6.後日よければそれでよし
「えっと……あの……大丈夫ですか?」
「あの程度、何の問題もない」
後日、カディアが家を訪ねてきた。
別に怪我はしていない。だが、あそこまで拒絶する意味がわからん。
よく考えてみろ。確かに俺は襲撃したが、それもたった一度であり、それとは比較にならないほど悪組織壊滅に貢献している。
悪組織基地を二つも壊滅させ、話せるだけでも幹部を三人も倒している。
それに、善組織基地を襲撃したとはいえ、その時俺は、善組織の人間を誰も殺していない。ただ目の前に出てきた人を一人残らず気絶させただけだ。
そもそも捕らえた幹部は発振器みたいなものだったのだから、倒さなければ全滅の危険性もあった。
そう考えると、俺あんまり悪いことしてないのでは?
とりあえず俺はカディアを自室へと案内した。
「それ、どうします?」
部屋にある机の上にあるこの招待券。
差出人不明の代物であり、明らかに怪しい。
絶対何かある。
チケットもとれないほどの人気な場所……というのも、きっと納得させるためについた嘘だ。
というか、どこに行くかもわからないツアーへの招待券をみて場所を把握できるわけないだろ。
「こんなの、ビリビリに破いて捨ててやるに限る。それよりこれ見ろよ」
イライラを晴らすように乱雑に破いた招待券は、風にのせ、ゴミ箱の中へと送る。
そして俺はあるものを机に置いてみせた。
「これは……金庫ですか?」
「この前基地を壊滅させた時に拝借したのさ。穴開けて確認したら、金塊だのなんだの金になりそうなのがたんまりだったんで、全部換金してやったんだ。その金は全部ここにある」
俺は金庫をぐるっと半回転させ、カディアに金庫の穴をみせた。
拳3個分空いた穴から見えるのは、圧倒的なまでの大金であり、だいたいどれくらいかと聞かれれば……だいたい1000万円くらいだ。
これにはさすがに、カディアもちょっと引いていた。
「んで、これぐらいあれば旅行なんてどこにでも行けるだろうし、日程から何まで今から決めちゃおうぜって思うわけよ」
「えっと……その……」
「ん?どうした?」
「さすがに……返してきた方が……」
……確かに。いや現金にしたときは俺もビビったよ?
だって1000万だぜ?無職が手にして良い額じゃないて。
ただ基地を壊滅させたのは俺なんだし、これぐらい拝借したって罪にはならんと思うなー、なんて思ってるし?
これぐらいしたって誰も怒ったりしないっしょ。
でも確かに……1000万かぁ……。
冷静になって考えてみて、目の前に1000万。
無一文が1000万。
あかんすごい悪いことした気になってきた。
「よし。ちょっと残して寄付しよう」
「それでいいと思います」
「そんで、そのちょっとを全部旅費にあてる」
「それがいいと思います」
こうして俺は、知らない会社に950万ほどぶっぱした後、カディアと共に50万でできる全力の旅行を計画したのだった。
ねる!つかれた!ねる!