46 ここからは二人で!
パピラターが少しだけ、涙を浮かべた瞳で笑った。
パピラターは、正直嬉しかった。
こんな、何が起こるかわからない旅。
それでも、まだ一緒に居てもいいんだ。
大変なことに巻き込まれてしまったプルクラッタッターにこんな風に思うなんて、申し訳ないけれど。
二人だけになった大きな町の屋根の上。
「とりあえず降りようか」
といったところで、プルクラッタッターは、自分が魔法少女の姿から元に戻らないことに気付く。
いつも、いつのまにかシュルン、と元に戻っているのに。
「あれ?」
パピラターが声を上げた。
「ロケンローは?」
「え?」
いつも通りその辺に…………。
と思って見回したけれど、小さなドラゴンは何処にも見当たらない。
「…………え?」
そこで思い当たる。
もしかして…………変身が解けないのって、ロケンローが居ないから???
「大変………!どっか置いてきちゃった……!」
「え…………ちょっと…………」
と言いつつ、パピラターがちょっと笑ってしまっている。
「探しに行かなきゃ!!」
「しょうがないな。代理人としてパピラターが命じる」
パピラターの詠唱が始まる。
足を踏み込んだので、そのまま空を飛ぶつもりなのがわかった。
「世界の遍く理。我が声を聞き入れ、我を空へ招き入れよ」
そのままプルクラッタッターも、ステッキに腰掛け、ふわっと浮く。
それを見たパピラターが「ふふっ」と笑った。
どうしてもご機嫌なのを隠すことが出来なかった。
これからの旅が、むしろ楽しみでさえあった。
「すごく上手くなったわね、プルクラッタッター」
「でしょ」
ちょっとしたドヤ顔を見せて、プルクラッタッターが先を飛ぶ。
「ロケンローはあんまり飛ぶの速くないから、まだ町まで辿り着いてないのかもね」
町の中を覗きながら、二人で飛んできた方向を戻って行く。
さっきは必死になって飛んだ場所。
眼下に広がる町は、かなり大きくて、賑わっている。
こうして空を飛んでいても、気付かれもしなければ、気付いたところで騒がれもしない。
ここまで大きな町だと、魔法使いも多いのだろう。
町を抜けて、草原を通る街道を低く飛ぶ。
どこかにドラゴンが転がっていないかと、覗きながらなので、ゆっくりだ。
「ロケンロー!」
「どこにいるのー!?」
ロケンローを見つけるのは、実際、それほど苦ではなかった。
ロケンローは街道の真ん中を、やってきていたからだ。
大変なのは、その姿だった。
目に涙をいっぱいに浮かべ、のたのたと二本足で歩いている。
うわあああ…………。
プルクラッタッターの罪悪感たらハンパない。
ロケンローは、なんでも知っているようなドラゴンの姿をしているけれど、実際は、プルクラッタッターがこの世界に来た時に生まれたばかりの子ドラゴンでしかない。
一人っきりにされるのは初めてで、ちょっと寂しくなってしまっても、仕方がないのだ。
「パ、パピラターに追いついたんだ。よかったよ」
鼻先をツンとさせて、ロケンローが言う。
「ご、ごめんね。慌ててて……置いて行くようなことになっちゃって」
「へへ……」と笑いながら、二人でロケンローに手を差し出した。
ロケンローは、ふわりと浮かぶと、その二つの手にタッチしながら、また強がってツンとした顔をした。
プルクラッタッターは、ロケンローがいないと変身できないように、ロケンローがいないと変身が解けないのです。




