136 番外編・表彰式
湖のヌシを釣り上げてから、随分経っているというのに、今更ヌシを釣り上げた表彰式をすると、手紙が届いた。
確かに、あの頃はヌシを釣り上げてからすぐに旅立ってしまったけど、ここに正式に移住してからも年単位の時間が経っているというのに。
やはり、数日前、パピラターが湖を覗きに行ったのが悪かったのだろうか。
そこで目が合ったというのだ。
町長と。
その視線が合った時のしんと静まり返った空気は、その場で大爆発を起こして逃げてしまいたいほどだったというのがパピラター談。
パピラターが言うと、冗談にならないから怖いものである。
やっぱりあの……観光のウリにしていたヌシを釣ってしまったのはまずかったのだろうか。
それでも湖のヌシ2世になってからも……いや、以前よりずっと観光客が呼べているみたいだったのに。
仕方なく、よく晴れたその日、二人と一匹は湖の岸辺で行われる表彰式に出ていった。
湖の岸辺は、いつになく騒がしかった。
いつもは釣具レンタルの小屋の周りに、販売カートがいくつか並ぶだけだけれど、今日は見たこともないほどの店が立ち並ぶ。
表彰台の周りには、色とりどりの旗で飾られており、何処から来たのか、ピエロがジャグリングを披露していた。
もちろん、全面リニューアルしたヌシグッズの店は、一番目立つところに陣取られていた。
商魂逞しいをよく表した場所だ。
表彰台に近付いて行くと、町長が大慌てで飛んできた。
「こ……これはこれはようこそ!」
「あ、どうも……よろしくお願いします」
「いやぁ〜、ずっとお祝いしなきゃって思ってたんですけどねぇ。遅くなってどうもすみません」
町長は始終ニコニコと笑っていたけれど、どことなく怯えているような……。
プルクラッタッターもその空気を感じ取り、苦笑いで応える。
パピラターは終始、冷めた顔でツンとしていた。
そんな空気も何のその。
表彰式は明るいムードの中、始められた。
ぱーんぱか、ぱんぱっぱっぱ、ぱ~~~ん!
ブラスバンドらしき人達がめでたい音楽を奏でる。
演奏者はこの世界では、演奏技術の魔力が高まると楽器なしでも音を奏でることができるようになることが多い。
それでも楽器を扱う奏者は多いのだが、中には音の出るエアギター状態の人もいて、なんだか面白い光景だ。
パピラターとプルクラッタッターの二人は、表彰台に立った。
ロケンローは、いつも釣りに来ているお爺さんと並んで表彰式を眺めていた。いつの間に仲良くなったんだか。
パピラターとプルクラッタッター、二人の目の前には、町長、そしてその隣にあまり見ることのない副町長の姿がある。
副町長は、背の高い眼鏡の男性で、肩より長い髪を後ろでまとめている。
横に垂れた後れ毛はお色気成分だろうか。
お兄さんというには貫禄があり、おじさんというには物足りないような年頃だ。
「うおっほん」
町長が町長らしい咳払いを披露する。
「君達は、この町を脅かしていた、湖のヌシを~、釣り上げてくれた!」
観客達がワーッと声をあげる。
「よって、君達を、この町の~、認定釣師として認める!」
ワー!!!
大歓声と、大きな拍手。
に……にんていつりし?
よくわからないまま、プルクラッタッターは『認定証』と書かれた賞状をもらった。
副町長が、笑顔で話しかけてくる。
「この度は、ヌシ討伐、ありがとうございました。しかしながら、第二のヌシは健在です。今後、あなた方に続いていく何処かの誰かの為に!ぜひ、見守って頂けましたら有り難く思います!」
こ……これは……。
すごい圧だった。
これ以上ヌシ釣りなんてするんじゃないというすごい圧だ。
これを言う為に表彰式なんてする事になったのか……。
お祝い金として、リアルな金貨の袋が、プルクラッタッターの手に載せられる。
お金……!
怖い!!
その後、この話をした時、ケイタロウは「じゃあ次は俺が釣ったるかー!」なんて、本気なんだか冗談なんだかわからない言葉をキメ顔でのたまった。
それを聞いたパピラターとロケンローは、ちょっと楽しそうな顔をした。
……今後のヌシ2世の行く末が不安なプルクラッタッターであった。
観光の要を食べないでくださ〜い!




