20.レッド・ソウル・マキシマムってさ、これって実質、この作品史上始めての名前のある主人公最強形態じゃね?
「レッド・ソウル・マキシマム……いったいなんなんだそれは!」
「それはこれから、お前自身が身をもって感じやがれッ!言っておくが今の俺は、誰にも制御できない自由で自在な疾走野郎だッ!」
「訳のわからないことをぐだぐだと!」
時間停止を使い、自身の時のみを加速させ、タイムの体は一方向へ向けて加速し続ける。
瞬間、消えた。
姿をとらえられぬほどに加速させた今のタイムは、音速を越え、光速を越え、ついには時間の流れさえも越えて、人類には到底到達できないほどの速さでの攻撃を、完全に停止した時の中にいる狂命へと浴びせた。
止まった時の中で繰り返される逆行と加速の連続により、無限とも思えるほどの連撃を、誰も認識できぬ世界でそれをタイムは披露した。
先程までとはくらべものにならないほどの攻撃。
後はその加速を損なわせぬまま、時が動き出すと同時に、更なる連撃を繰り返すだけ。
タイムは見かけ倒しな狂命を笑い、時を再び動かした。
しかしどうだろう。先程まで目の前にいたはずの狂命は、忽然として姿を消した。
ありえない。
なんの前触れもなく、突如として目の前からの消失を目の当たりにしたタイムは、とっさにそう思った。
なぜならタイムは先程感じていた。
そこにいなければありえないほどしっかりとした、そこにいるという感触を。
狂命の体にめり込んでいた拳の感覚を。
何が起きた。
それは、ついさっきまで、狂命が感じていたものと、まったく同じものだった。
瞬間、感じる殺意。
危機の感覚。それが本能を呼び覚まし、いますぐに時を止めなければ命はないんだと、体の芯まで伝わる恐怖で伝えてくる。
それに耐えきれなくなったタイムは、その危機が訪れる前にと、必死になって時を止めた。
その危機を察知してから、絶対安全な世界になって始めて、タイムは背後を振り向いた。
間近にある狂命の顔に、そしてその異常に、タイムは驚いた。
なんだ、いったいこれはなんなんだ。僕の世界のはずなのに、僕だけが自在に動ける世界でなくてはならないのに、どうしてこの男はこんなにも自由なのだ。
驚きのあまり、拳を狂命の頬へとぶつける。
そして、やはりと言うべきか。
感じる、そこにいなくては感じえないような、触れたという感触。
そして別に感じる、優しいそよ風。
しかしタイムにとっては、そんな風が吹けば感じるようなことすらもありえなかった。
そしてそれは、空から覗く観測者ですらも異常であると理解した。
止まった時の中で動き続ける風など、あっちゃならないと理解しているものにこそ、この異常は異常であると観測できるのだ。
だが、それに気づくのが遅かった。
なぜならすでに、タイムは狂命の居場所を探るため、時を再始動していたのだから。
再び始まった瞬間に起きた膨張竜巻が、タイムを果てへと吹き飛ばす。
竜巻が止んだ先で、ゆっくりと立ち上がって見せたのは、レッド・ソウル・マキシマムと名付けた力を有した狂命だった。
それをみたタイムは自身を逆行させ、再び時を止める。
「姿をのこのこ表すなんて、死にたいのかな?」
そして、狂命のもとへたどり着くと、今度こそ確実に仕留めるため、再び自身を加速させる。
だがこの瞬間、タイムは目の前の狂命に違和感を覚えた。
何かが欠けている。
タイムは狂命から、何が欠けているのかはわからなかった。
しかし何かが欠けていると気づいた瞬間、突如エラーを起こしたかのように、狂命の姿が原型をとどめないほどめちゃくちゃにぐちゃぐちゃに変形し、空間中に、流星群のように次々と空へ遠くへ光のアーチが伸びていく。
そしてその光の一つ一つが、狂命へと姿を変えた。
どうなっているというんだこれは!?
そう思うと同時に、タイムは一つの結論に到達せざるをえなかった。
しかしそれはとても馬鹿げていて、とても信じられるものではなかった。
信じられないほどに馬鹿げた結論。それは、一瞬一瞬が認識できないほど、つまり、時間が認識できないスピードで動き続けているということ。
しかし時間は瞬瞬刻み、その上で、認識できるものは全て認識する。
その結果、移動した際に残された残像を狂命本人だと誤認識し、その残像に質量を与えてしまった。
「まさか……その速さ、実に秒速分の無量大数の無限光年だって!?」
「これこそ時間停止つぶしの最終奥義ッ!無限の質量押しつぶしッ!」
質量が雪崩のように、タイムへと降り注ぐ。
そしてタイムは、気づかぬ間に質量に押しつぶされ、圧死した。
その時、止まった時間は動き出す。
存在しない質量を感じ取った時間はオーバーフローを起こし、大爆発を引き起こした。
熱く広がる熱波を背に、俺は空を見上げた。
四天王タイム、破れたり。
やっべ。また収集つかなくなった。
まあいっか、とりあえず寝よ




