31 魔法の練習(3)
「それなら、」
パピラターが杖を構えた。
「まず、素手で打ってみて」
にこやかなパピラターの顔を見て、プルクラッタッターがやっとパピラターに向かい合う。
「うん」
プルクラッタッターが小走りに走り、パピラターに向かって、ぽん、とぐーにした手を突き出した。
「!?」
プルクラッタッターの手は、パピラターのところへは届かない。
硬くはないけれど、確かに手はどこかにぶつかっていた。
「すごい!」
プルクラッタッターは、両手で殴るように手を突っ込んでみたけれど、どちらの手もパピラターには届かない。
「ほらね」
パピラターが急に防御をやめたので、プルクラッタッターが前へと倒れ込む。
「ふおっ」
そのプルクラッタッターを、パピラターが面白そうに抱き止めた。
パピラターの杖が、地面にとさっと落っこちる。
「大丈夫でしょ」
プルクラッタッターが支えられるように起き上がると、にっと笑うパピラターの顔がすぐそばにあった。
「あ、うん」
少しドギマギしてしまう。
思った以上に、近すぎる。
「じゃあ、本番」
プルクラッタッターは、もうパピラターを信じるしかなかった。
パピラターは、再度同じ詠唱をし、杖を構え直す。
「えええええい!」
気合の入った掛け声とは程遠いへろへろした足取りで、先ほどぶつかったあたりめがけて、ステッキを振り下ろす。
ボン!
と大きな音がした。
ギルドのお姉さんを吹っ飛ばした時の様な、空気砲のような音だ。
「くっ……」
来るとわかっていても、なかなかの衝撃らしい。
パピラターが、足に力を入れたけれど、
「きゃっ」
ふおっと浮かび上がったので、慌ててプルクラッタッターが手を伸ばす。
「パピラター!!」
ステッキに引き上げられるように飛び上がると、プルクラッタッターがパピラターの手を掴んだ。
ぶお……っとパピラターの脚が一度舞い上がったけれど、プルクラッタッターに手を引かれ、地面に降りる。
二人で、そのまま地面に座り込むような形になった。
「すごい強さ。魔力量だけなら一流だね」
プルクラッタッターは、「あはは」と返すしかない。
プルクラッタッターは、こういう強さがチートってやつなのかな、なんて思う。
実際、魔法を動画という形式で繰り返し見ることなんて、この世界ではないのだから、ある意味チートと言ってもいいのかもしれないけどね!
パピラターは立ち上がり、マントを軽くふわりとさせて整えた。
マントは、動きやすいよう、出来るだけ軽い素材で作られていた。
「攻撃も防御も、少し練習すれば使えそうね。それ以外は?」
パピラターがロケンローの方を向くと、ロケンローがまたドヤ顔を作る。
「思ったことは大体出来るけど、よく使いそうなのは空を飛ぶ事かな」
「なるほどね」
パピラターが、腰に手を当てた。
「いいじゃない。空が飛べたら、別の町へ行く事も逃げる事も楽になるわ」
パピラターの防御魔法は、金属のように硬くはないようです。




