118 どうしてプルクラッタッターがこの世界に来てしまったのか(4)
「それで……ここに転移させてもらえたんだ」
「…………じゃあ」
プルクラッタッターは、涙を堪え言葉を作ったけれど、それでも涙が溢れて仕方がなかった。
「じゃあ、私達は、死んだってこと?」
「…………死んでない。ほら、自分の身体だろ?」
「そうだけどぉ……」
プルクラッタッターがしゃくりあげる。
「もう……戻れないんだね」
戻れるものなら、ケイタロウがプルクラッタッターのことを無視するはずなんかないと思っていた。
だから、予想はしていた。
していたけれど、予想していたのと、実際知らされるのは雲泥の差があった。
「お母さんにも……、お父さんにも……友達にも……もう会えないんだね」
「…………」
その質問には応えず、ケイタロウはプルクラッタッターの頭を撫でた。
「もし、」
ケイタロウが真剣な声で言う。
「お前が元の世界に戻りたいっていうなら、俺、方法を探すよ」
「…………」
プルクラッタッターが目を拭いながら、顔をあげる。
「あの女神を探してさ。元の世界に戻させる。世界の果てまでだって、行ってみせる」
プルクラッタッターが、キョトン、とした顔を見せた。
そのケイタロウの言葉は、妹を可愛がる気持ち半分、罪悪感が半分。
そんな気持ちが垣間見えたけれど、プルクラッタッターにとっては、悪くない気分だった。
「ちゃんとお別れ出来なかったから、辛くて泣いてしまうけど。会いたい人は、沢山いるけど。これはしょうがないって解ってるから」
「…………」
「死んじゃったことは受け入れる。これは、私の責任」
「ごめ……」
「謝らないで。ケイタロウのせいじゃないよ」
泣き顔のまま、プルクラッタッターが笑顔を見せる。
「私ももう、この世界に捨てられないものができてしまったし。帰りたいばっかりじゃないから」
「…………」
今度はケイタロウが、プルクラッタッターの顔を見る番だった。
「ケイタロウはどう?この世界」
「ああ」
ケイタロウが「へへっ」と笑う。
「俺ももう、この世界で、大事なヤツが出来たから」
「ぷっ」
「なっ……、笑うとこじゃねーよ」
「だから私、パピラターを探してて。それで、その鳥乗せて欲しいんだけど」
「…………」
ケイタロウが、驚きの表情を見せた。
「は!?」
とつぜん、ケイタロウが大声をあげる。
「は!?」
もう一度言い直した。
「一緒にいた子が……、居なくなっちゃって……」
ガバッと、ケイタロウが立ち上がった。
「居なくなっちゃってじゃねえよ!それを早く言えよ!!」
どうして、ケイタロウがこれほど慌てているのか、プルクラッタッターは混乱した。
「早く来い!俺のお姫様がやべえ!」
ケイタロウは、イケメンではないですが、いいお兄ちゃんです。
厨二病くさいのも魅力の一つ。




