42 バイバイなんて言いたくなくて(2)
街道をゆるゆると浮かびながら進んで、とうとうトレルニの町が見えてきた。
そんな、道しかない場所で。
「ねえ、パピラター」
「どうしたの?」
ゆるゆると後ろを飛ぶプルクラッタッターのお手本になるようにと、杖の上に座るように飛びながら、パピラターは振り返った。
プルクラッタッターがふっと地面に降り立ったので、パピラターもその正面に降り立つ。
「あのね」
そう言うプルクラッタッターの顔は、いつになく真面目だった。
「…………」
少し、言いづらそうなプルクラッタッターの言葉を待つ。
「私、魔王討伐に、付いて行こうと思う」
「…………え」
言われるとは思っていなかった言葉を理解するのに、少しだけ時間がかかった。
「魔王を討伐して、平和になった世界の方が、ケイタロウも探しやすいんじゃないかと思うの」
「ダメだよ」
パピラターが容赦なく、切り捨てる。
プルクラッタッターにとって、それは予想の範疇だった。
ダメだと言われると思っていた。
けれど、現実に言われることは、思っていたよりもショックだ。
「足を引っ張ったりしない」
「ダメ」
「魔法の練習だって、今まで以上にする」
「ダメだって」
「少しくらい話を聞いてくれたって……」
「何度同じ事を言わせるの!?何を言われたってダメなものはダメ!」
お互いに泣きそうな顔になりながら、青い空の下、対峙した。
「私なら助けられる!強力な魔法だって、言ってくれたじゃない!」
「調子に乗らないで。あたしには程遠い。それじゃあ、ここでお別れね」
「代理人としてパピラターが命じる」
パピラターが、突然、詠唱を始めた。
ダメだ!逃げられる……!
「世界の遍く理。我が声を聞き入れ、我を空へ招き入れよ」
「ロケンロー!変身!」
「よし来た!今こそ変身だよ!プルクラッタッター!」
お馴染みのBGMが流れる。
これ、早送りとかできないの!?
いつもよりステップ多めだけれど、いつもと同じ時間を使って、変身をした。
残念ながら、プルクラッタッターの変身には、実は一瞬で変身できているなんていう設定はないのだ。
「いっけえええええええええ」
両手でステッキに掴まり、前へ飛ぶ。
想像以上に速く飛べてる。
速く。
速く。
パピラターを逃がさないように。
ここで逃してしまったら、もう二度と会えないかもしれないんだ。
……見えた。
なんとか、パピラターを視界に収め、飛ばして行く。
「…………っ!」
パピラターが、プルクラッタッターに気付き、スピードを上げた。
眼下に大きな町が見えた。
パピラターは、障害物があればプルクラッタッターが諦めるんじゃないかと、時計塔や建物のすぐ近くを飛んでみせた。
プルクラッタッターは、それに必死についていく。
「待っ……て……!」
その瞬間。
プルクラッタッターがパピラターに追いつく前に、パピラターの前辺りで、
ボンッ!
と爆発が起こった。
煙玉のような白く粉っぽい爆発だ。
「!?」
パピラターが速度を落とし、町の中へ着地した。
プルクラッタッターも、それを追って、パピラターのいる場所へ、降り立った。
さてさて、二人は一緒にいることができるのでしょうか。




