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実は◯◯◯◯◯な魔女と実は◯◯◯の魔法少女が魔王を倒しに行く物語  作者: 大天使ミコエル


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107/140

107 月明かりの下で(2)

 その夜。

 プルクラッタッターは空を眺めた。

 頭上の、岩山で切り取られた絵画のような空。


「……プルクラッタッター」


「……!」


 突然、後ろから声をかけられて、後ろを振り返る。

 そこには、パピラターが、困ったような笑顔で立っていた。


「パピラター」

 プルクラッタッターがにっこりとパピラターを迎え入れる。


 月に照らされた泉が綺麗だという話。

 ヤッコと話をした時にも、寝る前にも、今までパピラターがそれを気にした素振りは見せなかったし、プルクラッタッターも一言も話さなかったのに。

 けれど、それが気になっていて出てきたのかと、少し嬉しかった。


 プルクラッタッターは、パピラターの手を取る。

「泉まで行くでしょ?」

 そう聞きながらも、プルクラッタッターは、答えを聞くこともなくパピラターの手を引いていた。


 確かに、パピラターは、月明かりの下の泉の話が気になって、外へ出てきたのだった。

 そしてプルクラッタッターの気配がしたので、様子を見ようと声をかけたのだ。


 早足で、坂道を下りる。

 いつもドラゴンでごった返している穴の中は、今は一匹も見当たらない。


「プルクラッタッター、早いわ」

 困ったようにパピラターが言って、それでもプルクラッタッターは足を止めようとしない。

 むしろ、少し足を早めたくらいだった。


「プルクラッタッター、早いわ!」

 パピラターがもう一度言ったけれど、今度は、笑い声混じりだ。


 二人は、もうすっかり手を繋いで坂道を駆け下りていた。

 扉のないドラゴンの住処の中。

 大きな声を出すわけにもいかず、声を押し殺して、二人して笑いながら走った。


 もう最下層かと思われる場所へついた頃、キラキラとした泉が見え、プルクラッタッターが笑いながらブレーキをかけた。

「きゃあっ」

 パピラターが明るい悲鳴を上げながら、プルクラッタッターに突っ込んで行く。

 その勢いで二人は、地面に転がった。

 パピラターが持っていた杖も、コロンコロンと転がった。


 座り込んだ泉の畔。

 真上にある穴の先に、月が輝く。

 その月明かりがスポットライトのようにドラゴンの山を照らす。

 原石から覗く水晶が、眩しく煌いた。


 泉の水面が光る。


「本当に……きれい……」


 プルクラッタッターが周りを見渡しながら言う。

 パピラターは声には出さなかったけれど、まるで泉の煌めきが瞳に移ったかのように、キラキラとした瞳になっていた。


 プルクラッタッターはブーツと靴下を放り出すと、泉の縁に腰掛ける。


「…………」


 きっと、こんな山の上の水は、冷たいに違いない。


「入っていいの?」

 パピラターが、覗き込んだ。


「うん。ドラゴン達は、ここで水浴びしてるって」

「確かに、ちょうど良さそうな水」


 プルクラッタッターは、ドキドキしながらも、足の指を、恐る恐る泉につける。


「つ、めたくない……」


 水は、思いの外、冷たくはなかった。

 かといって、温かいわけでもなかったけれど。

 山から湧き出す水は、少しだけ温かいのかもしれない。


 なんとか足がつきそうな泉の中。

 プルクラッタッターは、そっと泉の中へ入ってみた。

軽いデートな感じです!

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