33 北へ(2)
この国の町は、所々に点在している。
町と町の間は、遠く離れていることが通例だ。
町と町はそれぞれ街道で繋がっており、まず迷子になることはない。
最近魔物の出没が増えてきている、とはいえ、商人や冒険者など、活用する人間は多い。
それゆえ、所々、山小屋のような食堂が建っていることもあれば、小さな椅子だけがあるガゼボのようなものだけが建っている場所もある。
旅の途中、二人と一匹も食事をしなくてはならず、午後、屋根とベンチのみで構成されたガゼボで休憩となった。
パピラターが、鞄から、町で買っておいたちょっとしたランチを二人分取り出す。
大きなサンドイッチに、フライドポテト、小さなドーナツ、お茶がセットになった、所謂ファーストフードのセットのようなものが、紙袋に入っている。
自分で店舗を持たなくても収入が得られる冒険者ギルドが流行りを見せる昨今、こういった持ち歩きやすいランチセットタイプの食事が同時に流行っていた。
特にギルドの周りでは、そのような店の競争は激化していた。
「美味しそう〜〜〜〜〜〜」
プルクラッタッターは、元いた世界でも、お気に入りのファーストフード店があった。
ハンバーガーに、ポテト、オニオンフライ、ドリンク。
会社員だった頃は、週に一度はその店で昼食をとった。
カフェやコンビニを巡り、だいたい週に一度ほど、その店に辿り着くのだ。
パピラターは、プルクラッタッターのその顔を見て、満足げな顔をした。
「美味しいから、食べてみて」
「いただきま〜〜〜〜〜〜〜す」
プルクラッタッターが、サンドイッチに手をかけた。
その瞬間、
ぐぅ〜〜〜〜〜きゅるるるるるるるるる。
と、凄まじい音がした。
二人が振り向くと、小さな黒いドラゴンが泣きそうな顔で二人を見ている。
「…………」
パピラターが少し驚いた顔でロケンローを見る。
「大丈夫、少しあげるから」
言いながら、パピラターがロケンロー用のドリンクを差し出す。
「うん、私もあげるよ」
「うん」
ロケンローの潤んだ目はくりくりとしている。
「あなた、あまり食べないじゃない。少しあげるだけで十分なら、ワンセットは買わないよ」
そうなのだ。
ロケンローは、食事を同じようにとるけれど、身体が小さいからか、一食はあまり多くない。
「ほぅらほら」
プルクラッタッターがポテトを1本目の前で振ると、ロケンローが嬉しそうに、
「いただきまーす」
と寄ってきた。
こういうところはまるで犬猫だ。
「ほら、ロケンロー。こっちも」
パピラターが面白そうにサンドイッチの端っこを渡すと、小さなドラゴンは、その不器用そうな前足で器用にもサンドイッチを掴む。
その姿が微笑ましく、パピラターが「ふふっ」と笑った。
プルクラッタッターがその声に反応して、顔を上げると、パピラターと目が合った。
お互いなんだか面白くなって、「へへっ」と笑い合う。
呑気な時間が流れる。
小さなドラゴンが、ズルズルとジュースをすすった。
今日の夕方には、次の町に着く予定だ。
ほのぼのお食事シーン。
ほのぼの小説なので、基本的にほのぼのしています。




