36 魔族を追いかけて(2)
「はぁ…………はぁ…………」
微かに人の声が聞こえたところで、二人と一匹が地面に降りた。
真っ赤な顔で息が上がっているパピラターを見て、プルクラッタッターは、「やっぱり私まで運ぶのは大変だったんだ……」なんていう予測をたてた。
実際のところ、密着にパピラターの心臓が耐えきれなかった結果なのだけれど。
なにこれ…………。
めちゃくちゃ……はずかし…………。
パピラターは、袖で顔を隠すようにする。
二人と一匹で、木の陰に座り込む。
「ふぅ…………」
なんとか息を整えて、木の向こう側を窺った。
大きな荷馬車が、森の中をゆっくりと進んでいた。
荷馬車はひとつだけ。
「あの馬車、かな」
「こんな森の中の獣道を北へ向かって走る馬車。違和感ありすぎ。確率はかなり高いわ」
道はそれほど広くない。
馬車は、木の根や草に乗り上げては、ガタガタと進んでいた。
あの町の食料を根こそぎ奪ってこの量という事もないだろう。きっと、距離を開けて他にも馬車が居るはずだ。
聞こえていた声は、馬車の脇を歩いている二人組の声のようだ。
小さな声で、会話の内容まではわからないけれど、どうやら談笑している様子だ。
「じゃあ、変身して」
「え……」
パピラターとプルクラッタッターは顔を見合わせた。
そうなのだ。
プルクラッタッターは、変身しておかなければ戦う術がない。
「人前で変身するよりいいでしょ」
苦笑するパピラターの言葉に、プルクラッタッターは乾いた笑いで返すしかない。
「あたしが援護するから」
援護。
つまりパピラターは、あまりにも目立ちすぎる変身中の状態を、敵から守ると言っているのだ。
そっか。
プルクラッタッターは思う。
こうして、隠れたまま変身できるならよかったけど……、音楽撒き散らしながら変身するんだもんなぁ……。
ここまで来たなら、さっさと覚悟を決めるしかない。
プルクラッタッターは立ち上がる。
変身するときは、ある程度の広さも必要だ。
パピラターが、杖を握り直す。
ロケンローを見ると、もうすでにプルクラッタッターの方を見て、四つ足で立ち上がっている。
スタンバイOKだ!
「そう!今こそ変身だよ!プルクラッタッター!」
「うん!」
元気よく返事をすると、BGMが流れ出す。
魔法少女っぽくなってきたね、プルクラッタッター!
チャララ〜〜〜ン♪タラララ〜〜〜〜♪
「……な、なんだ!?」
音楽に反応した魔族達が、後ろを振り返る。
「ど、何処から音が……!?」
「あ、あそこ!何か光ってるよ!」
そうなのだ。
変身中、プルクラッタッターは微かに光っている。
こういう薄暗い森の中での変身はとても目立つのだ。
けれど、驚いている間に、プルクラッタッターの変身は進んでいく。
プルクラッタッターの腰の後ろに、尻尾のような長いリボンが流れた。
最後に、手の中にステッキを出現させれば、変身は完了だ!
チャン!チャ〜ラララ〜〜〜〜〜〜♪
そして、滞りなく、変身が完了した。
木の陰から飛び出し、ポーズを作る。
プルクラッタッターの後ろには、星とドラゴンの翼の紋章が浮かび上がった。
「煌めく天よりの翼、魔法少女プルクラッタッター!」
パピラターも飛び出して、プルクラッタッターの隣で、華麗にポーズを決めた。
「闇に生まれし雷鳴の使者、魔女パピラター!」
しゃきーん!
華麗に二人でポーズ!




