98 山登り(2)
結局、何度か飛んで、方向を修正しながらも、二人と一匹は徒歩で森を抜けた。
切り立った山々は徐々に近づき、目の前に聳え立つ。
パピラターは、両手一杯に布に包んだ木苺を持っていた。
「なかなかだったわね」
ドヤ顔でそう言うと、布をきっちりと袋状に結び、木苺の包みを作ってから、木苺を鞄に押し込んだ。
なかなかご満悦である。
目の前には、なんだか荒れ果てた山が見える。
獣道すらなく、上らしき方へ進まなくてはならない。
プルクラッタッターは、上を見上げた。
「流石にここは、飛んでいくでしょう?」
パピラターも山を眺め、少しだけ考えるようにした。
「……そうね」
プルクラッタッターがくるりとロケンローに振り向く。
「じゃあ、よろしくね、ロケンロー」
改めて、変身をお願いするのはちょっとおかしな感じだ。
パピラターもめっっっちゃ見てるし……。
「まかせて!今こそ変身だよ、プルクラッタッター!」
いつもの決まり文句を、ロケンローが叫ぶ。
もう耳慣れたBGMが流れ出す。
チャララ〜〜〜ン♪タラララ〜〜〜〜♪
なんだか、……持ち上げられるような感覚がする。
そうなのだ。
パピラターからもらったペンダントを着けてから、変身中、なんだか不思議な感覚を感じることがあった。
最初はなんともなかった。
けれど、一度目より二度目、二度目より三度目、と感覚は強くなるような気がした。
なんだか……ペンダントの存在が増したような、そんな感覚。
プルクラッタッターが、天を仰ぐようなポーズを取る。
キュピーン!
ペンダントから出た光が、プルクラッタッターの身体を包み込んだ。
そうだ、まるで……、飛んでいるパピラターに引き上げられている時のような感覚。
思い当たった瞬間、パチン!と爽やかな弾ける音がしたかと思うと、急に、聞き覚えのない、
ダラララ♪ダラララ♪ダラララ♪
という音が聞こえた。
えっ!?何!?
思っている間にも、変身が進む。
また元のBGMに戻ったかと思ったけれど、BGMは雰囲気を変えていた。
転調され、音色が増えている。
!!!!!?????
驚きながらも、手に星を模したステッキが握られた。
チャン!チャ〜ラララ〜〜〜〜〜〜♪
プルクラッタッターの背後に大きな紋章が浮かび上がる。
「煌めく天よりの翼、魔法少女プルクラッタッター!」
変身をずっと眺めていたパピラターが、
「ペンダントが上手く馴染みはじめたみたいね」
と笑う。
「え、あ、うん。そういうこと、なのかな」
「プルクラッタッター」
言いながら、パピラターがプルクラッタッターの頬に触れてくる。
「少し赤いみたいだけど、もしかして魔力が……」
「あっ……」
プルクラッタッターが、そっぽを向いた。
「大丈夫……、だと思う」
それから、二人と一匹は上空へ上がった。
山が近くなる。
「これならあっという間に頂上に……」
プルクラッタッターが言ったその時、突風が吹いた。
「いぁああああああああああああああああ」
「プルクラッタッターぁああああああああああああ」
プルクラッタッターを追いかけようとしたロケンローが、一緒に飛んでいく。
「……何やってるのよ…………」
魔法が使えてもなかなか大変な山登りなのです。




