30 魔法の練習(2)
「そう。そのドラゴンスターワンドをさ、攻撃気分で使えばぼーんってなるし、防御気分で使えばガチってなるんだ」
「…………」
ドラゴンの説明は曖昧だけれど、プルクラッタッターは体験しているので、その説明はなんとなく伝わった。
つまり、攻撃する気持ちで振るえば、お姉さんが飛んでいってしまったように、柔らかなピコピコハンマーのようになるし、防御する気持ちで構えれば、盾のように攻撃を弾くものになるということだ。
「それは、今までやったことがあるやつね。じゃあ、まずはそれをやってみて、自由に扱えるようにしましょう」
「うん!」
プルクラッタッターがどーんと構える。
パピラターも杖を握り、プルクラッタッターの方へ構えた。
「じゃあ、行くわよ」
パピラターが、杖ごと突っ込んでいくと、プルクラッタッターが構えたステッキの前に、紋章が浮かび上がり、パピラターが、紋章にぶつかり、後ろへ尻もちをついた。
「うわっ、パピラター大丈夫!?」
「……もちろん」
一瞬、呆然としたパピラターだったけれど、直ぐに意識を取り戻す。
「ふふっ」と笑いながら、立ち上がる。
「透明だから、少しびっくりするわね」
そして、また、再度杖を構えた。
「次は、魔法で攻撃するわ。炎とか水とか雷とか試してみたいわ」
「えっ」
プルクラッタッターが、ステッキを握りしめる。
それって……跳ね返せなかったら、私が死ぬやつじゃない!!!???
「こっわ……」
「大丈夫よ!」
無責任にも聞こえるその言葉だけを言うと、パピラターは詠唱を始めた。
「代理人としてパピラターが命じる。世界の遍く理。我が声を聞き入れ、炎の矢を放て」
パピラターの杖から、矢と言うには少し短めの、細長い炎が放出される。
「きゃああああああああああああ」
泣きそうになりながらも、プルクラッタッターがステッキを握りしめると、紋章が現れ、炎の矢を四散させた。
「…………び、びびびびっくりしたああああああ」
パピラターがふん、と鼻を鳴らす。
「この程度じゃ、どうってことないみたいね」
それから、パピラターは矢継ぎ早に魔法を繰り出してきた。
氷、水、雷。
「きゃあああああああああああ」
魔法の盾が、全てを四散させる。
「まーったく。毎度そんな調子だと、戦えないわよ。目は開けてなさい、目は!」
「はわわわわわわ」
プルクラッタッターは、すっかりテンパっていた。
「しょうがないわね」
パピラターが杖をとん、と地面に着ける。
「じゃあ次は攻撃ね」
その瞬間、どきん、とプルクラッタッターの心臓が鼓動を打った。
パピラターを?
杖で……攻撃するの?
「そん、なの……」
パピラターを殴るなんて。
もしくは。
プルクラッタッターの脳裏に、お姉さんが飛んでいく姿が浮かぶ。
パピラターを吹っ飛ばすなんて。
パピラターは、お構いなしに、詠唱を始めた。
「代理人としてパピラターが命じる。世界の遍く理。我が声を聞き入れ、全ての仇なすものから我を守れ」
その気の抜けたサイダーのような顔をしたプルクラッタッターの顔を見て、パピラターは息を吐いた。
「大丈夫よ。あたしなら」
「でも」
魔法少女の横にいる生き物は、けっこう説明下手だったりもするよね!




