表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
実は◯◯◯◯◯な魔女と実は◯◯◯の魔法少女が魔王を倒しに行く物語  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

135/140

135 番外編・名前を呼んで

「パピ!」


 屋根の上から降ってきたケイタロウの声に、ハッとしたのはパピラターだけではなかった。

 ケイタロウのそばに居た魔王の顔が、少しだけ引き攣った。


「ちょっとさ、ちっさい方のハケ、持ってきてくれるか?」


「はーい」

 言うと、パピラターは足元にあったハケから1本取る。

「代理人としてパピラターが命じる。世界の遍く理。我が声を聞き入れ、これを天空へ!」


 唱えながら、ハケを空中にポンと放り投げる。

 ふんわりと浮かびあがったハケが、ケイタロウの手にすっぽりと収まった。


「さんきゅー」


 “安寧のエレボス”を飼うのはいいけれど、流石にルールイエでの二人の家は、魔王城ほど大きいわけがなく、丈夫なわけもない。

 屋根の上で遊んでいた“安寧のエレボス”とロケンローが、屋根を踏み抜いてしまったのだ。


 丁度良く遊びにきたケイタロウが、自分が一番屋根の補修が上手いだろうからと買って出てくれた。


「こんなもんか、な」

 サムズアップの手で、キラリとポーズをつける。


「…………」


 赤い屋根の上。

 近くで無言になっている魔王に気付くと、ケイタロウが声をかけた。


「ポフ?」


 これは……もしかして…………。


「俺が愛称で呼んだから……やきも…………」


 その瞬間、

「ゴフッ……」

 ケイタロウの鳩尾に魔王のグーパンがヒットし、ケイタロウの息が10秒ほど止まった。


「……ああ、はいはい。俺が愛称で呼んだのが羨ましかったのか」


「…………」

 魔王は、少し諦めたような表情で、高い空を見る。

「我が……馴れ馴れしくするわけにはいかぬだろう?」


「…………そ、か?」

 ケイタロウは、下で片付けをしているパピラターを眺めた。


 こんな関係になっても、魔王とパピラターは、まともに会話をした事がない。

 かといって、魔王が嫌われているようにも見えなかった。

 拒絶されるわけでもなければ、最近、パピラターの表情も柔らかくなっている。


「確かに、わだかまりがないわけがないんだけどさ。こんな風に会えるようになってけっこう経つし。ここまで来てそこまで遠慮する必要もないと思うけどな」


 魔王は、悲しそうな顔をした。

「我は、国を守る為、これからも刃を振い続けるだろう。こんな我に、関わらせたくない気持ちもあるんだ」


「今更……」

 ケイタロウがふっと鼻で笑う。


 その時、家から出てきたプルクラッタッターが屋根の上に居る二人に手を振った。


「二人ともー!お茶の準備ができたよー!」


「おう」

 ケイタロウが立ち上がると、魔王がそのケイタロウの腰を掴み、飛び降りた。

「ははっ」と嬉しそうなケイタロウの顔を見てしまった。


 お兄ちゃんその顔……。こっちが照れるじゃん……。


「さんきゅーな、ラッタッター」

 兄にぽんと頭を撫でられ、

「あ、うん」

 と我に返った。


「すまんな、ラッタッター」


 え…………?


 魔王が、「フッ」と笑って、ケイタロウの後ろから家に入って行く。


 その場のノリかもしれないけれど、……愛称呼びだった……。


 少々照れるプルクラッタッターが、みんなに椅子をすすめていく。


 その直後、ケイタロウは見てしまった。

 パピラターの表情が若干強張っていることに。


 ……やっぱ、そっくりじゃねーか。

とある日常の一コマでした。なんだかんだ頻繁に行き来する仲です。仲良し。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ