27 冒険者になろう!(3)
魔法少女のステッキの目の前には、すっかりお馴染みになった紋章が出現していた。
そして、その更に外側に、柔らかい風船のような見えない膜があるようだった。
その見えない柔らかなピコピコハンマーのような何かで、お姉さんは空の彼方へ吹っ飛んで行ったのだった。
パピラターとプルクラッタッターは、同じ顔をした。
驚きすぎて言葉を失った顔だ。
二人の目の前で、何かあった時の要員らしき魔法使い達が、箒に乗って助けに行くのが見えた。
「た、大変……!」
先に声を上げたのは、パピラターだった。
「あたし達も行くわよ!!」
パピラターが手を出したので、プルクラッタッターがその手を掴んだ。
「代理人としてパピラターが命じる」
パピラターが、足を踏み込む。
「世界の遍く理。我が声を聞き入れ、我らを空へ招き入れよ」
パピラターが飛び上がった瞬間、二人の身体が風に持っていかれるように浮かび上がる。
「うわぁっ」
プルクラッタッターが叫んだ。
ターンするように二人がくるりと回る。
パピラターは、空を飛べはするものの、二人で飛んだ事などないのだ。
安定するまでに数秒を費やしながら、お姉さんのところへ飛んで行く。
「ご、ごめんなさい」
地面に降りるやいなやプルクラッタッターが、謝ると、負傷ひとつないお姉さんが、「へへっ」と笑った。
「見たことのない流派の魔法だったので、対応が遅れてしまいました」
そう、このお姉さんは、冒険者ギルドの中でも長年この業務に携わっているベテランなので、魔法の流派は大抵見ている。
魔法少女に変身するプルクラッタッターの魔法は、見たことがないため、対応しきれなかったのだ。
「以上になります。ギルドに戻りましょう」
そこからもお姉さんに案内され、また依頼仲介用の部屋に入ることになった。
部屋の中に、二人。(と、一匹。)
「お疲れ様」
パピラターが少しだけ静かに言ったので、すぐ横にいるプルクラッタッターが、嬉しそうに笑った。
「お疲れ様、パピラター」
パピラターは、その顔を見られまいと、窓の外を眺めた。
外はすっかり夜の気配だ。
今頃、一番星が煌めいているに違いない。
しばらく待つと、お姉さんが、うやうやしくトレイを持ち、部屋に戻ってきた。
戦闘で少し乱れていた髪が、綺麗にまとまっている。
正面に座ったお姉さんが、そのトレイをテーブルに置くと、中に、カードが3枚載っているのが見えた。
プルクラッタッターが、ワクワクする。
あれが……冒険者の証……!!
「お疲れ様でした」
にこやかに微笑むお姉さんから、それぞれが1枚ずつ受け取る。
カードの大きさこそ、プルクラッタッターが元いた世界で使われるものより少し細長いくらいだったけれど、カードは何かの金属で作られているらしく、とても硬い。
一箇所に穴が空いており、そこから紐やチェーンを通して腰にぶら下げるのが一般的なようだった。
「パピラター、腰にぶら下げる?」
カードを顔の前で弄びながら、プルクラッタッターが言う。
「もっちろん」
パピラターのカードが、プルクラッタッターのカードとハイタッチをする様に、カチン、と音を立てた。
まあ、ちょっとした二人の世界ってことで。




