43 魔王の手下
ボン!
ともう一つ爆発が起こる。
「パピラター!」
プルクラッタッターが、パピラターのそばに降り立った。
町の中でも、込み入った裏通りの屋根の上。
煙玉のような物を持ち、二人を取り囲んだのは、まるで騎士のようなマントを羽織った、男達だった。
けれど、黒を基調としたその制服は、あまりこの国の人間とは考えづらいものだった。
マントも、黒一色だ。
そして、身なりはそれなりにいいけれど、柄はあまりよくない。
「あなたたち、何?」
「このマーク、知らない?」
と、袖についた紋章を示す。
そこには、黒薔薇を模した紋章が描かれていた。
「魔王の紋章……」
「そうそ。次はこの町を襲うことにした、魔王軍ってやつだな」
「ふーん……嫌なもの、見ちゃったわね」
パピラターとプルクラッタッターは、戦闘の体勢を取った。
悪巧みをしている魔王の手下を、逃すわけにはいかないのだ。
魔王軍も、軍と言うだけあって、前にいた4人は剣を構え、後ろの4人は杖を構えた。
「代理人としてパピラターが命じる。世界の遍く理。我が声を聞き入れ、炎の輪を降ろせ」
パピラターが先手を打つ。
「…………!」
パピラターとプルクラッタッターの二人を取り囲むように、炎の幕が出現した。
剣士達が後退る。
「お前……まさか、パピラター!?」
これは、仕方のないことだった。
この世界では、魔法を使う時、自分の名が詠唱に入ることが一般的だ。
プルクラッタッターでさえ、変身時に、ロケンローに名前を呼ばれる。
たった一人でとはいえ、魔王を討とうとしている者の名が、知られていないわけがないのだ。
「魔王軍第一部隊、トルファーによる。音の静まり、光の遮断。吹き込むは、水の滝」
魔法使いの一人が唱え、頭上からバケツをひっくり返したような水が降ってくる。
プルクラッタッターがステッキを上に向け、傘のようにすることで、二人は濡れることなく、それをやり過ごした。
パピラターの炎は、消えてしまったけれど。
静まり返り、沈黙が訪れた。
「お前さぁ、うちの国で指名手配、されてるぜ」
「…………」
おかしい、とパピラターは思う。
揶揄うような態度ばかりで、なぜか攻撃を仕掛けてこようとはしない。
……まさか、何かの時間稼ぎ……?
そう思った所で、剣を持った男が、ニヤついた。
「まあ、直ぐに幹部が来るだろうから、お前ももう逃げられねぇなぁ」
「…………幹部?誰、それ?」
嫌な、予感がする。
「お前は知らねぇよなぁ。魔王の右腕、ケイオス様だ。ケイオス・ザ・リュー」
そんな奴、聞いた事もない……。
まさか。
そのケイオスとやらにこのまま引き渡すために、わざわざここで待っていたんじゃないだろうか。
その可能性がゼロではない限り、早くこの状況を打開しなくては。
「プルクラッタッター!急いで片付けよう!」
「……うん!」
次回は新キャラ登場です!魔王軍幹部ケイオス……。さて、イケメン設定でしょうかどうでしょうか……。




