31.終わるはずがないだろう。始まるのだから
「やっと我を負かしたか。これでようやく始められる」
!?
背後から声がした。それは、聞いたことのある、するはずのない声だった。
だって、アイツは今、この手で倒したはずなのだ。
その実感もあった。アイツはすでに、爆発で木っ端微塵に吹き飛んだはずなのだ。
だから、ありえない。絶対にありえないはずなのだ。
そう思いつつ、俺は後ろを振り返らずにはいられなかった。
爆煙が立ち昇り、少しづつ煙が晴れていく。
煙が隠していたその中身が、少しづつわかるようになっていく。
生きているはずがない。だが、生きていた。
覇道道正は、煙の中で平然と立っていた。
どうして生きている。そう問いかけようとした。
だがそれは、喉に出かかって止まる。
わかってしまったのだ。
煙が晴れた瞬間に、その理由もアイツの秘密も何もかも、視覚で感じられるものは全て、理解してしまったのだから。
確かに、覇道道正の体は完全ではなかった。
体のあちこちに欠損がみられ、体の中心には大きな風穴が空いていた。
だが平然と、足も手もそこにあるかのように、絶対不可能な体制で仁王立ちしていた。
欠損した部分から血が流れる事もなく、変わりに傷口を塞ぐようにできていた虹の縁は、液晶が割れた時にできるあの色を彷彿とさせた。
そんなエフェクトのせいか、不思議とグロテスクだという印象は感じられなかった。
そういう生命体であるかのような、なんとも不思議だった。
「そう驚くな。すぐに元通りだ」
体が修復されていく。
パーツを付け足すのではなく、全く同じものをその場で作り出し、穴や欠損した場所を完全に元通りにしてみせた。
いまや俺が苦労して与えたダメージは、どこにも見当たらない。
黒「アイツ、なんであんなピンピンしてんだ?クソゲーか?」
主「もう一度いくぞ。今度こそ倒す」
サイコパスハートを手に、覇道道正へ切りかかる。
しかし、剣は虚空を割いたような感触と共に、覇道道正をすり抜けた。
「我は自身を次元生命体へと改造している。貴様に敗北し、肉体を定義するものが無くなった今の我には、何人も触れることは許されない。もっとも、このままではこの体すらも崩壊してしまうがな」
主「肉体を失うことを想定した仮初の体だと!? そんなものなんの役に立つっていうんだ」
「問題ない。必要なのは、我の魂に直接干渉できる状況なのだからな」
覇道道正がそういうと、地面が消えた。
黒「あっぶねぇえええええ!」
突然足場を失った俺は空を飛んだ。
焦りはしたが、周りを見るくらいの余力は残っている。
なので、辺りを見渡した。
空へと飛んでいく四枚の板のような物が見えた。
その色合いをみるに、空中にできた足場が変形したと捉えられるが、1枚多い気がする。
もしかしてあれは、俺を閉じ込めた次元の欠片か?
カディア達のいる観客席はまだ残っている。
他は消えているのを見るに、必要ないから回収してないと考えられる。
それでも消さないってことは、そんな暇がないってことか。
ん?あそこにいるのって……神じゃねぇか!
人様を勝手に転生させたあげく、必要ないからって理由で別の能力押しつけてきた堅物爺さんめ!
んで……何あれ。地球?
なんで手足生えてんのさ、着ぐるみってやつか?
まあなんでもいいや。
カディアとラーラが無事ならそれでいい。
「貴様は言っていたな、我は力しか信じられないと。それは紛れもない真実だ。貴様も知るように、我は転生者だ。
貴様のには劣るかもしれないが、かつては私も、能力を持っていたんだ。
その力は圧倒的で、見るもの全てが小さく見えた。
そして確信したよ。これは、神から与えられた、私の才能なんだってね。
しかし、ラスボスを倒して願いを叶えたとたん、力は消滅してしまった。
その時、我は絶望した。
その力を使ってなしたこと全てが、何もかも消え去った。
地位も、名誉も、恋人さえも、私の前から、一つ残らず全て……なくなってしまった。
そんな時だ。ある男が、声をかけてきた。
再び、圧倒的な力を得たくはないか……と。
最初は信じてなどいなかった。
だが、その時の我は、そんなくだらない妄言にさえ、すがらずにはいられなかった。
その時に得たんだ。
この、次元操作の超能力を!」
四枚の板のようなものは、あるものを映し出す。
どうやら近いのは、板ではなく、厚みのあるパネルだったようだ。
そして、俺はその光景を知っている。
「これは次元映像と言ってな。さきほどまでの四つの戦いを、戦いごと記録させてもらった。後は、次元映像に内包されたエネルギーを、我が力とするだけ……」
四つの次元映像から放たれるエネルギーは、覇道道正へと注がれる。
そのエネルギーは離れている俺にも伝わるほどに、強力で強大だった。
「素晴らしい……このエネルギー量……一国を滅ぼして得たエネルギーの何千倍ものエネルギーだ!」
エネルギーが取り込まれれば取り込まれるほど、近づくことが困難になっていく。
ひとっ飛びすれば届きそうな距離なのに、どんどん離れて遠くへ感じてしまう。
そして、いっさい遠ざかることも近づくこともなく、ただその場で浮遊する。
そして……。
覚醒の時はきた。
次元の体すらも失った覇道道正の姿は、人間であると定義するには程遠く、しかして他のどの生物ですらも例えようがなく、その胸に炎を宿すその姿を表すとするならば、人の姿をした怪物。
もしくは……。
〈神〉
追記
わかりづらいので解説いれます。
覇道道正の目的は神になることであり、そのために必要なのは……
1.神を越える力が必要
2.神を越えるために、次元操作の能力を進化させる必要がある
3.進化には莫大なエネルギーが必要
って感じです。
朝の散歩虫。正直クソ眠い。
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