77 あたしのことを思い出せるように(2)
二人と一匹は、そこからすぐ近くにある冒険者ギルドへと向かった。
冒険者ギルドは、外とは打って変わって、静かなものだった。
外の人混みから、避難するにはうってつけの場所だ。
「お二人とも、こんにちは!」
入った途端、声がかけられる。
この町に来てからずっとお世話になっているショートカットのお姉さん、ラリアさんだ。
「こんにちは」
プルクラッタッターがにこやかに挨拶を返す。
「こんにちは」
パピラターも、ツンとしつつも挨拶を返した。
案内された部屋は、いつもと同じ部屋だったけれど、二人と一匹の気持ちのせいか、なんだか空気が違うように感じられた。
そりゃあそうだ!
なんと今日は、あの湖のヌシを釣った報酬が貰える日なのだから!!
いつもより厳かで静かな部屋の中に、ラリアさんがやって来る。
報酬の受け取りは現金でもいいのだけれど、今回は、金額が金額だからか、現金かどうかの質問はなかった。
カード読み取り機がテーブルの上に置かれる。
「今回の、湖のヌシの報酬はこちらになります」
そう言われ、依頼書と同額の金額が示される。
プルクラッタッターは、あのどう見ても数十年経っていそうな依頼書を思い出し、少しだけ、「この世界では、貨幣価値が変動するなんてことはないんだろうか」なんて思ってみたりする。
パピラターが準備してきたカード3枚に分けて、報酬が支払われた。
パピラターは、ただ生活するだけなら、20年は働かなくて済みそうな額を眺めた。
それはやり遂げた喜びや、今後の不安が少しだけ減ったほっとする気持ちや、心臓が掴まれたような寂しさが混ざったものだ。
「ありがとう、ございます」
パピラターが小さくそう言った。
「こちらこそ、まさかこんな場面に立ち会えるなんて」
と、ラリアさんが、人懐っこい顔で言いながら、両手でパピラターの手を取り、ブンブンと握手をした。
「またいらして下さいね」
というラリアさんの言葉に見送られながら、冒険者ギルドを後にする。
青い空の下、プルクラッタッターの胸元で、ドラゴンのペンダントに光が反射する。
その度に、パピラターは、なんだかそわそわするような、不思議な気持ちを味わった。
夜。
それぞれの扉の前で、「おやすみ」を言って、それぞれの部屋に入った。
部屋着でも、ちゃんとペンダント着けてくれてる……。
パピラターは、一人、部屋に入るなり、まっすぐにベッドへ向かう。
ガバっと布団を被り、そのままじっとしていた。
外で、夜の鳥の声がする。
ざわざわと木々がゆらめく音がする。
静かな夜だった。
ペンダントを渡すのは、ちょっとわがまま過ぎただろうか。
けど、プルクラッタッターにとっては、便利な物のはず。
そして、便利だからこそ、手放すことはないはず。
だから、プルクラッタッターは、魔法を使う度にあのペンダントを触る事になる。
そして、あたしを思い出す。
いつだってあたしの事を想えばいい。
あたしが、居なくなった後も。
パピラターはちょっと感情が重めです。




