17 初めての戦闘(1)
分厚い扉の向こうで、バタバタと音がする。
やはり、気付かれてしまったのだろうか。
「来るわ!」
パピラターが杖を持ち、構える。
そうだ……私も戦わないと。
なんとか、パピラターの横に立ち、ステッキを構える。
その足元に、ロケンローが四つ足で構えた。
実際のところ、ロケンローには戦う術はないのだけれど、形だけは仲間の一員だ。
バン!
と、大きな音を立てて扉が開く。
外から、「どうしたどうした!」と言いながら、男が二人入ってきた。
「…………!」
男達が、驚いた顔でこちらを見る。
「こいつら……っ!どうやって!」
大きな声。
プルクラッタッターよりも大きな体格。
一人は、ナイフを持っている。
「…………っ」
プルクラッタッターは、心臓がバクバクするのを感じた。
おかしな魔法は使えたけど、それで強くなったかどうかはわからない。
ステッキで叩けばいいのかもしれないけど、長さ50センチほどのステッキではリーチが短すぎる。
男の一人が、助けを呼びに扉の向こうに声をかける。
「誰か来てくれー!」
二人の男のうち、ナイフを持った方が飛び掛かってくる。
プルクラッタッターは、やはりこの人生で、ナイフを向けられた事などない。
どうしても、怖いと思ってしまう。
「…………っ!!」
どうしたらいいのか、わからない……。
腕も足も動かない。
ダメだ……、私、こんな場所で……!
プルクラッタッターが、真っ青な顔で及び腰になったところで、
ガキン!
と、金属音がした。
プルクラッタッターの目の前で、パピラターが男のナイフを、杖で受け止めた音だ。
夜の色のマントの背中。
パピラターは、プルクラッタッターを振り向かずに言う。
「大丈夫よ、あたしがいるじゃない」
そうだ。
一人で戦わなくていいんだ。
一緒に居るんだから。
プルクラッタッターの目に、ナイフが見えた。
やらないと殺されるんだ。
それどころか、パピラターまで、死んでしまうかもしれないんだ。
二人で戦って、二人で生き残るんだ。
パピラターが戦ってる。
私だって!
プルクラッタッターが、ステッキを振り上げ、ナイフの男に突進していく。
「やああああ!!」
男も黙ってやられているわけがなく、体勢を変え、プルクラッタッターの方へ向き直った。
バランスを崩したパピラターが、体勢を低く、構え直す。
男がナイフを振り下ろした瞬間、
カーン……、
と、響くような音がした。
プルクラッタッターのステッキの前に、大きな謎の紋章が出現し、男のナイフを弾き返していた。
ちなみにこの謎の紋章は、星とドラゴンの翼が模してある素敵な魔法少女の紋章なのだ!
男二人が体勢を立て直す。
けれど、それよりも、パピラターの方が早かった。
「代理人としてパピラターが命じる」
パピラターは、手に縄を持っていた。
「世界の遍く理。我が声を聞き入れ、彼の者を捕らえよ」
すると、パピラターが持っていた縄はまるで生きているように動きだし、パピラターが縄の端を引っ張ると、そのままナイフの男に縄が巻きつき、ぐるぐる巻きにした。
呆気に取られるプルクラッタッターを尻目に、パピラターは続けて詠唱を開始する。
「代理人としてパピラターが命じる。世界の遍く理。我が声を聞き入れ、空への道を開き給え」
初戦闘!
初めてにしては、なかなかの健闘っぷりなのです。




