無限×時間停止=最強
黒の焼けきれた体が修復されていく。
そういう特性を体に付与した……そう考えられなくもないが、そうとは思えないほどの修復スピード。それを見るに、どうやら回復技を使ったらしい。
だが、この空間じゃそれが最適解とも言える。
例え体に便利な回復機能を付与したとしても、それだけに頼れば必然的に予想外の攻撃に対処できなくなる。
それだけ何でもありな空間なのだ。
どうして、封印に特化した空間でそんなことが可能なのかはわからない。
が、あえて推測を立てるとするならば……ありとあらゆる手段を作り出させ、それに体制を得るように空間そのものが強化されていき、より強固な守りを得るため……とか?
って、そんなこと考えてるような時間じゃ決してない。
今、黒は少々の動揺状態にある。
その状態こそ、現段階で許された、最初のアタックチャンスってことだ。
つまり、今はとにかく畳みかけるべし。
情報を取り込めない今のうちに、攻撃を繰り返すべし!
「なんだぁ? 答えてくれねぇのかよしけてんなぁ。ま、そりゃそうか。じょーほーせんってのは大事だからなぁ……、それに、俺が暴けばばんじかいけつってことだかんなぁ!」
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話の途中で悪いけど、時を止めさせてもらった。
さて、もう一度やろうか。
自分の時を加速させる……これで、無限の加速状態の僕は通常の何倍ものスピードで加速し、その分だけ拘束に攻撃できる。
そして、たとえ仕組みに気づかれたとしても、たとえ時を止められたとしても、無限の加速で時間の認識から逃れたとしても、僕の方が圧倒的有利に戦える。
まず一撃。
なにも残さぬ神速をこえた速さで、僕は黒を蹴り抜ける。
そして僕は、これ以上の何かをすることはない。ただ再び、時を進めるだけだ。
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吐血しながら、沈むように倒れる黒。
不思議がるそぶりもなく、ただ自分の体に残された傷跡を見て、なにかの情報を得ようとしている。
「なんもわかんねー。てか、最後まで言わせずに攻撃とか正気じゃねえな……」
僕はもう一度時を止める。
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さっき一度の攻撃で終わらせたのには理由がある。
この停止した時間の限界だ。
停止した時間の中ではどんな鉄壁の守りも無力となる、ゆえに最強の必殺技であることは間違いないのだが、その決定的な弱点は耐久性だ。
本来は単に流れ続けるだけの時間の狭間に、無理やり自分だけが動ける時間をねじ込む。
それが時止めの実態だ。
そんな無理やりな処理を行うせいで、許容限界を超えるパワーを生み出すと時間が崩壊し、そこで起こったことは無かったことになってしまう。
それにいつ気づいていたかと聞かれれば、例の時間を操る四天王戦が終わった直後で、ラストアタックであんな規模の爆発があったにもかかわらず、床に傷一つついていなかった。
おそらく、「停止した時間」がある程度のダメージを蓄積すると、とまった時間の中を動ける者にダメージが入った……という結果だけが残り、時が動き出したタイミングでその事象が発生した……自分で言っててもよくわかってないが、たぶんそういうことなのだろう。
そういうことにした。
だからとりあえず、仮説の信憑性を完全なものにするために一度やってみることにした。
僕は、黒の体に光をはるかに超える速さで蹴りを入れ、再度黒へ攻撃をしようと拳をぶつけた瞬間。
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やはり耐え切れなかったのか、時止めは解除されてしまった。
そして仮説通り黒は全くの無傷。
しかしこのままでは、好機とばかりに黒から攻撃を受けてしまう。
そんなことがないように解除される直前に、すでに超遠距離へと退避していた。
これにより、仮説の立証と黒の視界の外へと逃げることの両方を成功させた。
つまり、やつが得られた情報は、突然視界から消えるという事と、突然致命傷を受けるの二つしか得られていないということだ。
少量の情報のみで、この能力の仕組みを解き明かすのは不可能……。
ならば、永遠に攻撃を繰り返し、完全に戦意を崩壊させる。
それが、無限の回復能力を持つ相手にできる、ただ唯一の勝利条件。
つまり前と同じ!
「さっきから消えたりなんだり、なんなんだよこれは!」
時を止め、一撃を与え、時を動かす。
焼き切れた体を瞬時に再生させ、再び来るであろう攻撃に備える。
時を止め、一撃を与え、時を動かす。
焼き切れた体を瞬時に再生させ、再び来るであろう攻撃に備える。
これを無限に繰り返す。
攻撃しても再生されるのなら、再生する気力が無くなるまで無限に消し飛ばせばいい。
これが、僕の必殺技。
無限×無限ストライク。
無限に続く回避不可能な攻撃の連打に、為すすべのない黒。
破壊と再生を繰り返す、終わりのない地獄。
そのループを壊したのは、黒の満面の笑みだった。
そんな笑顔を見ても、僕は攻撃の手を緩めない。
黒は意味もなく笑うやつではない。
そして、黒にハッタリは絶対にない。
短いようで長い付き合いの僕にはわかる。
だとしても、そうだとしても、僕は攻撃をし続ける。
警戒して、攻撃を止めたら、黒を調子に乗らせてしまう。
それに、たとえ対策を思いついてそれを実行し、僕を拘束したとしても、こっちにだって回復技がある。
何をされても、諦めなければ大した脅威にはならない。
だから僕は攻撃を続ける。
もしさっきのが本当に黒のハッタリで、攻撃を止めて後悔なんてしないように。
今できる全力を叩き込み続ける。
そして、何度目かもわからない攻撃終わりの直後、焼き切れた黒の上半身がポップコーンのように上空へ弾け飛んだ。
「逃がせるか!」
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再び時間を止め、上空へ逃げた黒を最光速で追いかける。
空で硬直する黒の上半身をまじかに捉えたその時、僕の体は停止した。
「止まった……? いや、動かせてる……だけどほんの微量に誤差程度にしか動かせない……?」
それだけじゃない。
どれだけ先へ行ったとしても、体が不規則に元居た場所へと後退していく。
この行動に意思なんて微塵もない。
ただ勝手に、まるで行う行動一つ一つが無かったかのように体が戻っていく。
僕はこれが何なのか知っている。
そして僕は、何度もこの技を使っている。
そして、この技を知っているってことは、かなりまずい状況である可能性が高い。
故に僕は、今すぐに時止めを解除しなくてはならない。
アイツが動き出すその前に、気づかないフリを続けている間に、ゆえに今すぐにとかねばならない。
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時が動き出してすぐ、動けなくなっている僕を見た黒は狙い通りだと言わんばかりに満面の笑みを浮かべる。
「お前今、何をしたって思ってるだろ? 良いねその顔、いいねこの状況!優位に立つってのは何とも言えない気持ちよさがある! そこに立場逆転なんて最高のトッピング加えられちまったら、スカッとイっちまいそうなほどの神シチュになっちまったじゃねぇか!」
僕はそんな黒を見て、何か言い返したいような気分になった。だがものすごく、言い返したら負けなような気がしてならなかった。
だから僕は、自分の中で結論の出た「どうして動けないのか」という問題について考えることで、気を紛らわせようとした。
その時を見計らってかのように、黒は口を開く。
「今、どうして動けないのか考えてんだろ? やっぱ当たりか? 当たりだよな? そうだよなァ! けどよぉ、バカなお前の頭で考えたってぜってぇわかんねえだろうぜ!」
なんだろう。アイツは絶対に心の中が読めないはずだ。
なんでもできるこの空間の能力でも、他人に干渉する能力だけはどうしても使えないはずなのだ。
というか普通に不発で使えなかったし、使われなかった。
使われなかったっていうのは、僕が気絶している間に合体するなんて馬鹿でも思いつく簡単な案を黒が実行して無いとも思えないという話で……そんなことはどうでもいい。
とにかく、この空間の力を使おうとも、絶対に読めない心の声を言い当てたのは、絶対にただの偶然のはずなのだ。
たったそれだけの事のはずなのに、あの得意げの顔……すごくイラっとくる。
あと、あのバカに答えが分かってないって思われるのも同じくイラってくる。
ついでにバカにバカっていわれるのもだ!
そしてあのバカを攻撃できないから我慢するしかないこの状況は、今の僕にとって地獄でしかない。
そんな僕の気持ちを、アイツは心の中で「怒っている」の一言で済ませているのだろう。
後で絶対し返してやる。
「まあ安心しとけ。俺は僕っ子のお前とは違って、ちゃんと教えてあげられるような優しい心をもってんだ。別にこれからの解説をありがたがらなくてもいいぞ?だってやって当たり前だからな」
そういいながら黒は、手のひらに握りこんでいたあるものを見せてきた。
だがそれは、完全に予想通りの電子レンジだったんだけど、ミニチュアサイズまで小型化されていた部分には僕も驚かされた。
「超小型化された電子レンジを使って、空間にラグを引き起こす。お前がどれだけ早く動こうとも、これさえあれば無限に拘束ってわけよ。まっ、お前にこの完璧なアイデアは理解できんだろうがなァ!」
「もう何度も使ってるわ!」
黒の発言に、思わずツッコミを入れてしまった。
後書きは消しました。
長文ってことは、この時病んでるんだよね。
タイトル変更履歴
「やっぱ俺ちゃんは天才だぜぇ!」→「無限×時間停止=最強」




