101 竜の山(2)
プルクラッタッターは、ロケンローを落とさないようにしっかりと抱えた。
無音の世界。
地面は石がゴロゴロしており、頭上はただ青く、変わり映えのしない景色。
ただ、手の中の生き物だけが、熱を帯びているのがわかる。
「人形……って、……生き物じゃないってことなの?」
プルクラッタッターが緊張した声を出すと、心配していることが伝わったのか、パピラターが微笑んだ。
「ううん。生きてるよ」
「ただ、繋がっている元の命が同じというだけ」
「いのち?」
「うん」
そこでパピラターは、何かを探すように周りを見渡した。
「生まれた瞬間、生命として活動する。成長もする。元の命と離れても問題はない」
離れても問題はない。
それは、もし、片方が異世界に行ってしまっても、ということを意味する。
目の前に居なくても、存在が感じられなくても、問題なく生命として活動できる。
普通の生命と変わりない。
「普通の生物と違うのは、命が一つということ。つまり、元の命が無くなれば、そこで終わってしまう。逆はないわ。人形が死んでも元の命は死なない」
「終わるって……、死ぬってこと?」
「つまり、そう。ロケンローは、あなたの人形?」
「……うん」
ロケンローは、プルクラッタッターの魔力から生まれた、……らしいのだから、プルクラッタッターの人形ということで間違いないだろう。
「それなら、ロケンローは、プルクラッタッターが死ぬ時、共に死んでしまうという事。元の命を持つ誰かが死ぬ事で、くったり死んでしまうから、“人形”と呼ばれてる」
そして、パピラターは空を見上げた。
「感情を持って、生きてるのにね」
「…………」
“人形”……、その言葉は、確かにプルクラッタッターの心にも、割り切れないモヤモヤを残した。
それから、しばらく歩いた。
プルクラッタッターは何を言ったらいいのかわからず、ただ、パピラターが手を繋いでくれた。
岩山の間を歩く二人に、影が差した。
後ろから前へ。
何かが上空で動いていた。
雲にしては、速く、黒い影。
大きい鳥かもしれない。
パピラターが、口をしっかりと閉じ、プルクラッタッターの腕を引く。
岩陰に、そっと張り付いた。
「鳥だったら……魔物かもしれない」
こっそりした声だ。
プルクラッタッターが、変身できない今、間違いなくピンチだった。
また、影が通り過ぎた。
確かに……翼が生えていた。
「ちょっと待って……これ……」
パピラターが、岩陰から飛び出し、上を見上げる。
「パピラター!?」
ぶおん、と大きな風が吹いた。
その大きなものが降りてきたのだ。
「これ……」
パピラターが驚愕する。
パピラターも、ここまで間近に見るのは初めてなのだ。
大きな、赤いその生物は、魔物ではなかった。
「これは……、ドラゴン、だわ」
サブタイトル通り、ドラゴン登場です!




