15.俺がいんだからなんとかなんだよバーカッ!
30分前。現実。
「うっへぇ~!みーんなぶっ倒れてやがる。大幹部様はおっそろしい能力をお持ちのようだ」
騒がしい声が聞こえてきた。やつらは悪組織のメンバー。全員が超能力者であり、その中には幹部と呼ばれる複数能力持ちもいる。
「無駄口叩いてないでヤツを探せ。精神が持ってかれた今しかヤツを倒す手段はない」
明らかに仕切っているこの男。他の数人から慕われている様子から察するに、この中で最も強い人物である可能性が高い。
「ヘッヅさんがそんなこと言うなんて。そんなにヤバいヤツなのかよ。その狂命ってヤツは」
「幹部の中でも最強と呼ばれるNo0~No5を一人で倒したらしい」
「なんだそれ!おとぎ話かよ!」
悪組織の人間からしても、その戦績は異常らしい。
なんなら、No1~No5は同時に相手をしたというのだから驚きだ。
もっとも、当の本人達はこの任務を受けるまで、大幹部は組織に伝わる伝説?のようなものだと思っていたのだが。
「見つけたぞ。善組織のお嬢さんも一緒だ」
見つけたというヘッヅの知らせを受け、ヘッヅの元へ他のメンバーが集まってくる。
そこには確かに、要注意死刑人物に指定されている狂命という男と同じ顔をした人物がいた。
「一緒だぁ?デートでもしてたのかよ、ガキの分際で彼女持ちたぁ許せねぇ!! 今すぐここでぶっ殺す!!」
私怨に燃える男が先走り、腕を大剣へと変化させて斬りかかる。
大剣は確実に狂命の体を切り刻み、その深さから、確実に絶命したように見える。
しかし、死ぬことはなかった。
なぜなら次の瞬間、大剣は根本から砕け散ったのだから。
「な……なにが……?」
そんなことをいっている間に、全身が燃え上がり、腕を武器に変えた男は灰となって死んだ。
今、いったいなにが起こったのか。
しかし、その場にいる誰もが、それを理解できていない。
「アイツ、変なとこに囚われやがって。めんどくさい奴らは俺に任すってか?」
切られて別れたはずの上半身と下半身を徐々にくっつけながら、俺はその場で立ち上がる。
1、2、3、4……数えんのもめんどくせぇな。
見て必然。悪組織の奴らだ。
んで、あの自信。どうみたって超能力者だ。
「目が覚めている!?いや、そんなことより、コイツ、不意打ちでヤイバを殺りやがった!!」
どうやらさっき殺したのがヤイバらしい。
まあ誰でもどうでもいいが。別に、全員殺すことに変わりはないし、さっさと殺して何とかしてみるか。
「おい貴様!! よくもヤイバを殺ってくれたな? 正面から戦えぬ卑怯なやつめ!!」
「その発言、ブーメランってやつが頭にぶっささってやがりますよ。まさか、正面から俺に勝てるなんざ思ってないよな?」
そう言う俺をフッと鼻で笑うと……じゃねぇ!今、人を鼻で笑ったなコイツ!後ろの奴らもにやにやしてるし、自信過剰がすぎるんだよ!
「戦いはもう始まっている。そして、今の一瞬が命取りよ!」
先頭で威張る奴の手のひらから放たれた龍の顔に俺はさらっと飲み込まれる。
「死ぬ前に覚えておくがいい!俺の名はヘッヅ!悪組織幹部のNo6であり、いずれ大幹部となる男!貴様ごとき、俺一人で十分だ!」
そう言うと龍の顔は、大爆発を起こした。
その威力は、中に飲み込まれた人間は、絶対に助かるはずのないものだった。
「さすがはヘッヅさん!まさかあんな爆発技を習得していたなんて!さすがは俺らのNo6!」
「No1からNo5が殺られた今、誰もヘッヅ先生を止められねぇぜ!」
聞こえてくる称賛の嵐。しかしヘッヅは、その称賛に包まれてなお、警戒を解いてはいなかった。
「違う、俺じゃない。奴はまだ、生きている!」
なぜならば、爆発技なんてものは習得していなかったからだ。
そうつまり!
「そのとおり!俺は死んじゃいねぇぜコンチクショー」
「お前、なぜ極炎の中で生きていられたのだ!」
あの技は本来、飲み込んだ対象を炎で焼き尽くす技だ。実際熱かったし。
しかしだ。しかししかししかししかししかぁああああああしっ!
俺には通じないなぜなら!
焼かれながら回復できるからだ。
あんな炎余裕余裕。この前の五人の方がめんどかったわマジで。
この前の五人……?
なんだか少し記憶にズレがある。俺はあの五人に対して、特に苦戦なんかは……。
そうか、これはアイツの記憶ッ!
……くっくっく。くははははははははははははははァ!
そうか、全部思い出したぞッ!そして、アイツの記憶を持って理解したッ!
あの野郎に負けたこともそうだが、負けた理由がハッタリなんてしった今、ぶっちぎれそうなこの怒り!お前ら使って発散してやるッ!
「アイツ、府陰気が変わって……」
「どうせハッタリだ!ヘッヅの兄貴にだけイイカッコはさせねぇぜ。幹部候補の力、みせてやる!」
なんて言ってたお前はどこへ行ったんだ?
脳天に突き刺さったその槍が、お前の力ならお笑いもんだな。
それともなにか? まだ気づいてないのか?
俺の能力で死んだことに。
「どうしたんだよルーグ。急に黙るなんてお前らしくな……い……!?」
いつの間に。って思ったか?それとも、お友達が殺されて苦しい思いでいっぱいか?
それともこれが、死んだ幹部の超能力なんでびびったか?
額に出るそれは冷や汗かよヘッヅ!
No6が笑えるなァ!
「いったい何が起こって……!?」
はーい考え事した。今の一瞬で、9人死にました。
俺の降らせる光の雨は、少しばかり鋭利だったようだ。
「まさか、お前がやったのか……?よくも仲間を殺したな!」
はい。これで全員死にました。
最後の斬撃からの爆発は、ちょーっと多く使ったが、なんとか10万年の消費に押さえてやったぞ感謝しろよ?
文句は聞き入れねぇぞ俺は。なんせ、今は俺のターンなんだからな。最後の一撃くらいは好きにさせろってこった。
ま、俺にかかりゃこんなのラクショーだし。
「まだ終わってはいない!」
爆煙の中から飛び立つ影の正体は、一匹の龍だった。
あの顔、すんげぇどっかで見たことあるし。
絶対ヘッヅ関連の何かだってみりゃわかる。
「これが俺の最終奥義、龍現界!いわゆる生まれ変わりだ。一生この姿なのは苦痛だが、仇のためならば仕方なし!」
「お前にいいこと教えといてやるよ。いいか復活ってのはな……」
「食らえ我が必殺!ボルケーノフレア!」
俺の台詞を聞ききるまでもなく、龍のお口から、炎のゲロが放たれる。きったね。
ワープホールを2ヵ所に作り出す。
一方は炎の進行方向に、もう一方は龍を取り囲むように。
「対戦ゲームじゃ、弱体化するもんなんだよカスがッ!」
龍を囲むように作り出したゲートは、鋭利な闇に閉じ姿を消す。
次の瞬間、龍の持つはずの上半身と下半身が、切断されたようにぷっつり別れて宙を舞っていた。はっ?と言いたげなその表情が、堪らなく面白い。
だが飽きた。
俺は落ちる死体の真下に、再びワープホールを開く。
もちろんそれは炎の出口だ。
龍は自分の炎に焼かれ、灰となって絶命したのだ。
自滅とは、なんとも無様。
俺なら3日は家からでれんぜ。
そんなことよりもだ。
なにがあったんだし。
みんな寝てるし、誰も起きないし。
……俺も寝た方がいいのかな?協調性みたいなあれで。
(おーいきこえる?)
どこからか聞こえてくる主の俺の声。とりあえず、聞こえないフリをすることにした。
鴬が鳴いている。これは何かの前兆か?
(おい聞こえてるならさっさと答えろ)
いい天気だな。さんさんと照り続ける太陽が、俺の心に刺激をくれる。
(いまたぶん夜だろ。どこに太陽があんだよ)
ちょっと怒り始めたので、このへんでやめておくことにした。
はいはい。それで?お前今どこいんだよ。
(なんか今、精神世界ってのにいるらしくてさ。まともに戦えんのよこれが)
なにいってんだコイツ。
じゃあどうやって会話してんだし。
(あー、そりゃ簡単。糸電話みたいなあれこれでふんだかだーんってやったらできた)
バカにしてんのかコイツ。
(とにかく、ちょーっと協力を要請したいのだがよろしいか?)
別にいいが、なにすりゃいいのさ。
(そりゃあもちろん……)
はっはっはっはっは!TRIGGER作品はよいぞ!




