52 今日は探偵になってみる(4)
プルクラッタッターの顔がほのかに赤らむ。
それもそのはず。
プルクラッタッターがいつも決めポーズを作る時は、変身の力でポーズさせられている時で、こうして自分からポーズを作るのは初めてだからだ。
は、恥ずかしい……っ!
相手は何も喋らない。
……というか……なんだか様子が…………?
「…………」
檻の横に立っているその“誰か”は、思ったよりも背が低かった。
ちょっとどころじゃない。
プルクラッタッターのお腹まで背が届くかどうかといったところだ。
ハッキリ言ってものすごく小さい。
キャスケットを目深に被り、顔はよく見えない。
赤いベストを着ているのが目についた。
……というか……、赤いベストしか着ていない。
「…………」
パピラターとプルクラッタッターは、その姿形に言葉を失った。
ベスト以外の部分は、灰色の毛むくじゃらだった。
帽子から覗いた顔は、鼻が突き出している。
人間とは思えない形の脚。
手についた肉球。
帽子からは、垂れた耳の端が見えた。
「え……これって……どういう…………」
どう見ても、その姿は犬だった。
「気をつけて。少し知恵の付いた魔物だわ!」
パピラターが叫び、杖を構える。
「魔物……!?魔族じゃなくて……???」
そこで、その犬は、
「ワン!」
と声を上げた。
犬、だ。
それは間違いなく、犬にしか見えなかった。
でも、今思えば、言葉を喋るドラゴンがこんなに受け入れられている世界なんだから、こういう生き物も普通にいるってことなのかも?
「ワン!ワワワワン、ワワン!」
え!?
犬が、何かを喋っていた。
パピラターの力が少し抜けるのがわかった。
「ワワワン!ワワンワ、ワァフ!」
そこまで言うと、犬はドヤ顔を作った。
………………え!?
えと…………、え!!!!????
どうしよう!!!!!何を言ってるのかわからない!!!!!
だって、どう見たって犬だし!!!!
どう聞いたって犬だもん!!!!!!
プルクラッタッターが、オロオロと周りを見渡すとパピラターが真剣な顔で、犬に相対しているのが見えた。
「パ、パピラター……?」
「ん?どうしたの?」
パピラターが、犬から目を離さずに返事をする。
「あの……ワンちゃん?何て言ってるの」
「え?」
パピラターが「何言ってるの?」とでも言いたげな顔をする。
「わかるわけないじゃない。あれ、犬だし」
「え〜〜〜〜…………」
その間にも、犬は、ポーズを作り、何かドヤ顔で語っている。
そこで、プルクラッタッターはハッとした。
もしかして、同じ動物みたいなロケンローなら、犬語を理解できるスーパーパワーとか持ってるんじゃない!?
「ねえ、ロケンロー」
「なんだい?」
後ろでふわふわ浮いていたロケンローに声をかける。
「あのワンちゃんは……、何て言ってるのかな……?」
そう尋ねると、ロケンローは眉をひそめて、プルクラッタッターの顔を見た。
「僕、犬じゃないけど……?」
「…………」
じゃあ結局、誰もあの犬の話、わからないってことか〜〜〜〜っ。
「ワン、ワワン」
そう言うと、犬は「ヴ~~~~ッ」と唸り始めた。
屋根を蹴り、飛びかかってくる。
敵ってことで、大丈夫かな!?
魔物は人間の言葉を使うことができません。身体の作りはすっかり動物なのです。




