天才として生まれた君へ
第四回なろうラジオ大賞参加作品第十一弾!
世界は危機を迎えている。
そしてその危機により状況が悪化すれば、一万年以上前に起きた別の危機を、現人類は経験するだろう。
その事に気付いた私がいる組織は、すぐに行動を起こした。
世界を変えうる存在。あらゆる政治家や宗教家をも凌駕する、絶対の存在を生み出し、人類を扇動し世界を変えるために。
だが私は途中で気付いてしまった。
そういう存在は意図的に生み出してはいけないと。
自然に生まれてこそ意味があるのだという事を。
けど気付いた時には遅かった。
様々な天才の遺伝子……私の遺伝子も備えた子供逹の一部は、子供達が持つ能力を犯罪に利用せんとする組織に連れ去られ、さらに一部の子供はヒトならざるモノに取り憑かれ、どこかへ消えた。
後に残されたのは、運良く連れ去られなかった子供達と、紅蓮の炎。
子供達を悪用しようとしている組織が仕掛けた爆弾により上がった炎だ。
「みんな頑張って、もうすぐ出口よ!」
私の仲間が、子供達に避難を促す。
そして子供達は、その仲間の指示に従い出口を目指していたが、
「……ぅ……」
子供達の中の、最年長の少年――シンゴが倒れ込む。
私達大人を手伝い、子供達をあやしてたりした子だ。
まさか、煙を吸ったの?
それとも、人造生命故の肉体の欠陥が原因?
「シンゴ!」
私はすぐに彼に近寄り……そしてその選択は、私の運命を決定した。
直後に倒壊する天井。
仲間達と分断された。
「御巫さん!」
仲間が私を呼ぶ声がする。
でも、この火の回り具合……私は助からないだろう。
「先に行ってください!」
私は叫ぶ。
「貴方達まで、失うワケにはいきません!」
すると仲間は、悔しさで顔を歪めると「後で助けに行くから絶対生きててね!」と言ってくれましたが……その時には、私は死んでいるだろう。
シンゴを。
私の子供達の一人を助けるために。
「ゴメンね、シンゴ」
私はシンゴを、火の手から護るように抱き締めた。
「貴方には、私の業を背負わせる事になる。
でも私は、貴方にも……生きていてほしい」
そして、私は――。
※
「中塚教授、どうしましたか? 焚き火を見つめて神妙な顔して」
「ああ、気にするな。昔キャンプした時の事を思い出しただけだ」
新たな神秘調査に向かう途中。
同行者である俺の生徒にそう言い訳する。
あの火事の後、俺の母は、俺に業を託して死に。
記憶のほとんどを失い、この世を彷徨っている。
その結果は悲しいが、後悔はない。
母が託してくれた業のおかげで、誰かを救えるからな。
「母さんの命を無駄にしないためにも。いなくなった兄弟姉妹を……早く見つけなきゃな」