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第二十四話 魔導列車、その名も「震発(しんぱつ)号」

「お嬢様、朝ですよ、起きてください」

「んん~、もう朝なの?」

「ワンワンワン!」


 アデラの声で目を覚ました。

 一緒に寝ていたワン太がベットの上をビョンビョン跳ねているわ。

 窓を探して、無いのでやっと自分がドワーフ大玄洞にいるのを思いだした。

 ここは地中だから、当然、窓は無いわね。


 昨日の夜は脂っこい物を食べたのでお腹が重いわね。

 久しぶりのお肉だから美味しかったけど。


 身繕いをして寝室から出ると、リジー王子も、もう一つの寝室から出てきたわ。

 彼は王子だけど、フローチェ部屋では新弟子として共同生活をしていたから、自分の事は自分で出来るのよね。

 お相撲部屋は貴族の子供を鍛える良い場所になっていて、親御さんたちにも評判が良いのよ。

 お部屋では貴族も平民も区別はありませんしね。

 一部貴族からは平民と一緒では恋愛とかに発展したら困る、と言ってくるけど、そういうのはね。

 お相撲は実力主義、土俵の上で廻しいっちょになったら身分は関係が無いのよ。


「おはようフローチェ、今日も綺麗だね」

「ありがとうございます、今日の王子も素敵ですわ」

「ワンワン!」

「ワン太もおはよう、今日も元気だね」


 ドワーフメイドさんがワゴンで朝ご飯を運んできてくれたわ。

 さあ、食べましょう。


 ……。

 朝から肉ですわね。

 ドワーフさんは凄いわね。

 目玉焼きとハムでよろしいのに。


 お肉を少し食べて、ふわふわのパンと苔茶をいただくわ。

 スープも具が沢山で美味しいけど、重いわね。


「エルフの森共和国のパンとスープとサラダの朝ご飯も困ったけど、ここの朝ご飯もまた凄いね」

「早くアリアカに帰って、ちゃんこを食べたいですわ」

「そうだね。僕もご飯が食べたいね。あとお味噌汁」


 ああ、なんだか国技館のお陰でアリアカ王都では日本の食品が普通に手に入るので、こういう時に前世の海外旅行中盤の日本人みたいになってしまうわね。

 はぁどすこいどすこい。


 朝ご飯を済ませて、苔茶を飲んでのんびりしていたら、ヨルド大玄洞長が貴賓室にやってきた。


「おはよう、お二人さん、良く寝られたかい?」

「ありがとうございます、ヨルド大玄洞長、とても良いお部屋で休まりました」

「そうかいそうかい、じゃあ、魔導列車の発着ホームに行こうか」

「もう出られますの?」

「おうとも、昨日のうちに釜に魔石をくべて最終チェックして終わった。いつでも出発できるぜ」


 それは良かったわ、今日のお昼にはアリアカ王国に入れそうね。

 ヨルド大玄洞長の後ろには、ヴァルナルさんとマミアーナさんが居た。


「おはよう、お二人とも」

「おはようございます、横綱と王子のお二人が国境に着くまで警護させていただきます」

「よろしくおねがいします」

「マミアーナさん、国境を越えたら、そのままアリアカ王都にこない? お相撲部屋を案内しますわよ」

「よ、よろしいのですか、あ、あの、お爺さま」

「そうだな、マミアーナがやってみたいのなら、ワシは反対はせんぞ」

「ありがとうございます、お爺さまっ!」


 国境から王都までは、だいたい馬車で三日ね。

 王都で軍を編成するのに二日、取って帰して三日でまた国境ね。


「さて、こちらじゃ、お二人さん」


 ヨルド大玄洞長が私たちをいざなうわ。


 ぐねぐねとした立体的な通路を歩いて、長い長い階段を呆れるほど降りて行くと、列車のホームに出た。

 わあ、本格的ね。


 昔の弾丸列車みたいなデザインの魔導列車は惚れ惚れするほど格好いいわね。

 機関車の両脇からプシューと蒸気を噴き出しているわね。


「こいつがドワーフ大玄洞の誇る魔導列車一号機、震発しんぱつ号だ」

「素晴らしいですね」

「格好いいですわ」

「ワンワンワン!」


 ワン太も格好いいと言っている気がするわね。


 震発しんぱつ号は五両編成。

 機関車、魔石庫車、一等客車、二等客車、三等客車となっているわ。


「今回の試運転は、アリアカ皇太子リジー殿下とフローチェ嬢の貸し切りだぜ」

「ありがとうございます、光栄です」


 さっそくドアを開けて一等客車に乗り込んだ。

 わあ、明治時代の陸蒸気みたいな内装ね、レトロで良いわね。

 座席も革張りで豪華だわ。


「さあ、座ってくんな、発車すんぜ」


 お言葉に甘えて対面シートにリジー王子と一緒に座った。

 私の隣がアデラ、リジー王子の隣にワン太ね。

 ワン太もお利口にチンと座っているわね。

 尻尾をぶんぶん振っているわ。

 嬉しいのね。


「こいつが常時運転するようになれば、アリアカとの交易もはかどるぜ」

「これは、高い値段でも乗りたがる人は沢山いますね」


 この世界は竜のファラリスにでも乗らないと旅行が大変なのよ。

 一般の人は馬車をつかわないきゃならないのだけれども、馬の世話とかがあるから徒歩とそんなに時間が変わらなくて、エルフの森共和国に来るまで一ヶ月ほど馬車にゆられたわ。

 街道村や街道街で泊まれるとはいえ、かなり疲れる旅なのよね。


 アリアカ王国とドワーフ大玄洞間だけでも魔導列車が走れば、大陸東部に出るのはすごく楽になるわ。

 でも、それは魔王軍にも言えることで、ドワーフ大玄洞が占領されるとアリアカ国境まで兵員を輸送できるわね。

 新技術は便利だけど、やっかいな側面もあるわ。

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― 新着の感想 ―
[一言] > 一部貴族からは平民と一緒では恋愛とかに発展したら困る、と言ってくるけど、そういうのはね。 それは薔薇の世界…。
[一言] 暴走列車の客車の上で相撲取ってカーブの遠心力で土俵割ったりするわけだな あとは爆発物仕掛けられた後部車両切り離したり
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