29 魔法の練習(1)
早朝。
二人と一匹は、町から離れた丘の上に居た。
「すごい……足が疲れない……」
魔法がかかっているという靴を履いたプルクラッタッターが、感心しながら言う。
「ここなら、誰にも見られることなく、魔法の練習ができるよ」
パピラターは、いつになくやる気で、冷たい空気の中で輝く杖を地面に突き立てる。
「じゃあ、これから、プルクラッタッターの魔法を見ましょう。いつまでもあの調子だと、そのうち本当に死んでしまうわ」
そう言うパピラターの言葉に、プルクラッタッターは苦笑するしかない。
「魔法の使い方、は、まだ思い出せないんだよね?」
「うん」
そう言うプルクラッタッターの隣で、ロケンローがどややんとしたドヤ顔を披露した。
どうやら自分が魔法を知っているというアピールらしい。
「じゃあ、まず、変身してくれる?」
「やっぱりか〜」
うんざりするプルクラッタッターの隣で、ロケンローが待ってましたとばかりの、四つ足の構えを取る。
「そうだよ!今こそ変身だよ!プルクラッタッター!」
小さな黒いドラゴンが叫ぶと、辺りに例のBGMが流れ出す。
この音結構大きいし恥ずかしんですけど!?
仁王立ちで構えるパピラターが、変身シーンをじっと見ている。
別に服脱ぐような演出じゃないから何も見えないけど、やっぱりこれはちょっと恥ずかしいんですけど〜〜〜〜〜〜!!
チャン!チャ〜ラララ〜〜〜〜〜〜♪
のメロディ。
そして、星とドラゴンの翼の紋章を背に、キュルン♡と音がしそうなポーズをつけた。
「煌めく天よりの翼、魔法少女プルクラッタッター!」
ロケンローが小さな手でパチパチパチパチと拍手をしてくれる。
パピラターは、手を顎にあて、「ふ〜む」と観察する様に眺めると、
「顔がすごく真っ赤だね」
と言ってのけた。
「そ、それはあんまり言われたくなかったな」
パピラターはロケンローを観察しながら言う。
「プルクラッタッターの魔法の詳細、あなたは知ってるの?」
ご機嫌な顔を見せていたロケンローは、
「簡単なのなら」
ということだ。
「そのドラゴンスターワンドをさ、」
「…………」
プルクラッタッターは、手に持っているステッキをじっと眺めると、
「えっ!?」
とロケンローを振り返る。
「え!?」
それにびっくりしたロケンローが、驚いてプルクラッタッターの顔をまじまじと見た。
「えっと……なんて?」
「ドラゴンスターワンド」
プルクラッタッターが、手に持っている、星を模したかわいいステッキを眺めた。
「ドラゴンスターワンド……名前あったんだ……」
魔法少女のステッキにしてはなかなかに小学生男子のノートに書いてありそうな名前だけれど、まあ、一緒にいる動物がドラゴンだからなぁ。
パピラターは、魔法少女の変身シーンも魔法少女の格好もけっこう気に入っています。




