40 空を飛ぶ練習
「うわっとっとっとっと」
翌日、プルクラッタッターは、パピラターに指導されながら新しい飛び方の練習をしていた。
もう一度、馬車の痕跡を追ったけれど、森の中の広場のような場所で、タイヤ痕は消え去っていた。
パピラターが言うには、そこから空飛ぶ魔物で運んで行ってしまったのだろうということだった。
そこから町へ戻るまで、プルクラッタッターがまたハングライダーに腕だけでぶら下がるような危険すぎる格好で飛んだので、パピラターが呆れながら、「飛び方の研究をして」と言ったのが始まりだった。
何より、そんな格好で飛んでいたら、足がよくても手が疲れてしまう。
結局、色々と試した結果、ステッキに横座りで座る方法で収まった。
とはいえ、それは足を浮かせた状態で、細い棒の上に座るということ。
はっきり言ってそんなこと、普通はできないのだ。
鉄棒の上に横座りなんて不可能なように。
そんなわけでプルクラッタッターは、ステッキに座る格好でステッキを浮かせるようにするまでは出来るようになったけれど、そこに座るということが出来ずにいる。
すてん、と転んだのは4回。
鉄棒に必死で掴まる人のように、ぶら下がってしまったのは3回。
「う〜ん」と、パピラターが考え込む顔で、顎に手を当てた。
「もっとこう…………」
言いながら、杖を横にしてみたり、座る真似をしてみたり、身振り手振りで教えてくれる。
「杖じゃなくて、自分が浮くように考えてみて」
「自分が?」
「そう。プルクラッタッターは、杖に頼り過ぎ!自分が浮かないと、このまま跳べても落ちてしまうわ」
「にゃ〜るほど〜〜〜〜」
と言いつつ、プルクラッタッターは考え込んでしまう。
そんなイメージを持つのは難しい。
目を閉じて考える。
そうだ。
もしかして、アレならどうだろう。
◯◯◯◯◯◯!
小さい子供がアニメで見ているアレだ。
アレなら、マントで自分が飛んでいるし、飛べるんじゃないだろうか。
よし、あのイメージでいこう。
カッと目を開いたプルクラッタッターは、ロケンローを振り返って言った。
「ねえ、ロケンロー!ちょっと『プルクラッタッター、新しい顔よ!』って言ってみてくれない?」
「………………え?」
え?
と発声したのは、ロケンローばかりではない。パピラターもだ。
それでも、何かの呪文なのかと思い、頭にハテナを浮かべたまま、ロケンローは言ってくれた。
「プルクラッタッター!新しい顔よ!」
「たったらった、たったったーん!たたた、たったかたー!たったかたったったー!」
歌いながらポーズを取る。
その結果……、プルクラッタッターは飛べるようにはならなかった。
何故なら、◯◯◯◯◯◯は、ステッキなんて持って飛んでいないから、結局うまくイメージできなかったのだ。
最終的に、プルクラッタッターの先生は、パピラターとロケンローになった。
パピラターは、杖を持ったまま自分で浮けるし、ロケンローも翼を羽ばたかせることもせず、いつだってふわふわ浮くことが出来るからだ。
「難しい〜!」
「ほら、座った格好で飛ぶから、よく見て」
「ぐぬぬぬぬ」
「力入れないで」
「う〜〜〜〜〜ん」
「まあ、あたし達を見ていれば、自分も飛べるんじゃないかなって思えるようになるわ」
「あっは」
プルクラッタッターが笑う。
「そうだね」
◯◯◯◯◯◯な飛び方はプルクラッタッター向きではなかったみたいです。




