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9.遊びだからって容赦なし

極寒にはいって最初に、俺達は防寒具を購入した。

事前に手に入れていた情報では、極寒はすんごく寒いらしいので、つまり名前通りの気候ということなのだろう。

ちなみに、防寒具を着なければ入場すらできない仕様であり、最悪レンタルすることができるが、そんなことするくらいなら買った方がはやい。

なぜ収容区とここまで気温も天気も違うのかは不明だが、何かしらの謎が、これを成立させているのだろう。

とりあえず、俺とカディアが極寒にきて最初にやったことといえば……。


「どりゃあああああ!」


「がぶ」


雪合戦だった。


極寒では常に雪が降っている。だから雪は必然と積もる。

というわけで、何回相手に当てられるか。というルールで勝負することになったのだが、手元がくるってカディアの顔に直撃してしまった。


先に言っておくが、俺は敵対していない人物……ましてや恋心をよせる一人の女性に対し、フルパワーで投げるような人間ではない。俺はちゃんと、一般小学生くらいの威力にまで加減した。


しかしそれでもだ。


顔面は……まずかったかー。


「あ……えっと……カディアさん。大丈夫……?」


顔から、雪が徐々に滑り落ちていく様子は、さながら静かな怒りを体現しているようにも見えて、


「これっていわゆる顔面セーフ……というやつですよね」


「え……うんそうだね」


「先に言っておきますが、別に怒ってはいません。しかし、アナタのその一球は、私の心をたぎらせました」


ん?んんん?んんんんんんんんんんんんん!?


「ちょっと待って!」


「勝負に勝とうとするその執着心。私はそれに敬意を払い、全力をお見せしましょう」


どこからともなく吹雪が降り始めてる!


怖い!怖い!


「待ってって!勘違い、勘違いだから!わざとじゃなくて、手元がくるって当たっちゃったみたいなあれだ……か……ら……!?」


吹き荒れる吹雪の中、風が雪を集めて丸め、大量の雪玉を作り出している!?


「私はアナタに、言い忘れていたことがあります」


「えっ!?なに!?」


「確かに私は、超能力者相手に善戦はできません。しかし、一対一ならば応戦することぐらいは可能です。なぜなら……」


「なぜなら……なんすか……?」


恐る恐る聞いてみる。


「私は少しばかし強いので」


「ははっ。終わった」


これから起こる惨状を考えると、笑うしかなかった。

それからのことは覚えていない。だが気づいたら気持ちで負けていた。

広がり続けるスコアに対して勝利の兆しは光を閉ざし、気づけば本能的に白旗を振っていた。

これが、圧倒的なまでの実力さ。

こうして、俺は異世界人生二度目の敗北を味わった。


そして、敗者には罰ゲームが課せられる。

俺は……昼飯を奢らされた。



これ明らか蕎麦とうどんだよな。というか、ここの入り口にも日本語の看板あったし。

とりあえず、両方一つずつ頼むことにした。


「暖かいものどうぞ」


「暖かいものどうもです。これがうどんですか?」


「蕎麦です。俺のがうどんです」


自分の前の麺類を指差し聞いてきたので、正しく訂正を入れた。


つい先程の話。雪合戦にてボッコボコにされた俺は、昼飯を奢ることになったのだ。


各エリアには飲食できる店が何軒かあり、今は北のエリアの蕎麦屋かうどん屋かわからないところに俺らはいる。


俺は異世界にきて、パスタ以外の麺類をみたことがなかったので、カディアがうどんと蕎麦どっちがいい?なんて、言ってもわからないだろうと考えた。ので、細いのと太いのどっちがいい?と聞いたら細い方と言われたのでそっちを注文して持ってきたのだ。


「私とは違うものを頼んだのですね」


「もしそっちがよかったなんて言われても、わけてやれるし。そのためのお椀ももらったし」


「両方奢ってもらおうと思っていたのですが、その手がありましたか」


罰ゲームという名目なため、今回の旅行で共有財産と化している旅費を使うべきではないと俺は判断し、今回は自腹だ。

つまり、両方奢るということは、親の慈悲によって与えられたおこづかいしか財源のない俺の財布が大ダメージをくらうというわけだ。

いやほんと、この手を思い付いて良かったと思う。


「その、今さら言うのもあれなんですが、先程のあれを、見なかったことにしてくれませんか?なぜだか、今さらになって恥ずかしくなってきましたので……」


少し迷って間を置いて、カディアが恥ずかしそうにそう言った。

俺にはその心当たりが一つしかなかったのだが、すれ違いコントのようになってはあれなので、とりあえず一度聞いてみることにした。


「先程のあれって、雪玉ミサイルのこと?」


あ、うつむいた。本当にそれだったんだ。


「いつもそうなんです。勝負事になると、つい本気になりすぎてしまって……。たかが遊びにあんなになるなんて、自分自身が恥ずかしい……」


「本気になることが恥ずかしいなんて。そんな調子なら、次やれば俺が勝つね」


「なにいってるんですか。次も私が勝ちます」


うつむく顔を上げ、俺の目を見て言い放つ。


「そのいきだ。恥ずかしがる必要なんてない。それが勝負ってもんだ」


俺達は、互いに互いのペースで麺類を食し、完食した後に店を出た。


「それで、次はどうする?行くなら京都か南国だけど」


「罰ゲームとはいえ私はアナタに奢ってもらいましたし、それに前回は私が決めました。なので今回はお任せします」


と言われてしまった。

まあ、順番的には隣の京都一択みたいなとこあるし、そこにしとくか。


「じゃあ、京都行こう」


気づけば夜が明けていた。

だから俺は寝ることにした。

ちなみにパチンコには行かなかった。


まる

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