94 真っ暗な塔の中で(7)
ポフは塀によじ登ると、周りを見渡し、小さなパピラターに手を差し伸べる。
「ん!」
なんとか手を繋ぐと、そのままくいっとパピラターが浮きあがるように持ち上げられた。
「うわわわわ」
パピラターは、こんな風にぶら下げられたのは初めてのこと。
ぶら下げられた時どうすればいいかなんて、知る由もない。
そんな風に力無くぶら下がったまま、気がつけば塀の上に座らされていた。
「じゃあ、向こう側にゆっくり降ろすから」
「うん」
両手を繋がれたまま、とすん、と小さなパピラターの両足が地面に着いた。
「…………」
運動もろくにしたことのないパピラターには、なんだか、不思議な感触だ。
こうして、意識することもなく、小さなパピラターは、初めてその塀を越えた。
出られないはずの場所は、こんなにも小さな塀で囲われていた。
パピラターとポフは、賑やかな方を目指して歩いた。
ポフもパピラターも、塀の中とは打って変わって、はしゃぎながら、道を歩いた。
段々と、周りが賑やかになってくる。
「行くぞ!」
「うん!」
あれは何?
すれ違う人々は動物を模したお面を頭に被っていた。
あれは何?
町を眩しいライトが照らしていた。
パピラターは、蝋燭ではない、魔道具のランプを見るのは初めてだった。
あれは何?
プワプワとした様々な音は、どこかの楽団が鳴らすラッパの音だ。
すごく眩しい!
すごくうるさい!
そう思った、瞬間だった。
どーーーーーーーーーーーん……!!
「ふきゃあああああ!!!???」
目の前に広がる町の向こう側で、大きな爆発音がした。
「落ち着け」
ぽんぽん、とポフがパピラターの肩を叩く。
「花火だよ」
そう言って、ポフが空を見上げた。
それに倣い、パピラターも空を見る。
どーーーーーーーーーーん……!!
再度打ち上がった花火。
そしてパピラターは、とうとうその目で花火を見た。
空で爆発したそれは、空を大きな花のように明るく照らした。
視界を塞ぐほどの眩しい光。
「すごい……」
パチパチと爆ぜる音の中で、周りの人々の感嘆の声が聞こえる。
これは、なんていう場所なの?
こんな所に、こんな場所があったの?
いつでもこんなに明るくてうるさいの?
「ほら、行こう」
「…………」
パピラターは、目の前を行く笑顔を見た。
「……うん」
ポフが急くように歩き、パピラターがそれを追う。
なにこれ。
なにこれ。
なにこれ。
両側は、店で埋め尽くされている。
通りは人でいっぱいだ。
こんなに多くの人を、パピラターは見たことがなかった。
こんなに眩しい場所を、パピラターは見たことがなかった。
こんなに騒がしいものを、パピラターは見たことがなかった。
この世界には、こんなものもあったのだ。
あの、暗闇ばかりではない。
あの、蝋燭ばかりではない。
あまりの物珍しさに、小さなパピラターは、キョロキョロと忙しなく、周りを見渡した。
お祭りへ出向いた二人。パピラターもお祭りを楽しめるといいね!




