表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
実は◯◯◯◯◯な魔女と実は◯◯◯の魔法少女が魔王を倒しに行く物語  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/140

83 魔王城にて 3rd

 魔王は、執務室の窓の下でうずくまり、項垂れていた。


「…………」


 ケイタロウが、黙って魔王の背中を見つめる。


「本当に……これでいいのだろうか」

 魔王が気弱な声を出す。

 窓からの弱い光と蝋燭数本だけが頼りの部屋の中。

 魔王が今、どのような顔をしているのかは、詳しく見ることはできない。


「とにかく、ヒトに迷惑がかかることはやめないと」

 ケイタロウは優しく宥める声を出す。


「それは……解ってる。やめられるものなら……。けど、食料を何処かから手に入れないことには、民の命が……」


「食料を手に入れるためにいちいち町を壊滅させるのは効率が悪い。結局、隣接三国とまともに取引できるようにならないと、後はない」


「……そうだ……」


 先王が崩御して5年。

 奴隷取引や窃盗で成り立っていたこの国だったが、王となったのをきっかけに、健全な国を目指し、魔王は今までやってきた。

 奴隷取引はやめた。

 山脈を越え、人を殺めることも。

 けれど、山脈に囲まれたこの国は、雲が多く晴天の日が少ない。

 多くの植物は満足に育たない。

 なんとか作れているものは、小さなカブに、レタスくらいが関の山。

 動物を捕ったり、北の海で魚を捕ったりでなんとか生活しているが、もう満足に野菜が食べられないと知った民達は、反抗的にもなるだろう。

 命にも関わることだ。


「光を作り出す魔道具を作る。そうすれば、ジャガイモなんかも育てられる。他の野菜も、種が手に入り次第、研究を進めよう」


「あ、ああ……」


「奴隷取引も……。西の砦に、奴隷商の集団が見つかった」


「なんだと……!?」

 魔王が飛び跳ねるようにこちらを向いて立ち上がる。


「お……おぅ……」

 突然目の前に迫る胸元に、ケイタロウがたじろいだ。


「奴隷は全て解放し、禁止したはずだ」


「砦の地下に、大勢の人間を閉じ込めてたよ。魔王様が買ってくれるからっつってな」


「な……っ!我ではない!」

 魔王が手を握り仁王立ちになると、素足が露わになる。


「…………」

 ……一体どうしてコイツは俺の好みの格好をしているのか。

 あの愛の女神とやらに落とされた時、目の前にこんな格好の女がいたものだから、一瞬、死ぬ間際のボーナスタイム的な夢かと思ったくらいだ。

 ……それにしては、過酷な生活すぎたがな。


「ケイオスぅ〜〜……」

 魔王が、若干涙目になる。


「わかってる。誰かが魔王を騙っている。そのルートも追わないといけないし、こっちも時間がかかる。どれも気長にだが、このままだと国として成り立たないだろ……」


 魔王が縋るようにケイタロウに近付き、ケイタロウが手を差し出した時、

「ゴッホン」

 と、あからさまに大きな咳払いがした。


 大臣達4人が、並び立ち、その様子を見ていた。


「…………」

 邪魔をされ、恨めしそうに魔王がじいやたちを睨みつける。


「コホン、おひぃ様、我らずっと居りましたが?」


「わかっている!」

 カン、と音をさせ、ヒールの足を前に出した。


「ふむ……」

 とケイタロウがそのポーズを眺める。


「おひぃ様、視察団のメンバーも揃いました。こちらも進めねばならぬでしょう」


「……ああ。国の資産を洗い出し、外貨を得る。必ず国を……まともにしてみせる」


 魔王の燃えるような赤紫色の髪が、揺らぐ。

 決意を見せる眼差しは、空の光が無くとも輝いた。

魔王城がいつも暗いのは、魔道具のランプがあまりないからです。

基本、蝋燭。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ