16 魔法少女(2)
「これってどうすればいいの」
ジャラン、と音を立てて鎖をロケンローに見せる。
「ステッキを使って、プルクラッタッター!」
そう言われ、左手に持ったステッキを見る。
「そう言われても、どうやって」
カンカン、とステッキで手首の輪を叩いて見せる。
すると、カシャン、と音を立て、鉄の輪は呆気なく手首から転げ落ちた。
「え…………」
プルクラッタッターがまじまじとステッキを眺めた。
プルクラッタッターだけでなく、パピラターもまんまる目でその光景を眺めた。
何せ、ムゲン・ステラ流は、詠唱必須だからね!
試しに、パピラターの手首の鉄の輪もカンカンと叩いてみると、輪はあっけなく外れた。
プルクラッタッターとパピラターは、二人で顔を見合わせる。
「…………」
「すごいわ……」
パピラターが呟く。
プルクラッタッターには、その感心する視線が痛い。
「すごいわ。変身する事で魔法のスイッチを入れて、詠唱を省略してるのね。そんな方法初めて見たよ」
パピラターは嬉しそうだ。
「そうなんだ〜」
プルクラッタッターが苦笑する。
プルクラッタッターだって、自分で使っていてびっくりだ。
だって、元いた世界には魔法なんてなかったんだから。
ロケンローの方に行く途中、プルクラッタッターは自分がミニスカートを穿いていることを思い出した。
こんな短いスカート、高校時代だって穿いてなかったよ。
プルクラッタッターは、モゾモゾとスカートの中を確かめた。
パンツが見えるんじゃないかと思ったのだ。
何重にも重なったスカートの中、プルクラッタッターはちゃんとショートパンツを穿いていた。
かぼちゃパンツのように膨らんで、見えないところも可愛さ溢れている。
とはいえ、この脚……。
寒くはないけど。
◯◯歳女子にとっては、なかなかに屈辱である。
なんでこんな……。
これが魔法っておかしいでしょ。
いや、確かに魔法だけど。
モゾモゾと動きながら、ロケンローの鳥籠へ。
鍵をステッキで叩こうとして、ふと、ロケンローを見た。
その瞬間、プルクラッタッターには解ってしまった。
この小さなドラゴン……執拗に"相棒"だって言ってた。
そして、『今こそ変身だよ!』の台詞。
そうだ。この生き物は……、魔法少女の隣に必ず居る小さな生き物なんだ…………。
本当になにこれ……と思いながら、プルクラッタッターは、鳥籠の鍵をカンカン、と叩いた。
よいせ、とまるで人間のようにロケンローが鳥籠の中から出てくる。
「ありがとう、プルクラッタッター」
どうやら、このドラゴンが“相棒”というのは本当らしい。
プルクラッタッターは、少し呆れた顔をした。
実は、プルクラッタッターが魔法を扱う時、この姿になるのには理由がある。
この世界は、人々の心の中に持つ魔力が魔法という形で具現化する世界なのだ。
その具現化は、その魔法を使った者の魔力が続く限り具現化することができる。
魔力というものは、生まれつき持っているとか、そういう類のものではない。
この世界に存在する全ての生き物は、等しくそういうルールの下で生きるのだ。
その魔力こそ、
じゃじゃん!!!!!
イメージ力。
プルクラッタッターは、幼少の頃から、魔法少女系のアニメをずっと見てきた。
テレビという動画形態で毎週毎週、変身し戦う姿を見てきたのである。
それは、この世界で、魔法を実際見て実践する魔法を扱う者達の弟子が学ぶことと同等であった。
もしくは、同等以上のものかもしれなかった。
そんなわけで、魔法はこういうものだと心に刻みつけ、ずっとそれを見てきたプルクラッタッターにとって、魔法というものはこういう形をしているのだ。
そんなわけで、魔法少女爆誕です!
がんばれ、プルクラッタッター!




