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第四十五話 ハフトン村直前、街道封鎖撃破戦

 もうすぐハフトン村、という所で街道を革命軍が封鎖していたわ。

 五千人ぐらいかしら、逃げた隊長が兵をかき集めて来たみたいね。


 フェンリル形態のウルバノさまとキャブリエル元帥率いるエルフ軍は気負い無くまっすぐ進むわ。


「と、とまれーっ!! とまれーっ!!」

『なぜだ? 何の権利で貴様は妖精王の進軍を阻むのだ』

「よ、妖精王さまは、世界樹の宮殿で病に伏せっているとの事だ、そ、その、お前は偽物だっ! だ、だから止まってください、おねがいです」

『たわけめ、世界樹の街で伏せっておる妖精王はフェンリルに変化できるとでもいうのかっ! 頭が高いっ!! さがりおろうっ!!』


 そして、ジョウミンさまも前に出た。


「長老会のジョウミンだ。無駄な抵抗をするな。この者は正しく妖精王である」

「長老会!! で、伝説のジョウミンさまっ!!」

「千年ぶりにハイエルフの大魔法を見せてもかまわないが、エルフは人口が少ない、人死にはさけたいとの長老会の意見だ。軍を引くがよい」


 さらに、キャブリエル将軍もずずいと前に出る。


「とっさに寝返ったので、解任前の地位どころか、元帥に出世したキャブリエルであるっ!! 王軍は良いぞ、上も横も居ないので出世し放題だ」

「え、元帥になったの? 本当に?」

「当たり前だ、革命軍の編成で下克上で下の者が高位となったが、それは全ての地位がリセットされたという事でもあるぞ。早ければ早いほど、妖精王さまの覚えもめでたいし、出世もしやすい」


 もの凄い動揺が革命軍に広がった。

 なにしろエルフのように寿命が長い種族はいつまでたっても上が詰まっていて出世が出来ないのが悩みだったのだ。

 そして、革命軍でも一般兵となった者は新体制での落ちこぼれだ。

 とても心動く事実ではありましょう。


「革命軍の士官でないものは、寝返っても妖精王さまは不問に処すとの事だ、そうですよね、妖精王」

『そうだ、そして、まだ王軍が再編成されていない今が出世のチャンスだぞ、どうだ、皆、寝返らないか?』


「聖獣さまのお姿を取られると言う事は、本物のウルバノさまだよな」

「長老会のジョウミンさままでいるし、これは向こうの方が王軍で、俺らは賊軍か?」

「や、やばいな、革命軍でも俺らうだつがあがらねえし、こいつは考えた方がいい」


 革命軍の隊長が泣きそうな顔で兵達をみた。


「ば、馬鹿者~!! 万人が平等である革命軍の理念を忘れたのかーっ!!」

「いや、でも隊長、賊軍になって追われたら全部失いますぜ。妖精王がお元気ならば、ミキャエル宰相の方に理はありませんや」

「ちくしょー、俺ひとりでもっ、 革命万歳~~~!」


 隊長がサーベルを抜いてこちらへと突撃しそうになった時である。

 一斉に一般兵たちが、二の腕に巻いた赤い腕章を引きちぎり空へと投げ捨てた。


「俺は寝返りますぜーっ!!」

「妖精王ばんざーいっ!!」

「共和国ばんざーい!!」


 そして一般兵は足を踏みならし、エルフの森共和国の国歌を合唱し始めた。


「よーし、みんな偉いぞ、とりあえず一般兵はおとがめ無しで王軍に編成する。士官たちは投降すれば拘束する、嫌ならば逃げたまえ」

「と、投降したら罪は免じてくれるのだろうか」


 隊長がサーベルを取り落とし、ぐじぐじと泣きながらそう言った。


『ミキャエル宰相に騙されたのなら、今すぐ投降すれば罪には問わない。何か違法行為があったとしても、軍法会議で降伏を考慮して良いようにしてやろう』

「降伏いたします」


 隊長は街道にひざまずいて、おいおいと泣き始めた。

 ああ、彼の革命はこの瞬間に終わったのだな、と、私はそう思ったわ。


「まったく最近のエルフは俗っぽくなったものよ」

『母上、千年前とは時代が違うのです。今はそういう時代なのですよ』

「なんというめまぐるしい変化なのか、基本的に人族のせいであるな」

『人族も、我々エルフも、ドワーフも、そして魔物も、変わって行く物なのですよ』

「嘆かわしい事だ」


 戦闘らしい戦闘も無く、我々はハフトン村に入った。


「おおっ! 妖精王!! 姿を取り戻しなされたな、なによりですわい。ああっ、これはジョウミンさま、お久しぶりでございます」

「うむ、しばらくぶりだな、ビビ、千年ぶりぐらいか」

「そろそろそれくらいですな。長老会も重い腰をお上げなすったか」

「世界樹の樹があやうく燃えかけたとドリアード達に聞いてな、最悪、大魔法で介入もありうる」


 ハフトン村のビビ村長はニッコリと笑った。


「大丈夫ですじゃよ。わしらにも相撲がついておりますからな」

「またスモウか、体を当てあう下賎な格闘技に何の意味があろうか」

「ほほほ、見ればわかりますぞ、見れば」


 ジョウミンさまは口をへの字に曲げて黙った。

 それでは、世界樹の街で相撲を目の当たりにして貰いましょうか。


「ゲスマンさんはどうしたの」

「ちょっと、エルフの古武道が出来る爺さまに会いに行っておりますな、もうかえって来るころですじゃよ」


 エルフにも武道は一応あるのね。

 寿命が長いから極めると凄い達人が生まれそうだわね。


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― 新着の感想 ―
[一言] とても酷い切り崩し方だ 実に有効な事は認めるけど
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