37 今、必殺の!(1)
「な、なんだ!?」
驚いてる驚いてる。
馬車に乗っている魔族も異変を感じたらしく、馬車はゆっくりと止まった。
パピラターがビシッ!と指を差す。
「問います。あなた方は、魔族ですね!?」
「だ、だからどうしたってんだ」
「その馬車の中身は、町から奪ったものでは?」
パピラターが、冷めた瞳で、二人を見た。
ただ、見たのだ。
何の感情も持ち合わせていなさそうな瞳で。
「はっはーん?さては、町が雇った冒険者だな?残念だあったなぁ?手遅れなんだよ」
魔族の一人が、ニヤついた。
「好戦的ですね」
パピラターが、杖を構える。
「代理人としてパピラターが命じる」
パピラターの詠唱が始まる。
けれど、攻撃されるのが分かっていて、眺めているだけの魔族ではない。
腰に差していた斧を振り上げ、二人が襲いかかってくる。
そこへプルクラッタッターが割って入り、ステッキを構えた。
ガン……!
斧は、ステッキが出した紋章に阻まれる。
「世界の遍く理。我が声を聞き入れ、轟かせ雷鳴」
ドン……!
魔族達のそばにある木に、雷が落ちた。
その騒ぎに、馬車に乗っていた一人も、顔を出す。
魔族達は怯んだようだった。
「あたしだって……!」
パピラターが叫んだ。
「あたしだって、殺したいわけじゃない!!」
あ…………。
プルクラッタッターは、パピラターのその言葉を聞いた。
苦しそうな声。
けど、人を助ける為に、自分の手を汚そうとしてる。
そうしないと、町の人の命が危ないから。
パピラターはきっと、そんな中で色々なものと戦いながら、今までやって来たんだ。
「代理人としてパピラターが命じる」
また、パピラターの詠唱が始まった。
これでいいの?
私は、これでいいの?
あんな声、もう出して欲しくない。
私は……?
その時だった。
「プルクラッタッター!君なら出来るよ!」
ロケンローが吼えた。
「え……?」
ガン!
敵の斧を受け流しながら、プルクラッタッターが疑問符を浮かべる。
「叫べ!プルクラッタッター!」
小さなドラゴンに力が入る。
「ナイト・オブ・ブライアー!」
「な、ナイト・オブ・ブライアー!」
ロケンローに倣い、言葉を放つと、ステッキに光が集約される。
そして、同時に、初めて聞くBGMが流れ出した。
トゥッタートゥッタートゥッタートゥッター♪タララララララララ♪
ええええええええええ!?
警戒した魔族が、後ろへ跳んだ。
BGMが止まる。
「アロー!」
ロケンローが叫ぶのを聞き、プルクラッタッターが叫ぶ。
「アロー!」
すると、ステッキに集約された光の束が輝き、細い矢のように飛んでいった。
音もなく、魔族に当たると、魔族は音もなく倒れた。
「え…………?」
当たったと同時に、跳ね返るように別の魔族へ飛んでいく。
そして、また音もなく魔族が倒れる。
起き上がる気配は、ない。
「え………………」
なんと、プルクラッタッターには必殺技があるのです。魔法少女だからね!!




