45 魔王軍幹部 ケイオス・ザ・リュー登場!(2)
「あああああああああああんたに言われたくないぃ……」
orz状態のプルクラッタッターの声は、段々と弱々しくなった。
「そんな厨二病みたいなカッコして……何そのケイオスって……」
言い返すが、威勢は良くはない。
「あ〜…………、いや、さ」
ケイタロウは、手持ち無沙汰に頭をワシワシする。
「俺も元気でやってるから、お前も達者でやれよ」
そう言うと、ケイタロウは、くるりと踵を返す。
「お前ら、ちょい、今日は撤収撤収撤収!この展開は無しだわ」
ケイタロウは、わらわらと戻ってきた部下らしき魔王軍達を急かし始める。
「ま、待ってよ!!!」
プルクラッタッターが立ち上がった。
家々の屋根の上に、プルクラッタッターの声がこだまする。
なんで???
なんで行っちゃうの???
やっと再会できたんじゃないの???
「待ってよ!!!ケイタロウ!!!」
ケイタロウの足は止まらない。
「私、聞きたいことが沢山あるんだよ!?ねえ、少し話そうよ!!」
声は届いているはずなのに。
そんなプルクラッタッターの姿を見たパピラターは、険しい表情になる。
あいつ……!プルクラッタッターをあんな風に扱うなんて……!
「一緒に居たいなんて言わないから!!ねえ!!」
泣きそうになる。
泣きたくなんてないのに。
「お兄ちゃん!!!!」
そこで、ケイタロウの足が、ピタっと止まった。
困った顔で、プルクラッタッターの振り返る。
「お、お、お兄ちゃん?」
パピラターが、驚いた声で小さく呟いた。
向かい合うプルクラッタッターとケイタロウを、交互に見やる。
確かに、顔つき、髪質、眉の形……。見比べるほど似ている。
ケイタロウの表情は優しかった。
決して嫌いになって離れたわけではないことが、窺い知れた。
けれど、事故で離れ離れになったわけではなく、ケイタロウは故意に離れていたことも、解ってしまった。
プルクラッタッターは、少しだけ、泣きそうな顔になる。
「お前は、難しいこと考えなくていいんだよ。楽しく生きてくれれば、それでいいから」
ケイタロウはそう言うと、もう振り返らずに行ってしまう。
「お兄ちゃ……」
ケイタロウは、もう振り返る気配がなかった。
どうしてここに来てしまったのかも、家に帰る方法はあるのかも、聞くことができなかった。
けど、なんとなく予感はする。
あの顔。
もし、帰る方法があるなら、ケイタロウのことだ、教えてくれるんじゃないのかと、そう思えた。
「…………」
ケイタロウの周りには、先ほどの魔王軍が取り囲み、ケイタロウを護るようにこちらに睨みを効かせていた。
それ以上、追いかけることは出来なかった。
「なんで……魔王のところになんて居るの……」
「プルクラッタッター……」
パピラターが、控えめにプルクラッタッターに声をかけた。
「ありがとう、大丈夫だよ」
パピラターが差し出した手を、プルクラッタッターがそっと掴む。
「あれ……、お兄さん?」
「あ、うん。実の兄」
何でもないようにあっさりと言う。
プルクラッタッターは少しだけ思ったんだ。これはチャンスなんじゃないかって。
「ねえ、パピラター」
プルクラッタッターは、パピラターに向かって、ニッと笑顔を作った。
「私もさ、魔王のところに行く理由が出来ちゃった」
仲良し兄妹ですが、お互い居なくても元気です。
こうなってももちろん仲良し兄妹なわけで。




