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実は◯◯◯◯◯な魔女と実は◯◯◯の魔法少女が魔王を倒しに行く物語  作者: 大天使ミコエル


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129 新しい出発(4)

「ん…………」


 パピラターは自分の顔を触った。

 いつの間にか、眠ってしまっていたらしい。


 目が腫れているのか、うまく目が開けられない。

 ただ、薄暗い光が、視界を埋めた。


 じっとしていると、あの、町が襲われた日のことを思い出してしまう。


 あの焦げた臭い。

 味わった空虚。

 なすすべもなく、死んでいく人達。


 魔女の家だというのに、家の裏手に大きな穴が開き、薬草の一つもまともに残ってはいなかった。


 嫌なことばかりを思い出してしまう。

 こんなことではいけないと、パピラターは、むくりと起き上がる。


 すると、ベッドに重みを感じた。

「プルクラッタッター……?」


 すやすやと眠っていたのは、プルクラッタッターだった。

 どことなく泣いた跡がある。

 心配かけてしまっただろうか。


 こんな風になっちゃダメだ。

 この子の前で。


 ……そこで、思っていたより年上だったことを思い出して、ふっと笑みがこぼれた。


 さっきまで、もう全てが嫌になっていたのに、意外と簡単に笑う自分に少しだけ驚く。


 一緒にいるのが、プルクラッタッターでよかった……。


 プルクラッタッターに、そっと手を伸ばした。


 茶色のまっすぐな髪。

 触ると、スルリと指を通った。


「…………っ」


 無意識に触っちゃってた……。


 手を引っ込めたところで、

「む…………」

 と、プルクラッタッターが声を出した。


 あ、起きそう。


 プルクラッタッターの手がぐいっと伸びて、ゆっくりと起き上がる。


「あ……」

 目が合ったプルクラッタッターが、ほにゃっと嬉しそうな顔をした。


 少し……照れる……かも。


「おはよう、パピラター」

「うん、おはよう、プルクラッタッター」


「へへっ」と言いながら、プルクラッタッターが後ろのテーブルを示す。

「お兄ちゃんがね、食事を持ってきてくれたんだ。すっかり冷めちゃったけど、食べられそうなら食べよう」


 お兄ちゃん、か。

 羨ましい。

 あたしが家族だと思っていた人は……。


 師匠と、……そして、魔王の顔が思い浮かぶ。

 人形であるあたしには……、他に家族と呼べる人はいなかったのに。


「あとね、」

 プルクラッタッターが、まっすぐに、パピラターの顔を見た。

「ここから、逃げようと思うんだ」


「ここから?」


 確かに、あの人達には、もう会えない。


「お兄ちゃんから、プレゼントをもらったから」


 プルクラッタッターが窓を開け、口笛を吹いた。

 高く、響く。

 誰かを呼ぶ音。


「エレボス!」


 し〜〜〜〜〜〜〜ん。


「…………」


 沈黙が訪れる。


「もう!“安寧のエレボス”!」


 プルクラッタッターが声を上げると、何処からか、甲高い鳥の声が聞こえた。

 窓の外に、大きな赤と黒の大きな鳥が現れた。

“安寧のエレボス”は“騒乱のニュクス”とはきょうだいです。

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