たとえ世界が終わるとしても……
「手に入れたぞ……。これが生命としての形。それこそが、個である証。この瞬間、私は存在しているッ!」
覇道が結晶に飲み込まれたと思ったら、クリスタルの化け物になってしまった。
生命だとか個だとか存在だとか、一見変わっていないような発言だが、強さだけを求めたやつから出てくる言葉とは思えない。
何者かに乗っ取られた線でみるのが良さそうだ。
「お前は誰だ」
素直に答えてくれるとは思えないが、聞くだけ聞いてみることにした。
「私は覇道道正に宿った超能力そのもの。次元操作能力の意思だ」
思ったよりあっけなく教えてくれた。
「超能力に意思だって?そんな話、神からも聞いたことがない。まさか、カミノを吸収したことで、自我でも芽生えたってことか?」
「違うな。我々には最初から意思がある。我が主から与えられた、生きている証明だよ」
「教えろ、超能力者とはなんなんだ」
鼻なんて無いのに「ククク」っと鼻で笑ってきた。
わかりきっているだろうと言いたげに、僕に対してこう言った。
「超能力者はたった一人だ。ソイツは俺みたいな紛い物を大量に生み出して、色んなやつに与えて回った。この覇道道正もその一人ってわけだ」
超能力者がたった一人……?
なら、僕らが今までに倒した奴らは全員、超能力を与えられただけの、ただの凡人だったってことか?
「最後に聞く。目的はなんだ」
なんとなくわかる。乗っ取ってはい終わりだなんてありえない。
その先にある狙いがあるはずだ。
「目的……目的か……なんだろうなぁ。主はたぶん死んだし、目的らしい目的なんてないんだよなぁ……」
目的が……ない?
いや違う、目的がなかったわけじゃない。主が生きていて初めて成立する目的だったんだ。
だから正しくは、目的を失ったんだ。
「うん、そうだそうしよう。ぜーんぶ壊す。世界も次元も全部壊す。そんで、新しいユニバースを創って、この俺が唯一神になる!どうだラスボスらしい完璧な理由だと思わねぇか?」
頑張って捻り出した目的が破壊と創造とか、ぶっ飛びすぎだろ。
「何が完璧だ。ただの愉快犯じゃ済まされないぞ。ラスボス気取る暇があるなら、道徳の一つでも学んでこい」
「それでいいんだよ!ラスボスなんて、狂気を帯びてなんぼだろうがァ!」
クリスタルの化け物……仮に、次元クリスタルとでも名付けようか。
やつの高ぶった感情と共に溢れ出したエネルギーは、先程までの覇道を完全に超えてしまっている。
そんなやつの攻撃を食らったら……!
「勝負だ小僧。主人公が勝つか、ラスボスが勝つか、最終決戦といこうぜぇ!」
次元を利用して作り出した無数の刃を高速回転させ、突撃させる。覇道の時と違って、まだ視認できる速度の攻撃だが、問題なのは数だ。
視界を埋め尽くすほどの物量で、その一つ一つが一撃必殺級の威力。
あの一撃で使い切れなかった残り1200万年。そのうち、使用できるのは200万年……だけど、出し惜しみはできない!
「超次元破壊ブラスター!」
次元特攻用の波動砲を作り出した。費用はおおよそ100万年……一発限りで制御ができない。これで破壊できるのは、小規模次元の郡のみ……それでも今は、これが、対次元最大火力!
「発射!」
視界を埋め尽くしていた次元攻撃は、瞬く間に爆発共に殲滅されていく。
しかし、肝心の次元クリスタルには、傷一つついちゃいなかった。
「我が力を使いながら、この程度に敗れるとは……やはり神と自惚れるだけの人間だな」
だが、これぐらいはわかっていた。
大本命はもう一つの機能。この波動砲は、ビームを神速発射するための機構が内蔵されている。
そしてそれは、物に対しても効果を発揮する。
あらゆる力を弾くこのナイフを使って、ヒビの一つでも入れられれば、まだ勝機はある!
ここにさらに三十万年注ぎ込んで、絶対に攻撃を必中させる!
「いっけぇええええ!」
放たれたナイフは空を裂く勢いで、一直線に次元クリスタルへと突き進んでいく。
爆煙を突き抜け、ついに次元クリスタルに直撃した。
しかし、貫くでもなく、押すでもなく、逆にナイフが歪む。
その瞬間、自分の焦りと、それが招いた失態に気がついた。
「どうした?弾く力を持つもので、まさか貫こうとでもしたってか?焦ったな小僧。だが、落ち込むことはない。お前の持ちうる手段では、どうしたってこの俺は殺せない。なぜなら俺は……」
全ての力を弾くナイフを宙に浮かせ、「カッ」っと念じて見せる。
その瞬間、潰れただけだったナイフは、グチャグチャに歪み、完全に消え去った。
「概念すら超越した存在だからだ」
僕は、絶望した。
「さよならだ。託された希望ごと、全部まとめて消えちまえッ!」
創り出した無数の次元からの超兵召喚。
次元を利用した無限の攻撃。
クリスタルを取り除く……なんて明確だった弱点も、力そのものであるアイツには存在しない。
僕は膝から崩れ落ちる。
ダメだ……ダメだダメだダメだ諦めるな。
弱気になるな僕の心。敵が圧倒的すぎるだけだ。
力を戻せ僕の体。絶望に打ちひしがれるな。
動けって。動いてくれよ。
嫌だ……嫌だ……嫌だ。
まだ諦めたくない……諦めたくなんかない。
僕を置いて、勝手に諦めないでくれよ。
お前たちだって、わかるだろう?
僕はまだ負けてない。負けてないんだから。
戦う勇気を、捨てないでくれよ。
また諦めるなんて、ごめんなんだ。
だから、あと一度でいい。
たった一度だけでいい。
闘志の炎を、絶やさせないでくれ。
アイツに託された意味を、無駄にしたくないから。
その時だった。
巨大な壁氷が、僕の前方を覆い隠した。
「狂命さん!」
僕はその声にハッとするように、壁氷にコーティングを施した。
50万年分の力を使った、対次元コーティング。
それが尽きるまでは、僕を攻撃から守ってくれる。
僕は、自分を助けてくれた誰かに向かって、振り向いた。
「カディア……?」
声を聞いた時、すでにわかっていた。
誰が来たかなんて、とっくにわかってた。
それでも、自身の耳を疑った僕は、その人物にそう聞かざるを得なかった。
「ビックリしました?なんせ、今日はいつもと逆ですからね。私が、助けに来たんですから」
「なん……で……どうして来たんだよ……」
だめだ。今度は目を疑いだした。
そこにいるってわかっているはずなのに、どうしても疑おうとしてしまう。
「なんでもどうしてもありません。『助けにきた。』理由なんて、それだけで十分でしょう?」
「だとしても!」
戦力外だとか、来たところでだとか、君が来たってとか、最低な言葉しか出てこない自分が憎い。
最低過ぎて、言葉になんてしたくない。
だから、僕は黙ってしまう。
言いたくないことを言わないように、喋る口を心で塞いだ。
「確かに、私が来たところで、どうこうできる相手じゃないかもしれません。それでも、例え最強の敵が相手でも、私の好きなアナタなら、戦ってる最中に諦めたりなんてしません」
「何を……言って……!?」
気づいてしまった。
台詞の中で、ひっそりと潜む告白に、僕は言葉を失う。
嬉しいとか、悲しいとか、そんな気持ち以上に、きっとこの告白は、黒に向けられたものだってことに気づいた悔しさが、大きく僕にのしかかった。
「黒のことじゃありません。アナタのことを言ってるんです。諦めることを知っていて、それでも諦めない強さを持ったアナタが好きなんです。落ち込むところじゃないんです。今この瞬間は、嬉しさで飛び上がるところですよ」
「そう……なんだ……って、え!?なんで、黒のこと知ってるのさ!?そもそも黒は……」
「私、彼の最後を見たんです。その前に、聞かせてくれたんです。気持ちも全部、私に聞かせてくれたんです。そのうえで言います。私は、アナタが好きです」
戦場のこんなところで、こんなにも嬉しい答えをもらえるだなんて、思ってもいなかった。
思っていなかったより、今この瞬間が、たまらなくおかしく面白く思えてしかたがない。
だから、僕が笑ってしまっても、しかたがないことなんだ。
「ちょっと、今笑うところじゃないですって……」
「わかってる。でもやっぱり、この瞬間が信じられなくて、信じられないくらい不思議で、思わず笑っちゃうくらいに最高の気分なんだ。ありがとうカディア。僕も君が好きだ。好きで好きでたまらないほどに、愛おしい君が大好きだ」
後先考えない小っ恥ずかしい返事を返した後、僕はカディアに一つお願いをすることにした。
「カディア、一緒にやって欲しいことがあるんだ」
「こんな絶対的絶望みたいな状況で、いったい私と何をしたいんですか?」
そんな台詞に似つかわしくないくらいに、カディアの表情に曇りはない。
不敵に笑いあえるほどに、僕らは絶望なんてしちゃいない。
「助けたい人がいるんだ。僕はソイツが、憎くて憎くてたまらないけれど、それでも助けなきゃいけない気がするんだ。でもきっと、二人でならきっとできる。だって僕らは、もう一人じゃないんだ。互いに互いを支えられる、清く正しい関係になれたんだから」
「アナタがそうしたいのなら、私もそれに付き合います。だって私は、アナタが好きなんですから」
僕らは互いに手を取って、互いに委ね合う。
体も、心も、互いの全部を委ね合って、一つの目的を果すために、全てを一つにする。
僕らの光は、氷壁を突破した攻撃を全て打ち消し、闇を全て消し去った。
原神楽しすぎて全然投稿してなかった……。
投稿したから許してちょんまげ。
なんだよちょんまげって。
古すぎ、ダサすぎ、アホ丸出しの三コンボすぎて引くわー。




