21 まずは人探し(2)
あっという間に、似顔絵は出来上がった。
「これ…………」
呟いたプルクラッタッターの手元を、パピラターが覗き込む。
「…………?」
じっと見つめたパピラターは、
「これ人間?」
と、怪訝な顔をした。
プルクラッタッターも、「ハハ……」と笑うしかない。
ロケンローも、紙を覗き込み、浮かび上がって横から見てみたり、逆さまにみてみたり色々試している。
紙には、確かにプルクラッタッターがよく知るケイタロウの似顔絵が描かれていた。
ただし、二頭身で。
デフォルメされたケイタロウは、偉そうな顔で親指を立てている。
所々には吹き出しで、「33歳」だの「声がでかい」だの説明が書かれている。
肝心の顔の部分が、まるでゆるキャラなので、人探しの似顔絵にしては、役に立たなそうではあるけれど。
パピラターが、その紙をじっと見て言う。
「まあ、名前と特徴は書いてあるし、寝て起きたら、これで探してみましょう」
「うん。ありがとう」
プルクラッタッターは、ふにゃっと笑った。
順番にシャワーを浴び、それぞれベッドに入る。
掛け布団の端を握りしめたまま、プルクラッタッターは、ベッドに座ってぼんやりとしていた。
外は、すっかり朝の気配だ。
こうして、シャワーを浴びるだとか、布団に入るだとか、日常の事をやってみると、これが現実だという実感が湧いてくる。
今日1日は、色々と想像を絶することが有りすぎた。
ゲームの中なんじゃないかって思いがよぎる事もあった。
ほら、あるじゃない?
VRゲームだとかに入っちゃう小説とか。
それとも、私は例えば死にかけてて、長い長ーい夢を見ているとか。
けど、それにしては現実味があった。
シャワーから降り注ぐお湯の感触も、空腹感も、食事が喉を通る感触も。
疲労感も。
眠気も。
足元に、猫や犬みたいにくるりと丸くなって眠るドラゴンの重みも。
全てが、これが現実なんだと私に教えてくれた。
部屋の向こう側にパピラターが後ろを向いて寝ているのが見える。
プルクラッタッターは、ベッドに起き上がったまま、じっとその部屋の中を見渡した。
自分の状況を把握しようとした。
その現状は、あまりにも自分が居た場所とは違うものだった。
パピラターは、ベッドに横になり、後ろの気配を窺っていた。
……どういう状況かわからないけれど、プルクラッタッターはやはり落ち着かないみたいだ。
やらないといけないことが、人探しだなんて。
相手がなんだか胡散臭くて気に食わないけど、プルクラッタッターはもしかしたら迷子なのかもしれない。
どこまで手伝えるかわからないけれど。
放ってはおけないわね。
ケイタロウは、顔は悪くはないはずですが、残念ながらイケメンではないです。主に性格のせいで。




