14.所詮最弱はこの程度
「お前は……!どこへ消えていたんだ!」
降りたって最初にかけられる疑問がそれか。
まったく下らない。他に何かなかったのかよ。
「んなもん決まってんだろ。空だよ」
はぁ……っとため息をついた後、天を指差しながら、呆れたようにそう答えた。
困惑している様子だが、俺はこの状況に意義がある。だから切り出すことにした。
「そんなことより、なんだよお前ら。殺しにならないからってやりたい放題だなァ」
「う……うるさいッ!お前に何がわかるんだッ!」
逆ギレかよつまんねーな。批判の一つや二つぐらい、覚悟してるもんだと思ってた。
「そりゃ見てたし。わからない方がおかしいだろ」
「見ていたなら早く助けろよ!」
そのヤジは、俺の体が破裂したところで止まった。
俺にだってわからない。だがいつの間にか破裂していた。
俺がわからないんだから、目の前のコイツらからすれば、もっと訳がわからないだろう。
だが何となく、誰がやったのかはわかってる。
「アナタ……よくもッ!よくもこの私を踏みつけてくれましたわね!! これは罰……罰なのですわ!!」
俺の破片をなんども踏みつけながら、恨みのこもった言葉を吐き叫び捨てる。
しばらくして、ようやく落ち着きを見せた黒ラーラは、さっきの豹変っぷりが無かったかのように、「気を取り直しまして……」っと、いつも通りの振る舞いを始める。
「へっ。これだけで倒した気になれるとは。幸せな野郎だぜ」
「ばっ、バカな!? 私は確かにアナタを爆発させて粉々にしたはずですのに!!」
勘違いも甚だしいやつだな。まさか、今まで本当にこれで上手く行ってたのか。なら、今までの奴らが相当バカだっただけだな。
「粉々ァ?なに勘違いしてんだ。今の俺は、精神であって、体じゃない。要するに、元々の形なんて無いんだよ」
つまり、バラバラになったわけではない。バラバラの形に変わっただけ。俺は平然と生きている。
そして、こうやって元の姿に戻ることなんて当たり前にできるわけだ。
前にも似たようなことしてるし、その延長線だと思えばなんてことなく簡単にできた。
「訳がわからないわ!バラバラになったら人は死ぬ!それが精神であっても同じことよ!」
まだわからんかコイツ。めんどくさいやつだな。
「俺は……その程度じゃ死なんと言っているのが聞こえねぇのか!なら改めて言ってやる!俺は!生きていると!」
「ふん!たとえそうだとしても関係ないッ!だってここは私の世界なんですもの」
「なに勘違いしてんだクソガキ」
「誰がクソガキですって!?」
「ここはッ!俺の世界だッ!」
腕を組み、腹の底から叫んでみせる。
赤い熱波の追い風が、それが正しいのだと教えてくれる。
そう、俺はいつだって正しいのだ、
そうでも思わなければ、世界の支配権の脱出など叶わない。
これも前やったことの延長線。何も問題はないッ!
天秤が消え、女子供の精神が地上へと落下する。
その落下先に大陸プリンを作り出し、衝突を防いだ。
精神体の特徴。それは、思ったことがそのまま体に現れること。
今回で言うと、プリンは柔らかくて安全だから落ちても問題ない。という想像が、落下時の衝撃を消した。
逆に、安全だと思わせなければ、そのまま地面と激突して死んでいたというわけだ。
まあもし理解できなかったのなら、マジで死ぬ夢の中とでも思っとけ。大体あってるから。
「どうして自在に操っているの……?ここは私の……!」
「お・れ・の・せ・か・い!だって……言ってんだろうが!!」
拳に伝わるこの力……!間違いなくこれは……!
「物理型精神攻撃ッ!」
渾身の一撃は、まっすぐ黒ラーラの顔面に直撃。勢い任せに空中で回転し、数メートル飛んだところで着地した。
何もないと油断した黒ラーラは、自身の頬を触る。その時、彼女は指先に何かを感じた。
ちなみに、この一撃に殺傷能力はない。だーがしかしッ!この状況下においてそれはない。なぜならば、これは精神攻撃ッ!攻撃対象のトラウマを引きずりだして増幅させる技ならば、精神的な死へと追いやることは可能ッ!
ヒビの一つくらいは絶対に入るのだ!
「ヒビガァ……私の体にヒビがァアアアアアアア!! なんなのよこの記憶ッ!今さらになって出てこないでッ!……まさか魔法!? そんなのありえるはずがない!!」
うるせぇくらいに取り乱す。この戦い、さっきの実験より随分と楽しい!
やはり一方的な観戦よりも、圧倒的な実技に限る!
しかしどうした。状況は絶対に俺が有利なはずなのに、黒ラーラは笑いだす。
気でも狂ったように見えるが、実際は違うだろう。
でなければ、あんな余裕の視線は送ってはこない。
「ふっ……フハハハハハハハハハハハハ!! まあいいわ。いったいどうやって魔法を使ったのかは気になるけれど、そんなのどうでもいいことよ。なんせ、アナタたちはどっちみち終わりなんだから」
「へぇ。ここで強がっちゃうなんて可愛いとこあるじゃんか。数日前なら恋に落ちてただろうな」
俺のマジ言をからかっていると捉えられたのか、少しムッとする黒ラーラ。
しかし、俺の余裕の表情を崩せると予想したのか、再び笑みを浮かべた。
「あら、そんなこと言う余裕あるのかしら。アナタの体が、どうなってるかも知らないで」
それこそが、あの笑みの正体だった。
彼女は続けた。
「知らないだろうけど、すでにアナタの顔はNo0の手によってもう組織に知れ渡ってるのよ。今、現実には何人もの幹部が来ている。今頃は殺されてるに決まってるわ」
それを聞いた俺は、焦りをみせ、動揺してみせ、その事実に恐怖した。
「あら?どうしたのかしら。もしかして、急に怖くなっちゃったりぃいいいい? 別にいいのよチビっても。だーれも怒ったりしないから!ただ、私が大きな声で笑ってあげるだけだから!」
ふりをした。直後、俺は鼻で笑う。
理由は明白。少し調子に乗らせてみたかった。たったそれだけのことだ。
「つよがりのつもりかしら。無駄が好きね」
「お前こそ、無駄が好きだな。そんなこと、俺が知らないとでも思ったか?」
そして俺は、伝わってきた言葉をそのまま伝える。
「なんのために、この俺がいると思ってんだクソガキ」
コイツはもう一人の俺。現状をぶっ壊した、最強の突破口だ。




