32 北へ(1)
そんなわけで、プルクラッタッターは、北へ向かう道すがら、空を飛ぶ練習をすることになった。
空は呑気な青空で、それほど暑くも寒くもない。
歩くには丁度いい長くゆったりとした道だった。
こんな道を二人で歩く。
この状況は悪くない。
「すぐ隣の町は、そんなに遠くないから」
にこにこと言うパピラターが、
「代理人としてパピラターが命じる」
と、突然詠唱を始めた。
「世界の遍く理。我が声を聞き入れ、我を空へ招き入れよ」
言いながら、ふわっと舞い上がった。
杖と共にくるくると回る。
「プルクラッタッター!ほら、こっち!」
「むーん」
プルクラッタッターは、口をへの字に曲げて、ステッキを握りしめた。
思うだけでいいなら、飛ぶ感じのことを考えれば飛べるはず……!
ジャンプ!
ぴょこん!
プルクラッタッターは跳ねてみたけれど、そのままジャンプをしただけで、地面に着地してしまった。
上から声が降ってくる。
「空を飛んでる時の自分を、思い出して」
そうか。
地面から足を離せばいいわけじゃなくて。
空に飛んでいかないといけないんだ。
「うん、やってみる」
「頑張って、プルクラッタッター!」
ロケンローもふわふわと浮いた状態で応援している。
ステッキを握りしめる。
考えよう。
あの時は、ステッキに掴まったまま飛んでいったんだっけ。
もしかしたら、飛んでいるのは私じゃなくてステッキの方なのかも。
じゃあ例えば、ハンググライダーみたいな感じで掴まってみるのはどうかな。
プルクラッタッターは、ステッキを両手で横に持ち、そのまま上に持ち上げてみた。
うん、飛べそう。
だからプルクラッタッターは助走をつけて、何かに乗るみたいにふっ……と地面から足を離した。
すると、空気に押し上げられるようにプルクラッタッターがふわふわと浮かび上がる。
「飛ん……だ!」
「やあったね!」
ロケンローがプルクラッタッターの周りをくるくると回った。
「飛べたよ!」
パピラターの方を向くと、苦笑するように笑った。
パピラターが見たプルクラッタッターは、なんだか必死にステッキに掴まっていた。
50センチほどしかないステッキに掴まり、ゆるゆると飛ぶその姿は、あまりそのまま飛んでいけそうな姿には見えない。
「飛び方はもう少し練習が必要ね」
パピラターが、くすくすと笑いながらプルクラッタッターを見た。
杖を使って飛ぶなら、もっといい形があるだろう。
例えば、箒を使って飛ぶ人達みたいに、上に乗るとか。
プルクラッタッターの魔法は、万能なように見えて、結構不器用なんだろうか。
「ひ〜〜〜〜〜〜ん」
なんて言いながら必死で飛ぶプルクラッタッターの姿を見て、パピラターはまた笑った。
空が飛べるようになったプルクラッタッター!これで優雅に魔王のところまで……行けるようになったらいいね!




