28 冒険者になろう!(4)
どやどやと大勢の人の声がする。
二人(と、一匹)は、宿に戻って来ていた。
こんな日だから、と宿屋の食堂で食事にすることにしたのだ。
酒場特有の大声、注文を取る声、食器の音。
「じゃあ、私、あのお酒で!」
周りの席で、小さな樽のようなジョッキを掲げているのを指して言った。
なかなかのお酒好きなプルクラッタッターである。
その言葉を聞いて、パピラターは思う。
もしかして、そのケイタロウとかいう奴に飲ませられて、酒依存にでもなっちゃってるんじゃない?
まだこんなに若いのに、何もわからないまま飲んでるんだわ。
ほんと、放っておけない子ね!
「ダメよ!あたしたちはオレンジジュース!」
「え〜〜〜〜〜〜」
プルクラッタッターの眉が、思いっきりハの字に曲げられる。
それでもパピラターの気は変わらず、二人と一匹、全員オレンジジュースだ。
ロケンローは、オレンジジュースのコップを両手で抱えなければいけないサイズだ。
山盛りの食事の前で、オレンジジュースを掲げた。
「かんぱ〜〜〜〜〜い」
ふたと一匹でカードを見せ合う。
ホログラムで加工でもされているのかと思うようなランダムに光るそのカードの表には、名前と、水仙のような花を模した模様が描かれている。
裏を返すと、ジャンル毎の能力が、5段階評価で書かれていた。
パピラターが、
学力:⭐︎⭐︎⭐︎
知識:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
戦闘:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
プルクラッタッターが、
学力:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
知識:⭐︎⭐︎
戦闘:⭐︎⭐︎
ロケンローは、
学力:⭐︎⭐︎
知識:⭐︎⭐︎
戦闘:⭐︎
と表示されている。
プルクラッタッターは、ちょっと思う。
“冒険者ランク”のようなものはないんだ……。
プルクラッタッターが知る異世界転移ものなら、大抵は最下位ランクから出発してチートスキルで成り上がって行くのだ。
けれど、この世界の冒険者ギルドは、プルクラッタッターが知る冒険者ギルドとは少し様相が違っていた。
しかしながら、プルクラッタッターは、その結果に満足していた。
異世界に来た割には、けっこういい評価をもらってる。
学生じゃなくなって何年も経つけれど、学生がやるような試験問題ならそこそこできたし。意外と私、いけるんじゃない?
「このカード、発行した町ごとに模様が違うらしいわ」
「そうなんだ。綺麗な模様だね」
「そうね。この町を象徴する花の模様みたい」
「僕も今日から冒険者の一員だよ」
ロケンローが、ローストチキンを頬張りながら、ドヤ顔を作る。
プルクラッタッターがじゃがバターをつつく正面で、パピラターは、豚串を頬張る。
「冒険者ねぇ」
パピラターが、冒険者カードを眺めた。
「まあこれで、足りない路銀を稼ぎながら旅を続けることができそうだわ」
パピラターは、満更でもなさげだ。
「じゃあ……、プルクラッタッターには、明日から魔法の練習をしてもらうわ。毎度あの調子じゃ、そのうち死ぬもの」
「…………」
プルクラッタッターが、視線の定まらない目で、パピラターの方を見た。
プルクラッタッターが、震える声で言う。
「……薬草取りなら、今でもできるよ?」
その言葉を、パピラターは斬り捨てる。
「何言ってんのよ。魔物が大勢襲ってくるような状況で、子供のお小遣い稼ぎじゃないんだよ」
そう。
プルクラッタッターには、さっさと成長してもらわないと、パピラターは困るのだ。
一人になった時でも、戦えるようになっておいてもらわないと。
安心して、離れられないじゃない。
パピラターの方が学力は低め。プルクラッタッターはこの世界の知識がないため、知識が低めです。
戦闘は、二人とも相手を捕獲するのが苦手な結果ですね。




