113 それが本当なのだとしても(2)
翌朝、浅い眠りから目が覚めたプルクラッタッターの心臓は、バクバクと音をたてていた。
緊張する。
昨晩は、どう言えばいいのか考えながら、坂道を上った。
まず……、私に敵意がない事、逃げる気がない事をアピールして……。
あんまり……、質問ばかりにしないように……。
考えながら、涙が出てくる。
けど、このまま終わりにするのは、どうしても何か引っ掛かるものがあり、落ち着かなかった。
パピラターがいるはずの、ベッドを見る。
いつもなら、布団もないドラゴン専用の寝床の上に、寝袋を広げて寝ていた。
そこにパピラターは居なかったので、もう起きたんだと思った。
「…………」
けれど、その場所から目が離せない。
違和感と不安が、プルクラッタッターを襲った。
そうだ……何も残っていないんだ。
どうして?
鞄もない。寝袋もない。タオルの一枚も。
いつもは、何かしら置いてあったのに。
あんな大きな鞄を抱えて、どこに行ったと言うのだろう。
外に出ようとして、一匹のドラゴンに会った。
「コハ……!」
普通ではない空気に気づいたのか、その大きな身体でプルクラッタッターを支えてくれた。
そこにいたロケンローも、ふよふよとプルクラッタッターのそばに寄ってきた。
「どうしたんだい、顔色が……」
話しかけてくるコハを遮って、プルクラッタッターがコハに駆け寄る。
「コハ……!パピラターを見なかった!?」
「パピラター?見てないね」
その言葉を聞いて一層不安な色を見せるプルクラッタッターに異常を感じ、コハは外に出ていった。
外で、ザワザワとドラゴン達の声が聞こえる。
すぐに、一匹のドラゴンがプルクラッタッターに声をかけた。
「もう一人の人間なら、随分前に外に出たよ」
「え…………」
なん……で!?
どういうこと!?
「なん、で……。パピラター」
そのまま、外へ飛び出した。
坂を駆け上がる。
「もう間に合わないよ!」
後ろからかけられる声を振り払いながら、プルクラッタッターは坂を上った。
ビタン!
豪快に転んだけれど、起き上がる。
額の砂を雑に振り払い、立ち上がった。
後ろを付いてきていたロケンローが、助け起こすようにプルクラッタッターの周りをくるりと回る。
それからすぐに竜の山の入り口に着いたけれど、誰一人、見かけることはなかった。
「パピラター?」
ロケンローが、高くまで飛んで、周りを見渡してくれたけれど、見つかることはなかった。
「パピラ……ター!」
オロオロと周りを見渡して。
「パピラター!!」
大声を出して。
けど、見つからない。
どこにもいない。
行っちゃったの……?どうして……。
一人で……帰ったの……?
「ロケンロー」
涙を堪える声。
呼ばれたロケンローが、プルクラッタッターの目の前でくるりと回った。
「パピラターを追おうと思う」
「……うん」
山の向こうには、重い雲が立ち込める。
「行こう、ロケンロー」
「言うと思ったよ。それでこそ、プルクラッタッターだ」
ロケンローは、ここで止めても仕方がないのがわかっているので、応援することにしたようです。




