71 VS湖のヌシ(1)
翌日からも、パピラターの行動は大して変わることはなかった。
早朝からヌシ釣りに行き、その後、魔物退治の依頼をこなす。
それでも、あの火事のことがあってから、ヌシ釣りには気合いが入っているようだ。
どうやら、ヌシ釣りの報酬をアリサに分けてあげたいと思ったようだった。
冒険者ギルドで聞いた話によると、捕まえた数人は、全員魔族だったらしい。
おそらく全員が魔族の集団だったんだろうということだった。
パピラターには、より一層、魔王は許せないという気持ちが増していた。
「フンッ!」
と気合いを入れながら、色々な工夫を凝らす。
パピラターは今日は、ワイヤーを何重にも束ねたようなロープがついた頑丈そうな釣り竿を持っていた。
そこに、どこで買ったのか、抱えなければ持てない大きさの魚を持ってきていた。
どうやら餌にするらしい。
餌用の魚は1匹だけではなく、大、中、小となかなかに大量だ。
船は相変わらずの木製の船だったけれど。
大きな針に魚を突き刺す。
そんなパピラターは、船の上に似つかわしくない魔女服で決めていた。
足元には杖の準備も万端だ。
それを眺めるプルクラッタッターも、今日はすでに魔法少女の格好だった。
また本当に船が壊されるようなことがあれば、今度こそ溺れてしまうかもしれない。
ヒラヒラ衣装が恥ずかしいなんていう理由で、命を危険に晒すわけにはいかないのだ。
「さあ!今日こそ行くわ……!」
「おーう!」
パピラターの掛け声に、プルクラッタッターとロケンローの声が応えた。
釣り竿は、プルクラッタッターの手に。
パピラターは、杖を掲げる。
「代理人としてパピラターが命じる。世界の遍く理。我が声を聞き入れ、波を引き起こせ」
すると、プルクラッタッターの持っていた竿のエサが、ゆらゆらと揺れた。
まるで、生きている魚のように。
「ふ~む」
と、パピラターは、仁王立ちで考え込む。
「ひとまずこれで、やってみましょう」
と、竿を受け取った。
そこから、数分……数十分……数時間が過ぎた。
「おかしいわね」
パピラターが、真面目な顔をして言う。
「今日は、魚が釣れる気配がないわ」
ロケンローが、
「エサが、でかいからじゃないの?」
と、口をとんがらかせて言う。
(ドラゴンの口だからいまいちわかりづらいけれど、小さなドラゴンの口からは、口をとんがらかせた声が出た。)
「でも実際、ロケンローも今日は釣れてないんでしょ?」
「まあね」
ヌシが出た日は魚が釣れなくなるという。
これは、期待できるかも、なんてパピラターは思ったんだけど、実際のところ、そんな簡単なことではなかった。
「なかなか釣れない!」
ぼちゃん!!
叫びながら、餌用に積んであった魚を投げ入れる。
「パピラター?」
プルクラッタッターは、パピラターが自棄を起こしたのかと思い、声をかけた。
プルクラッタッターが吹っ飛ばした男達はどこに飛んで行ったのかも不明になってしまったようです。




