第五十七話 副将戦、リジー対アリマ②
炎をまとったアリマ関は地獄の悪魔のような姿でリジー王子に覆い被さるように組み合っているわ。
いえ、グレーターデーモン族なので、出自は普通に地獄の悪魔なのかもしれないけれど、いつもは礼儀正しくて温厚な彼が豹変すると威圧感が凄いわね。
アリマ関がまとった炎はかなりの高温なのでしょうけれども、風の鎧をまとっているリジー王子には効いていないみたいね。
風が熱を空中に放散させて体には伝わらないのよね。
のしかかるように押すアリマ関の重圧に、リジー王子はどっしりと耐えているわ。
相撲魂のバフと、風の相撲の推進力で拮抗しているみたいだ。
ちょうど太極図土俵の中央で二人は膠着状態ね。
アリマ関が動いた。
リジー王子を左に崩した、そのまま腰投げを掛けようとしたが、王子がするりと重心を変えていなした。
アリマ関の崩れた重心を押すようにして、リジー王子が足を掛けるが、これはアリマ関がずしりと受け止めた。
フウフウとアリマ関の呼吸が荒くなり、汗が出て一瞬で炎に炙られて蒸発する。
リジー王子も汗をかいているが風の鎧によって一瞬で飛ばされる。
熱のこもり方はアリマ関の方が大きいようだ。
炎のモードですしね。
リジー王子が懐に潜り込み、アリマ関の右腕を肩に担ぐようにした。
一本背負い!
柔道で有名な技だけど、お相撲にもあるのよ。
王子は腰でアリマ関を跳ね上げるようにして担いだ。
担いだが、アリマ関は腰を落として耐える。
耐える、耐える。
アリマ関が後ろから、王子の廻しを取ったわ。
いけないっ、形勢逆転だわ。
技を掛けるのは相手にすかされた時に体勢が崩れて、そこを突かれるというリスクがあるわ。
でも、技を掛けていかないと勝てないし、難しい所なのよ。
アリマ関が左手一本でリジー王子の廻しを取って投げようとしているわ。
彼の腕がバンプアップされて血管が浮き上がる。
王子は右腕をかついだまま放さない。
そして、後ろ側からアリマ関の軸足に足を掛けた。
川津掛け!!
これは後ろから前に向かって足を掛けて、後ろに相手を転ばす技よ。
上手い!!
リジー王子の技の切れは鋭い。
特に足技の速度とタイミングが優れているわ。
二人は一体になって後ろに倒れていく。
やったか!!
『の、のこった、のこった!』
ああ、またアリマ関の小さな羽が羽ばたいて後ろに倒れるのを防いでいるわ。
小さいのだけれど、性能が良いみたいね。
巨漢のアリマ関が空中戦を行えるぐらいですものね。
いけない、羽ばたきを使ってアリマ関が体勢を入れ替えようとしているわ。
リジー王子が下になってしまう。
「せえええいっ!!」
王子はかけ声一発!
腰を跳ね上げ、アリマ関の右腕を担いで巻き込んだ!
上手い!!
アリマ関の入れ替えの動きをなぞって、一本背負いの回転力につなげたわ!
後方に倒れかけていた両者が一転して前方に動いていく。
「王子!! 投げ捨てて!!」
「おおおおおおっ!!」
私の声援に王子は獣のような吠え声で答えたわ。
アリマ関の大きな体が空中で立った。
そして倒壊する!!
コウモリの羽がはばたく!!
空中でアリマ関は右腕を中心にぐるりと回り土俵に着地した。
しぶとい!!
一瞬でリジー王子は対応した。
担ぎ上げていた相手の右腕を引きつけ、体を崩しながらアリマ関の胸に頭を付ける。
「回転錐頭捻り!!」
新しい付与技!!
リジー王子の頭を中心にドリルのように回転力が発生し、アリマ関が宙を舞う。
「おおおおおおおっ!!」
「いやあああああっ!!」
巨体がぐるぐると宙を舞う。
アリマ関は羽ばたいて抵抗をするが回転力が大きい。
だが、なんとか足で着地した。
土俵際!
徳俵が無ければ足が出ていた所だ。
惜しい!!
リジー王子は猛然とふらつくアリマ関に突進した。
よしっ!
白土俵に着地している、王子が有利だ!
ふらついた張り手をかいくぐり王子はアリマ関の廻しを取り押す!
アリマ関は押されて後ろにバランスを崩す。
勝った!
と、私が思った瞬間、アリマ関はリジー王子の廻しを取り、ブレンバスターのように持ち上げ、同時に土俵から転げ落ちた。
!
どちらが先に落ちたの?
グレイ審判が掛けよってきた。
『勝者、アリマ!!』
あーっ……。
「えー、同体じゃねえのか?」
「難しい所だな。最後の投げの勢いが強かったからな」
そうね、どちらが勝ってもおかしくないタイミングだったわ。
リジー王子が肩を落として帰って来た。
「ごめん、フローチェ、負けてしまった」
彼は悔し涙を流していた。
私は王子を抱きしめた。
「素晴らしい取り組みでしたわ。凄い頭捻りを見せて頂きました」
「凄い相撲を取れたのに、負けてしまった……」
「頭捻りを受けたのに、勝負を諦めなかったアリマ関が凄かったのですわ」
「そうだね、アリマ関は本当にすごい大関だ」
羽ばたきがあり、運良く土俵内に足から着地出来た。
そして、突進してくるリジー王子に投げをかけるなんて。
あの投げはお相撲の決まり手に無いからとっさに出たのでしょうね。
プロレスのブレンバスターに近かったわ。
「私はリジー王子を誇りに思います」
「ありがとう、嬉しいよ、フローチェ」
そう言って、彼は涙を拭い、微笑んだ。
素敵な笑顔だわ。
はぁどすこいどすこい。




