25 冒険者になろう!(1)
最初の方はよかった。
簡単な文章読解、簡単な算数。
けれど、ページが進むごとに、問題は難しくなる。
中学受験でありそうな捻った問題もあれば、学生時代にこんな感じのことやったような〜……という曖昧なものも。
翻訳されているにも関わらず、見たこともない言葉や記号もあり、さっぱり何も書けないページも多かった。
「そこまで」
声がかかったけれど、これで終わりではないらしい。
休憩を挟んで、次は知識問題だ。
地理、歴史、植物、人体……。
植物や人体など、元いた世界と変わらないものは少し書けたけれど、地理や歴史は流石にさっぱりだった。
「ふぅ……」
プルクラッタッターが机に突っ伏すると、パピラターが息をつきながら近付いてきた。
「お疲れ様」
「お疲れ様、パピラター」
「次は、戦闘能力。外で試験だね」
「…………こんなに疲れてるのに、戦闘……」
プルクラッタッターははた、と気付く。
「もしかして……人前であの格好になるの?」
すると、ロケンローが得意な顔になる。
プルクラッタッターは、その顔を見て、理解した。
プルクラッタッターは段々と、ロケンローの表情がわかるようになってきていた。
戦闘試験は、あっという間にやってきた。
建物の裏手には、ちょっとしたグラウンドがあった。
夕陽が差し、ほのかなオレンジ色に染まっていた。
「最後に戦闘能力を測らせていただきます。目標は対象の捕獲。殺すのはいけません」
相変わらず、ひっつめ髪のお姉さんが、にこやかにグラウンドの真ん中に立つ。
「相手は私がしますので、一人ずついきましょうか」
まさかのお姉さんと戦うらしい。
一人目は、ロケンロー、だったのだけど……。
あっという間にころん、と転がされ、終わってしまった。
「くっそー」
とても惜しかったように悔しがる。
二人目はパピラター。
ちゃきっと杖を構える。
「代理人としてパピラターが命じる」
パピラターが詠唱を始めた。
「世界の遍く理。我が声を聞き入れ、大地を抉れ」
パピラターが、唱えると、お姉さんの足下に大きな穴が出現した。
「……!」
それはほんの数センチの深さの穴だったけれど、お姉さんは足を取られ、バランスを崩した。
流石に、お姉さんも弱いわけではないらしい。
すぐに体勢を立て直すと、ペンを握り直す。
握られたペンから、刃が飛び出した。
……この人……!あれが武器なんだ……!
「代理人としてパピラターが命じる。世界の遍く理。我が声を聞き入れ、天より雹を降らせ」
パピラターは、その手に向かって、氷の粒を降らせる。
氷の粒を避けた瞬間、お姉さんが一足飛びに飛びかかって来た。
カーン、とパピラターがペン型のナイフを杖で弾いた。
「そこまで」
お姉さんが言うと、パピラターが詠唱を中断した。
二人とも、警戒を解く。
お姉さんが、パピラターに向かった。
「パピラターさんは、腕がいいですね。詠唱に迷いがないですし、反応も速い」
「……ありがとうございます」
返事をしたパピラターは、褒められたにも関わらず、なぜだかどこか不服そうだった。
ひっつめ髪のお姉さんは、元殺し屋。このギルドで働く様になってそろそろ10年になります。




