134 番外編・◯ッキーゲーム
「あき、見て見て、これ」
「こ、これは……」
「チョコがけプレッツェル〜♪」
「◯◯えもんみたいに言わないで」
遠路はるばる、カップル二人で“騒乱のニュクス”に乗り、宝箱に入れてまで、何を持ってきたのかと思ったら……。
けど、確かに見れば見るほど……。
「本物そっくりだね……」
「だっろぉ〜〜〜!?」
兄が今まで見た事ないほど嬉しそうな顔をした。
その兄の声につられたのか、外から“騒乱のニュクス”と“安寧のエレボス”が呼応するように鳴いた。
ロケンローは食べたそうにテーブルの上に座り込んでいる。
魔王とパピラターが、ハテナを浮かべた顔のまま、何本も準備してあるチョコがけプレッツェルをじっと覗いている。
……こうして並んでいるのを見たら、まるっきり姉妹だ。キョトンとする顔もそっくり。
抱えられるサイズの小さな宝箱の中に、恭しく入っていたのは、元いた世界ではお馴染みのお菓子だった。
細長く焼いたプレッツェルの8割ほどにチョコがかかっている。
どうやらケイタロウ自ら再現して作ったものらしい。
「1本貰ったときは確かに美味しかったが」
魔王が、「ふ〜む」という顔をした。
「すっげぇ、苦労したんだぜ!この太さ!この色!!」
「確かに美味しいけど、何がそこまでお兄ちゃんを駆り立てるの……」
呆れつつも、プルクラッタッターは、チョコがけプレッツェルに手を伸ばす。
「ちょぉっと待ったぁ」
ケイタロウが暑苦しい顔で、プルクラッタッターが伸ばした手を遮る。
「……何、お兄ちゃん」
プルクラッタッターがむぅっとケイタロウを睨んだ。
「◯ッキーゲームしようぜ!」
「は?」
プルクラッタッターが、いよいよあからさまに呆れた顔をした。
「お菓子ひとつに力入れてると思ったら、やりたい事ってそれ……?も〜、合コンじゃないんだからさぁ」
「なんか思いついちゃってぇ……」
ケイタロウが上目遣いでプルクラッタッターの顔を覗く。
「このメンバーでそんなことしてどうするの……」
「◯ッキーゲームって?」
パピラターが興味津々でチョコがけプレッツェルをガン見している。
「う〜ん」
プルクラッタッターが、チョコがけプレッツェルの端をパピラターの口に押し込みながら、唸った。
「この……チョコがけプレッツェルをね、二人で咥えて、両端から食べていくの。先に離した方が、負け!」
「!?」
パピラターと魔王の二人が、びっくりした顔をした。
「そ、それがゲームなのか!?」
魔王の顔が蒼ざめる。
「えへへ」とケイタロウが誤魔化すように笑った。
プルクラッタッターが、パピラターが咥えているチョコがけプレッツェルの、反対側の端を咥えた。
「こんな、風に」
プルクラッタッターが攻めの体勢を取ったので、パピラターがおよび腰になった。
魔王が突然のパピラターのピンチに手を伸ばしたけれど、何も言うことが出来なかった。
がじっ……かぷっ……とプルクラッタッターが何の躊躇もなく食べ進む。
「んなっ」
パピラターが耐えきれず、チョコがけプレッツェルから離れ、一歩後ろへ下がった。
プルクラッタッターは、そのまま倒れそうになったパピラターを支え、チョコがけプレッツェルを食べ尽くし、そのままパピラターに覆い被さった。
ぢゅっ……。
ぢゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……。
「んっ……んぅっ…………」
ケイタロウが、うわぁ……という顔をした。
「ごめん、あきちゃん……。お兄ちゃんが悪かったから……、そのエグいキスシーン見せられる俺達の事も考えて……」
エンディング後の話です。直後ではなく、ちょっと先。
ケイタロウはけっこうくだらない事をしたがります。




