神・最終決戦。
私は歩みを止めた。
ふと、後ろを振り返り、ただ足跡をみた。
なんてことない、ただの足跡だ。
ふと遠くを見た。
いつかもわからないほどに遠い日を見た。
その日は暗く悲惨なものであったが、もう一つ足跡があった。
黒く歪んだ色だった。
しかし一歩下がった途端に、鮮やかな色へと変わる。
そして、二つだった足跡が、三つ四つと増えていく。
輝かしい日々だった。
隣にはいつも誰かがいて、前に行こうとするものも、後ろで隠れているものも、気づけば隣で笑っていた。
光り続けた日々だった。
そして気づけば、足跡の数はしぼみ、たった二つになっていた。
私はその時を思い出し、振り返ることを止めた。
その時思い出した言葉は、ある人からの、始まりの言葉だった。
「私とパーティを組みませんか?」
人の光が闇を払った、始まりの日だった。
扉が開く音がする。
次元と次元を繋ぐ、大きな大きな扉。
それが開いた音だ。
扉の奥に見える訪問者の影。
私はそれを知っている。
知っていてなお、断定できなかった。
それは、力に天と地ほどの決定的な差があったからだ。
だがその疑惑は、相対した瞬間に晴れた。
姿は転生者そのまま。
だが、圧倒的なまでに開いていた力の差は、たった数時間で完全に埋まっている。
「そうか……私と同じか」
「一緒にするな。誰も犠牲にしちゃいない」
「一緒じゃないか。私も貴様も同じ神だ!」
私の言葉に呆れ、まるで聞いてはいなかった。
神にまでなってなお、私の言葉を理解できないとは……所詮中身は人か。
「戦う前に聞いておく。お前はその力で何をする」
「何をする……とは、縁遠いことを聞く。私は貴様のように、力で何かを成すわけではない。ただ力が欲しいだけだ。何者すらも敵わない、何者も神と疑わない力をな」
話す義理などなかった。ただの人が、私の目的なぞ理解できるはずがないからだ。
しかし、私の目的は何者すらも敵わない力だ。
そしてそれは、完膚なきまでに絶対的な勝利でなければならない。
敗北の理由を、たった一つですら与えてなるものか。
「そうか……ならば死ね」
まっすぐ突撃してくる気か。正面から打ち崩してくれる。
二人の神がぶつかり合う。
だがしかし、殺意に漲る一撃も、勝利を求める一撃も、互いに届くことはなかった。
それは、力が拮抗している証拠であり、純粋な力のみでは決着がつかないことを示していた。
二人の間で弾ける衝撃が、再び二人を引き剥がす。
互い、姿勢をいっさい崩さず、二人の距離だけが離れていく。
届かなかった衝撃と衝撃がぶつかりあった結果だ。
これを繰り返しても無駄にしかならない。
だから私は、自分からキッカケになることにした。
空中で次元が開く。
「そのエネルギー……数十億年もの歴史を感じる……」
「ただの次元ではない。そう言いたいのだろう?」
流石は転生者といったところか。そんなところまでよく気づく。
その褒美に、これが何かは教えてやることにした。
「この次元は、46億年の歴史と共に生み出された。故にこの次元の強度は、我々の元いた世界に匹敵する。私はこれを貴様にぶつける」
「どうして教えた」
「気づいた褒美だ。それに……」
これほどの攻撃を防ぐ手段などあるはずがない。
だが念のため、次元をさらに増やそう。
何十にも開かれた次元。
そのどれもが、同様のエネルギーを秘めていた。
すなわち、一つ一つがオーバーキル級のド級エネルギー。
「死ぬ前に一つ答えよ。貴様は何ができる」
次元一つ一つが凝縮され、超高密度のエネルギーとなって打ち出される。
エネルギー同士が反応し、爆破を繰り返しながら転生者へと近づいていく。
故に逃げ道は無く、回避は不可能。
くらった瞬間に分子レベルに体が崩壊し、意識を保つことすら困難だ。
故に、私は勝利を確信した。
答えなんて帰ってこなくていい。何もできないという結果さえあれば、それでいいのだから。
だがその考えは、すぐに打ち砕かれることになる。
無数のエネルギーが、転生者へ触れようとした瞬間、干渉して爆発することなく、全て空へと打ち上がっていく。
ただ一点に集まり続け、次第に合わさり、たった一つの巨大な塊へと変貌していく。
それはまるで、私が放ったエネルギーを、逆に利用されたかの用だった。
しかし、そんなことは不可能だ。
たとえ反射だろうと蓄積だろうと、その掛け合わせだろうと、キャパというものは存在する。
このエネルギーは、たとえどれだけの力であったとしても、コップから溢れ出すように限界から逸脱しているはずなのだ。
できないはずなのだ。
「なんでもできる。なんでもな」
転生者が発した言葉は、自分の想像を遥かに超えたものであり、今までよりも慎重にならねばならないのだと、遅くも理解した。
落ちる塊は、落ちる隕石のように加速する。
私は、収容と耐久性に長けた次元を作り、塊がスッポリ入るように入口を開け、入ったと同時に少しの隙間もないように閉じた。
おそらく、あの塊が落ちた瞬間に大量のエネルギーが全てを焼き尽くすはずだ。
私もあの転生者ですら生き残ることは困難。
助けることになるのはしゃくだが、こうでもしなければ私は死んでいた。
今度は搦め手を使ってじっくりせめるとするか……。
「言っとくが今のは二倍だ。その程度で防ぎきれると思うなよ」
二倍……?あの転生者は何をいって……!?
頬に切り傷ができる。
私にとって、これは大したダメージではない。だがこれは、これからおこる惨事を知らせる危険信号だった。
それを感じ取ってすぐに、私は背後へ大きく距離をとる。
そして次の瞬間、私が先程までたっていた場所の近く、さらに絞り込むのなら塊を次元の中に封印した位置。
そこから突然、とてつもない量のエネルギーが溢れ出てくる。
その衝撃に耐えきれず、私の一歩前までが完全に消滅する。
もうそこは空間とは呼べず、何もない虚無でしかなかった。
「なぜだ……なぜ私に教えた!」
あの転生者が何も言わなければ、私は死んでいたかもしれない。
なぜだ……なぜ完膚なきまでの勝利に水を指した!?
そんな思いを粉々に砕く一言で、ある感情が私を襲った。
「俺が言わなきゃ、気づかなかったのか?」
数十年ぶりに表れたその感情の名は……「怒り」だ。
ノリで覇道目線で書きました。
あと主人公はキレているため、覇道が求める以上の完勝も求めています。
そのため、覇道よりも一回多く情報を与える行動にでた……という感じです。




