、今起こったことを先生に言おうとしたが、それをみんなは許さなかった。みんなで睨む。「言ったら、殺すぞ?」とばかりの形相で。

 このクラスでは、喧嘩や騒動が起きたときに、すべて話し合いで解決しよう、ということになっている。

 だから、もし、ここで華恋ちゃんが先生に言ったとして。たとえ、お嬢様でも、全てに平等意識の先生は話し合いをしようとするだろう。

 皆は、つまらないことで話し合いなどしたくなかった。

 別に言われても私はどうでもいいのだけれど。

 そこで華恋ちゃんは引いた。

 そこからも私たちは通常通り、授業を行った。それ以来、なにも起こらなかった。

 でも、このことをきっかけに、華恋という存在は嫌がられ、クラスの雰囲気も悪くなった。

 華恋ちゃんはあの性格もあり、もちろん喚いたが、それをみんなで無視した。

 その影響もあるだろう。

 「いじめ」。きっかけは本人のせいだとしても、そのきっかけをきっかけで作った者として、私は心が傷んだ。

 やはり、いじめが起きると、クラスの空気は悪くなる。

 華恋ちゃんはその後、転校した。


「……ということが起こったんです。すみません。こんな暗い話して」


 私はチラリと彼女のことを見た。すると、思いもよらぬことに……。

 怒りながら、泣いていたのだ。

 どういうことか、分からない。彼女はとても複雑な表情をしていた。私は戸惑い、どう言葉をかけたらいいか、迷った。……その時彼女は、泣きながら、言葉を発した。


「ありがとう、話してくれて。……それと、ごめん。……本当にごめん。ごめん。……今まで気づいてあげられなくて!」


 折野さんは大粒の涙をこぼした。


「……私、詩川さんが苦しんでいるのに、気づけなかったっ!!」


 私も思わず涙をこぼした。


「……ううん。私、折野さんに話せてよかった,すごく、スッキリした。まるで、昔の過去を綺麗にサッパリ洗ってくれたみたいに。私こそ、ありがとう。こんな、しょうもない私のことを聞いてくれて。それに、今はそこまで苦しくないんだ。それは小学校のときの話だし」


 本当に、良かった。一度授業で話しただけでこんなに、熱心に私と向き合い、涙を流してくれるなんて…...。

 前の私じゃ想像できなかっただろう。いや、今のこの私でも、信じられない。……ただただ嬉しい。そんな気持ちだった。

 その時、折野さんは戸惑ったような不思議そうな声を出した。


「あの、今、気になったことなんだけど……最初に、「歌を歌ってた」って、言ってたよね? ってことは今はもう、歌ってないの……?」


 その言葉を聞いたとき、頭が張り裂けそうな痛みを覚えた。


「うっ、うぅ〜」


 頭がガンガンする。私は頭を抑えた。


「どっ、どうしたのっ? 頭、痛い?先生呼んでくる!!」


 何故かは分からなかった。でも、本能がそれを拒絶している。私は、言葉を絞り出すことができた。


「だ、大丈夫です。もう、治りました」


 嘘だった。でも、嘘じゃなかった。本当に痛みが消えていた。涙も出ないほどに苦痛な痛みだったのに、その痛みは元々なかったように、むしろ、すっきりしていた。


「何だったの……?」


 後々私は知ることになる。

 この痛みは、私がこれから体験する痛みよりもはるかに小さいことを。

はい、こんにちは!

星乃いーふです。

どうでしょう。..............緊張します。

この物語は、少し前に書いていたものに加筆修正だけなので、正直言葉とかはなんかおかしいですww


この物語を誰かが読んでくれますように。(あ、でも、ここを読んでくれてるってことは読んでくださった方なんですよね)笑


どうぞよろしくお願いします。

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