8.観光のために!改二式
「これどうやって中に入るんでしょうか。受付で渡されたこれを使うのでしょうけど、どうしても使い方が……」
「貸して。なんとなくわかるから」
カディアから受け取ったホテルのカードキーをドアノブの上にある模様に重なるようかざすと、ランプが点灯し扉が開く。
そのシステムはどこからどう見ても、生前日本のホテルでみたオートロックのそれだった。
異世界の知識をこんなところにも生かしているとは、さすが大先輩だ感心する。
部屋の中に入り、扉を閉める。
扉から、カチっという音が鳴ったのをみるに、鍵がしまった。
部屋の明かりをつけるスイッチに、クーラーにテレビ。観光ガイドでみた通り、日本のホテルそのものの内装をしていた。
カチっとスイッチを入れて部屋の中の灯りをつけ、俺は二つ用意されている洋式ベッドの片方に飛び込んだ。
「はあ……。楽ぅ……」
長時間の移動で少し疲れていたのだろう。
眠気に襲われ、少しウトウトしてきた。
これから観光するというのにこれではダメだと思った俺は、ベッドから飛び起きた後、部屋を見渡した。
ベッドの間に小さい机。その上にほのかに明るく灯るランプ。そして、2台のリモコン……えリモコン!?
一つは、冷房とか暖房と書いてあるのを見るにクーラーのリモコンだろう……クーラー?
確かにある。それらしいものが壁の上の方にくっついている。
試しにそのリモコンを使い、クーラーがつくのか試してみることにした。
小さな机の上からクーラーのリモコンをとると、クーラーに向けてボタンを押す。
ウィーンと音をたてながら冷たい風を送り出す。
ちゃんと動いている。これ本物のクーラーだ!
「どこからか冷たい風が……あの機械からでしょうか?」
カディアがクーラーに興味を示している。それもそのはずだ。だって異世界にクーラー無いんだからな!
だが、再現が不可能なわけではない。魔法を閉じ込めていろいろすれば、冷たい風を好きな時に送ることは
可能なはずだ。きっとそうだ、そのはずだ。
それはそうと、俺はもう一台のリモコンに注目した。それは1から12の数字が割り振られたボタンがあるもの。これは明らかにテレビのリモコンだ。……テレビのリモコン!?
焦るようにキョロキョロと部屋を見渡すと、確かにある!確かにあった!
やばい疲れてて気づかんかった!!
これまさか……つくなんてことないよな……?
恐る恐るリモコンをテレビへと向け、電源ボタンを押してみる。
プツンっと画面が光った。しかし何が写るわけでもなく、いつまでも砂嵐……だがそれこそが異常なのだ。
この状況を表す言葉があるとすれば、意味不明。
おかしい。なんかおかしい。
だがしかし、部屋のオートロックも、エアコンも、砂嵐しか流れないこのテレビも、なんかおかしい。
確かに転生者や転移者が作ったと聞けば、納得しそうになる。しかしあえて言おう。
このテレビを作る理由がわからない。
というか、見たことあるってだけで作れるのかこれ。
「どうかしたんですか?」
「いやなんていうか、そのまんまな気がする……」
「そのまんまとは?」
「まんますぎるのここ。俺が生まれ変わる前いた世界そのまんま!というかこのテレビは何のためにあるんだよ!」
「何のためにって……インテリ?」
砂嵐が流れるテレビを見たあと、カディアはそう言った。
「インテリ……インテリか……いやまあ確かに、こんな待ち作るくらいだから細部に拘る人だったのかもしれないし……いやそれでも……」
怪しみ続ける俺を見かねたカディアが、俺の手を引っ張って部屋の出口へと歩き出す。
「どこ行くわけさ!?」
「迷うくらいなら、調査に行きましょう。もしここに何かあるのなら、探さなければわかりません。確証が持てないのなら、持てる何かを探しましょう。そのついでに遊びましょう。そもそも旅行なんですから」
「いやでも罠かもしれないし……」
「それなら、正面から壊しましょう。最初の時もその次も、私が死んだときだって、いつだってそうだったじゃないですか」
俺は彼女に信頼されている。
ただの直感で、確証のない何かが、俺の心を動かした。
きっと俺は、彼女のこういうところが好きなんだ。
……いや、全部好きだぞ俺は!
「それもそうだな。行こうカディア、調査するついでの遊びに!」
カディアに背中を押されるように、俺はそれに合意した。
そう答えた俺の笑顔を見て、カディアも笑った。
「なに見てるんだよ。前見て歩かなきゃ危ないぞ」
雑誌を読み込むカディアを見て、俺は親切心でそう言った。
「ホテルで売っていた、TOHK30年の歴史が載ってる雑誌です。言っておきますけど、一応は調査なんですよ。アナタもちゃんと調査をしてください。その前提で遊んでください」
調査……調査かあ。そう言われたって、回りはどう見ても高層ビルだらけ。しかも、どれも中身はホテル。たまに違うのがあるけど、お土産屋だったり何だったりで、都会っぽい外見で作りましたって感じだ。
……ただ、床とかがミスマッチと言われれば、そうかもしれない。
「そういえば、先ほどからなぜ道の真ん中を歩くのですか?」
「なぜってそりゃ、道路の真ん中を歩けるなら歩くだろ」
そういえば、道路あるのおかしいよな。これも違和感に付け加えておこう。
寝る。
ちなみにですが、実はタイトルの前についてるあのよくわからん英語と数字の羅列に意味はないです。
ちょっとは意味があるかもだけど、特に意味はないです。




